路上のモノ

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「路上のモノ」 その弎拾九

UPDATE : 2014/Aug/07
AUTHOR: 随筆家 ヤマヒデヤ

「路上のモノ」 その弎拾九

 

 

「何なのか解らないモノ傑作選その3」

 

 

こ、これはね…
恐らく

 

 

 

 

このモノを「路上のモノ」で
触れるかどうかと
随分と悩みましたよ
掲載してはいけない
気がして

 

そしてから
思う

 

なぜっ?
なぜっ?
あなーたはー

 

恋の予感は全くないですが
なぜっ?
そんな所においでなすったのか?

 

色々と頭の中で交錯する

 

きっと
あーなんだろうなぁ
とか
いやいや
そうじゃなくて
恐らくこうだよ

 

一目見て使い道は直ぐに分かりました
ただそれはこのモノに対してだけですが…

 

どういう場所で
どういう用途で
どういう人達が
どういう目的で
というのは
果てしなく
わからない

 

 

嗚呼っ
やっぱり
このモノは
「路上のモノ」では
タブーだったのかしら…

 

とにかく
一度
話しかけてみる事にした

 

 

 

「もしもし
こんにちは
まぁまぁ天気もよろしく
穏やかな季節になってまいりましたね」
(これと出会った頃の話なので)

 

「そうかえ
もうそんな季節なんかえ
気ぃ付きませんでしたわ

 

ところでな
にぃちゃん
ええ男やな」

 

 

「な、なにを唐突に言うてはりますのや
ビックリしますやん

 

あのぉーお姉さん
お尋ねしますが
以前はどちらにいらっしゃったんでしょうか?」

 

「にぃちゃん
お姉さんやなんて
オバちゃんかお母ちゃんでええで
そんな若ないし」

 

「そうっすか
ではオバちゃん」

 

「誰がオバちゃんやねん‼︎」

 

「えっ⁉︎」

 

「うそうそ
ゴメンな話の腰を折って
で何?」

 

「だからぁ…」

 

「あっ
あれか
せやな
ふんふん

 

っで
なに?」

 

 

ヤバい
完全にこのオバちゃんのペースや

 

 

「いゃだからね
ここに来る前は何処におったんかなぁ思ってね
聞いたんですよ」

 

 

「どっから来たかってか?」

 

「はい」

 

「そんなもん見たらわかるやろが」

 

「いゃー
わからないから
聞いてるんです」

 

「ほぇー
さよかぁ
そんなもんかいな
オバちゃんも地に落ちた
言うわけやね」

 

 

「…」

 

「にぃちゃんどないしてん?
どっか具合でも悪いんかえ?
こらアカンわ
オバちゃんの背中に乗り」

 

 

そう言って無理やり
背中に乗せられた

 

「でや?
ええ気分やろ?
王様気分やろ?」

 

「いゃー
王様とかは無いですが
変な気分ですね」

 

「ほぉーけぇー」

 

オバちゃんはちょっと残念そうだった

 

オバちゃんとか
おばあちゃんとかは
人が喜ぶのが大好きだもんなぁ
アメちゃんとかすぐに渡してくるし
もらって
ありがとうって言うたら
他になんかあったかなぁ
なんて言い出す方も

 

オバちゃんに王様気分やって
言ってあげれば良かったなぁ
そんな訳で僕も少ししょげていると

 

「あんたっ
にぃちゃん
どないしたんや?
えらい元気ないやないかえ

 

ほれ
ほれ
ほれー

 

これでどないや?」

 

僕の足をバタバタさせる

 

「オバちゃんゴメン
もう元気になるから
バタバタはやめて
ゴメンって」

 

 

いったい僕はここで何をやっているのだろうか?
落ち着いて考えると
今自分の置かれている状況に
恥ずかしくなった

 

恥ずかしくなった僕は
急いでオバちゃんから降り
そして
改めて聞いてみた

 

「オバちゃんが何者なのかは
だいたいの察しは付く
けどなオバちゃん
オバちゃんはここにおるモノやあらへん
なんでここにおんの?
なぁ聞かしてくれへんか?

 

オバちゃんは
ここへ来る前は
何処におったん?」

 

 

オバちゃんは一瞬
黙り込んだ
重苦しい空気だ
そしてその重い沈黙の後
彼女は言った

 

 

「サハラ砂漠」

 

「えっ?」

 

「サハラ砂漠」

 

「なに?」

 

「サハラ砂漠」

 

「違うでしょ」

 

「なにが?」

 

「絶対にサハラじゃないでしょ」

 

「なんであんたがそんなん決めつけんのよ」

 

「決めつけもなんも
サハラ砂漠なわけ無いやん」

 

「そんなもん
わかりまっかいな」

 

「絶対にサハラ砂漠やない
もぅちゃんと教えてよ」

 

「ゴビ砂漠」

 

「腹立つわぁ
このオバハン」

 

「オバハンってなんや
オバハンっていうのは」

 

 

この後も数分にわたり
このようなやり取りを
オバちゃんペースで

 

とうとう何も答えが出ぬまま
僕は仕方なくオバちゃんなモノと
お別れした

 

 

 

数日後
改めてまたその場所に行ってみた

 

彼女の姿はもう何処にも無かった

 

 

人間もモノも
明かしたくない
過去というのも
あるんだろうな
と自分の中で
言い聞かせた

 

 

サハラ砂漠…

 

 

 

 

ほな!

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