かお。

フィルター

no.15 Lorenzo

UPDATE : 2015/Dec/03
AUTHOR: 加賀 耕平

no.15 Lorenzo

 

着陸のとき、機体がゴトッと揺れた

 

そのとき、ぼくの腕時計は4時15分を指してたけれど、ピンク・フラミンゴのDivineみたいな化粧をしたCAの、”It’s 5:15PM in Mountain Daylight Time”というアナウンスで、時差のあるフライトだったことを思い出した

 

ボンバルディアCRJ900の小さな窓から、ひたすら何もないアリゾナの荒野を眺めているうちに、時間の粒子がどこかに零れていってしまったのかもしれない

 

なんとなくなにかに化かされたような気分のまま空港をあとにして、まだ日が暮れそうもない夕方の、ランチだかディナーだかわからない食事を摂るために、モンタナ通りのDenny’sに、ぼくたちは飛び込んだ

 

初めての町での初めての食事がDenny’sだなんてぜんぜん冴えない話だけど、とにかくどこかにゆっくり座って、これから行くところの話をしたかったんだ

 

El Paso, Rio Grande, Ciudad Juarez

ライ・クーダーの歌に出てきそうな地名だらけの国境の町

 

スーパーマリオ!と思わず叫んだぼくの前で、ロレンツォはポーズしてくれた

 

おじいさんとおばあさんは、リオ・グランデを越えてメキシコから来たんだって言ってたけど、この町じゃそれは珍しい話じゃない

 

コーヒーショップのジャニターは、ウェイトレスみたいに楽な仕事じゃないけど、テキサスはオレにとって故郷だから、ここからは離れられないよ

 

すこしだけ淋しそうな顔をして、ロレンツォはぼくたちが食べ散らかした食器をかたっぱしから、黒いディッシュボックスに投げ入れた

 

太陽は、まだ高い

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