UPDATE : 2016/Apr/23
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Thank you, ドロレス
その笑顔に
ここで暮らしはじめたのは5歳のときだってアリシアは言ってたけど
ぼくがここに住んでたのはもう40年近く前なんだよ
ぼくが生まれてはじめて自分で家賃を払った家
小さなコテージのようなその白い家に、ドロレスとアリシアは暮らしていて
ベッドルームでは白い猫が昼寝をしていた
途方に暮れるっていう言葉は、何もないガランとしたその部屋をはじめて眺めたときの22歳のぼくのためにあったようなもんだと思うけど、ここに来るまではそんなことさえ忘れてた
ただなんとなく、思いついただけなんだ
その日の朝、エースホテルのコーヒーショップでアボカドのトーストを食べながら
ちょっと行きたいとこがあるんだけど、つきあってくれるかな
なにが変わって、なにが変わらないのか
ポールが言うように、いまここを通り過ぎていくものが自分自身なんだとしたら
1976年にここにいたぼくも2016年にここにいるぼくも
ただのうたかたにすぎないのかもしれない
いてくれてよかった
ダウンタウンのホテルを出て、ハーバー・フリーウェイを南に
ローズクランスの出口を降りて、サウス・バドロング・アベニューの14440番地
その日、そのときに