路上のモノ

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「路上のモノ」 その弐拾壱

UPDATE : 2013/Dec/05
AUTHOR: 随筆家 ヤマヒデヤ

「路上のモノ」 その弐拾壱

 

 

「プロローグ」

 

 

僕は地球のオッサンを探していた
いわゆる
ボロボロになった扇風機の前面部にあるカバーのおじん

 

あのテレビじいさんが言うには
今は地球になっているらしい

 

そのテレビじいさんに言われた方向に

僕は歩いている

 

歩きながら思い出していた
トイレットペーパーの神様との話
実はあの時
書いていなかったコトが

 

元々あのオッサンは昔
ちゃぶ台だった
毎日
家族がオッサンを囲んでご飯を食べる
笑の絶えない家庭だった
しかし
戦争がドンドン激しくなり
子供たちは田舎に疎開し
お母さんは軍事工場で働き
お父さんは兵隊に

 

家には
まだ若者のオッサンがポツンといるだけだ

 

それから数年して
戦争は終わった

 

疎開していた子供たちも帰ってきた
お母さんは小間物屋に勤め先が変わった
お父さんは帰ってこなかった

 

そんな事情もあってか
その家族は
家を引き払って
引っ越さないといけなくなった

 

彼は連れて行ってもらえなかった
家と共に残された

 

次にその家に住みだした家族は
人の悪口ばかり言う
そしてモノを大切にしない
雑にあつかって
壊し
もしくは
飽きて
新しいモノを買う

 

オッサンもそうとう雑にあつかわれた
ボロボロになってきた
そしてついに
新しいテーブルと椅子が来た
ボロボロのちゃぶ台には用はない

 

オッサンは河原に
あっさりと捨てられた

 

雨が降ってきた
雨がやんだ
星が出た
太陽がのぼった
カンカンと照った

 

何回も
何回も
太陽がのぼり
そして沈んだ
月あかり
星あかり






カエル
ヘビ

 

色んな友だちができた
人間は一人もいない

 

彼のカラダはもう
ちゃぶ台のカタチを
残していない
単なる木片に

 

ある夜に
彼に向かって話しかけてくる
声があった

 

「もし
そこの
キミだ
キミだ
昔ちゃぶ台だった
キミだ」

 

オッサンは
いぶかしげに声の方に向き直った

 

「アンタだれ?
ワシに何のようだ」

 

すると
声の主は

 

「ワタシは地球の使いのモノだ
ずっとキミを見ていたのだよ
そこでなんだが
キミにはある権利が
できたんだよ」

 

「なんですか?」

 

「それはキミがこの河原の神になる権利だ」

 

「いらないです」

 

「どうして
いらないのだ」

 

「ワシは人間が嫌いです
こんなところに捨てるし
やっとできた仲間たいちが
ほら
あそこに見える
人間が作った工場
あの工場から変な水が出てくるから
川は臭くなったし
ヘビやカエルやたくさんの友だちがいなくなった
そんなココで
神様なんてゴメンだ
人間嫌いなワシには」

 

「そうか残念だ
またいつか話そう」

 

そう言って
地球の使いのモノは去っていった

 

去りぎわに
オッサンはたずねた
「アンタの名前は?」

 

すると彼は
「泉水の川の神だ」
そう言って消えた

 

 

ちゃぶ台だったオッサンはいつしか
扇風機の前面部にあるカバーになっていた
そして
使い古され
また
捨てられた

 

さらに
人間嫌いになった

 

 

ほな!

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