JAN , 2017
PROFILE
□ PROFILE DATA
ハタノワタル
漉き師 | 黒谷和紙
淡路島出身
美大で油絵を学んでいた頃に和紙と出会う。支持体のキャンバス代わりに和紙を使い始めたことをきっかけに紙漉きに興味を持ち始める。芸術家と呼ばれる人達と自身を比べ感じたことは、これまでのごく平凡な人生。
これからも平凡であるならば、人生の大半の時間を費やす仕事は芯のあるものをと、修行のつもりで紙漉き職人を目指すようになる。後にあるきっかけで「書」の楽しさに触れ、2016年9月から独学で活動を開始。2007年京もの認定工芸士に認定。黒谷和紙漉き師歴20年。
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─ 空と海 ─
京都のやや北部、山に囲まれた小さな谷に位置する綾部。そこでの紙漉きをしながらの暮らしは、色とりどりの四季の風景が移り変わる。
言葉では説明できない自然の優美さと、その瞬間の自分の状態との微妙なバランスが振動を起こし、自身の心を大きく揺さぶる。
この状態はどこから来るものなのか。
思い浮かべたのは生まれた場所である淡路島で見た、海に沈む太陽を一緒に眺める親子の光景。そんなあるひとつの心奪われた状況を思い出し、浮かび上がったあの時の空のやさしさ、瀬戸内の海の穏やかさを思い起こし筆を走らせる。
それは多くの人々に開かれたもの。
いつもそこにあり、いつも人を自分の殻の外に導いてくれるもの。
そしてやさしく、ゆっくりと、大きなもの。
一年を通じ様々な場所に行く道中、自然と足を伸ばしてしまう。そして懐かしい故郷の景色を思い出す創造の原点でもある場所。常に変化するものではなく、形として見えなくても大事にしたいこと。
そんな海と、広い空をいつまでも眺めていたい、そんな時間を大切にしたいという思いから生まれた「空と海」。心にすうっと入り込んだ美しい景色が言葉となり、言葉を思い描いくと姿として立ち上がった新春の書。
黒谷の和紙に写し出された穏やかな風景とともに、新しい年が皆様にとって幸多き年となりますようお祈り申し上げます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
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UPDATE : 2017/Jan/01 | AUTHOR :