続 橋本健二

フィルター

第十四話「断面線」

UPDATE : 2017/Sep/11
AUTHOR: 建築家 橋本 健二


Fury もう半世紀前の車じゃないか。

以前のAARクーダはサブライムグリーンの まあまあの光沢だった。

Furyのクロームのブルドーザーのようなバンパーは錆びだらけだ。

ふと考えた。なんだ僕自身まだまだ磨かないとだめじゃないかとデザインも

身体も気持ちも・・・

フロントガラスもクラックが入っている。

僕の心のようだ。

しかし珍しいブルーペンガラスだ。

クラインブルーに染めたい。

父にもらったオーデマ・ピゲ ロイヤルオークの腕時計を見る。

もう朝の8時だ。

急いでシャルトリューズをストレートで胃にかきこむ。

そしてジョージ・サラグットの新譜を聴きはじめる。

ブギーだ。

ペンが走りそうだ。

2Bのペンシルを握る。

デスクの上にあった和紙のトレーシングペーパーを何枚か掴み

天空に投げる・・・・・目に見えないような速さで落ちていくペーパーに

線を落とし込む。

美しい線に命を吹き込む。

その線の集合体が建築に発展する。

そうなのだ それが現場の作り手に伝わり心地よい緊張感を生む。

そして時間と共に朽ち果て 味わいに代わる。

いとしこいしの話術のように

 

砂浜にバーカウンターを設置した提案
もう3年くらいかなあ。
依頼はこない。
木製からスチールに変更しよう。
朽ちてしまえ。
そのうち宮崎あたりの浜辺あたりから依頼がくるだろう。

TIE UP PROJECT