路上のモノ

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「路上のモノ」 その拾六

UPDATE : 2013/Sep/27
AUTHOR: 随筆家 ヤマヒデヤ

「路上のモノ」 その拾六

 

 

「背中でかたれ」

 

 

いつものコトながら
街を歩いていると

 

出くわすんですね

 

今回は何やら
グループみたいです

 

僕自身もだいぶ
なれてきたので
アッサリ声をかけてみた

 

「もしもし
グループで
何をされているんですか?」

 

「…」

 

「あれっ⁉」

 

無言
どうしてだろう?
聞こえてないのかなぁ?

 

「あのぉ
すいません
皆さんはこちらで何をされているのですか?」

 

「…」

 

やはり無言
おかしいなぁ
ひよっとしたら
僕にはもう彼らの声が
聞こえなくなったのか?

 

だとしたら
スゴくさみしいなぁ

 

 

最初は驚いたけど
話してみると
みんなそれぞれに
勉強になるというか
良い体験というか
切ないというか

 

とにかく
普通では体験できないような
そんなコトに

 

これが当たり前と
思いすぎたのが
良くなかったのか

 

なれは恐いですね
もうあのオッサンとも
話できないのかぁ…

 

 

っと
その時
何か声らしきモノ音が

 

「えっ⁉」

 

僕は思わず声をあげてしまった
しかも割りと大き目の声を

 

するとあちらの方でも
何やらモノ音が

 

はて?
これはひょっとすると
聞こえないんじゃなくて
無視されてたのでは

 

僕は急に笑顔で
しかも元気になった

 

「もしもし
皆さんはどうして
聞こえないフリを
するんですか?」

 

「…」

 

「もういいですから
話しましょうよ
僕けっこうしつこいですよ」

 

すると
すると
一番奥から二番目の彼が

 

「男はなぁ
背中で語るモノなんだよ」

 

「なにを?」

 

今度は別のが

 

「ウルサイなぁ
そんなコトはいいんだよ
とにかく俺たちは
背中で語ってやろうと
そういうコトになったんだよ」

 

「それでやってみてどうなんすか?」

 

一番手前のが

 

「ようわからん
じゃがこれでは誰ともしゃべれん
そういうのんだけはわかった」

 

「こんなに並んでて
全然会話してなかったんですか?」

 

「いや最初は
しとったがじゃ
じゃがホレ
カタチこそ同じじゃが
年も性格も全然ちがうき
なんや会話がチグハグになりよった
でな
こん中で一番年寄りなんは
ワシなんじゃが
皆に言うたが
男っちゅうもんは
背中で語るもんぜ
男のクセにペチャクチャ
うるそうてしょうがない
ゆうてな」

 

「はぁ
でも提案したのは
おとうさんなワケですよね?
それで
誰ともしゃべれん
はおかしくないですか?」

 

「おっしゃる通り」

 

「えらく素直ですやん
もっと頑固な方かと思いましたが」

 

「人を見た目で判断しちゃ
いかんぜ
とにかく
そういうのんを
やってみたらどうじゃ
ゆうてきたのんがおってな」

 

「へぇ
それで素直に
それを実行されてたんですか」

 

「そうじゃ
まだやり始めたとこやった」

 

「そうだったんですね
ってコトは先ほど誰かにゆわれた
ゆうコトなんですね」

 

「そうじゃ
ついこのあいだ
知り合いになった
オッサンじゃ」

 

「オッサンですかぁ」

 

僕の頭の中には
一人のオッサンが浮かんだ
こんなワケのわからない
提案をするのは
あのオッサンしか考えられない

 

「あのぉ
そのオッサンって
扇風機のボロボロになった前面のカバーのオッサンじゃなかったですか?」

 

「知っとるのか?」

 

やっぱり

 

「少しだけですけど
なんとなく
そうなんじゃないかなぁ
って思っただけです
でもまさか本当にそうだとは」

 

「そう言えば
オッサン人間と友だちになった
ゆうて自慢しちょったなぁ
もしかしてキミか?」

 

「恐らく」

 

「ニィちゃん
でもなぁ
あのオッサンは
前までその
扇風機のなんとかじゃったけんど
今はちがうぜ」

 

「ちがうんですか」

 

「おお
ちがう」

 

「じゃあ
今は何なんですか」

 

「ワシがさっき会った時は
地球やった」

 

「地球ですか?」

 

「そうじゃ」

 

 

あのオッサンは本当に色んなトコ
ウロウロしてるなぁ

 

なんかでも
久しぶりに会いたくなった

 

「すいません
地球のオッサンは
どっちへ行かれました?」

 

「ああ
なんや居酒屋へいくゆうて
そこをまっすぐ
行きよったがじゃ」

 

「ありがとうございました
皆さん仲良くして下さいね
背中で語るのもええですが
では
僕はちょっと
地球のオッサン探してみます」

 

 

そして
僕は
この場を後にした

 

 

ほな!

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