UPDATE : 2014/Sep/18
AUTHOR:
随筆家 ヤマヒデヤ
「新しい生活が始まった」
新しい生活が始まったから
私は今ここに居る
あなたと出会ったのは何年前かしらね?
私はどちらかというと
それほど高級な方ではないから
ホームセンターという所に居たのよ
懐かしいわぁ
ホームセンターって広くて色々なモノが居てるでしょ
だからもううるさくて仕方が無いの
普通の人には聞こえないけどね
もちろん人も沢山来るわ
スゴく楽しい空間
皆イキイキしてた
誰に買ってもらえるんだろう?ってね
誰の役に立てるんだろう?ってね
もちろん私もそうだったわ
私はお店に展示されてから一ヶ月目でもらわれて行ったの
私が最後の現物だったから
ちょっとお安くなっていたのよ
でも不良品じゃないわよ
しっかり働けます
買って下さったのは若いカップル
私を選んだのは女の子
「ありがとう」
後日
私は女の子の家に到着したわ
私と同じように新しい子たちでいっぱいだった
皆楽しそう
本当に楽しかった
彼女の家には最初
一緒に来ていた彼も頻繁に遊びに来てたわ
でも一年間くらいしたら来なくなっちゃった
彼女の部屋はちょっとだけ汚くなった
半年くらしたら
部屋がまたキレイになった
違う男の子が来た
彼女は嬉しそうにしてた
その彼は三ヶ月くらいで来なくなった
そしたら部屋がまた汚くなった
今度は一年半くらい間があいたかしら
部屋がキレイなった
また来るのね
そしてやって来たのはネクタイ姿の男性だった
彼女より十歳くらい上かしら
彼女は嬉しそうにしてた
でも
その彼が帰った後はだいたい泣いてた
どうしたのかしら
この彼とは三年間ほど続いた
彼は来なくなったけど
部屋は意外と汚くならなかった
そこから一年間くらいは色んな男の人が来た
真面目そうなのから
遊び人風なのやら
前の彼よりももっともっと年上っぽいのやら
色々と
どうしたのかしら
一年後
彼女の部屋にはもう誰も来なくなった
部屋はキレイなままだ
彼女はもう泣いていない
顔が穏やかになった
そうやって私は彼女を見てきた
彼女が動かなくなるまで
彼女のお母さんらしき人が部屋を業者さんと一緒に片付けに来た
そして
私の新しい生活が始まった
私は今ここに居て良いと思っているの
「ありがとう」
ほな!