路上のモノ

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「路上のモノ」 その弐拾弐

UPDATE : 2013/Dec/12
AUTHOR: 随筆家 ヤマヒデヤ

「路上のモノ」 その弐拾弐

 

 

「ボロローグ」

 

 

僕はどれくらい歩いただろうか?

 

歩きながら
植え込みの中や
道路脇をキョロキョロと

 

そして
若干の疲れも感じたので
コンビニエンスストアに立ち寄った

 

水分補給
心地よかった

 

そして
また歩き出そうと

 

次の瞬間
懐かしい声が

 

「おう兄ちゃん
久しぶりやな」

 

その声の方を見ると
そこには紛れもなく
地球が

 

そう
あのオッサンです

 

僕は嬉しさと興奮で
胸が高なり
手が汗ばんだ

 

「お久しぶりです
今は何とお呼びすれば」
コトバをさえぎられた

 

「地球と呼んでくれ
扇風機のカバーとか言うなよ」

 

ホントは地球儀なんだけどなぁ
と思いつつ
「わかりました
地球のオッサンは今までなにしてたんですか?
探しましたよ
それに
それに
色んなモノから
ウワサを聞いていたのですよ」

 

「ウワサ?
なんじゃそれ
誰がそんなん言うとんのや
どうせしょうもないコトやろ」

 

「いや
そうでも無かったですよ
テレビじいさんや
トイレットペーパーの神様とか
ですけど
しょうもなくは」

 

「ああぁん
あのテレビの行列か
ワシはあんな群れるのは
好かんな
まぁええじいさんやけどな
せやけど
あのじいさん
じいさんっちゅうキャラクター
というだけで
まだ若いんやぞ
人間で言うたら
25〜6才くらいちゃうか」

 

「えっ‼
マジっすか
てっきりじいさんかと」

 

「それはキャラクターや
キャラ作りは大事やからな」

 

何がどう大事なのかわからん

 

「それからあのトイレットペーパーな
あれボケとるから
気ぃつけや
酒飲み過ぎやねん
おうた時もヘラッヘラやったやろ?」

 

「どうなんでしょう?
僕にはちょっとわかんないですね
でも
まぁ確かに
会った時は道のど真ん中で
グニャングニャに寝そべったはりましたね
だけど
酔った感じは無かったですよ
しっかりしゃべったはりましたし」

 

「そうか
そんならええんやけど」

 

「なんか問題でもあるんですか?」

 

「あいつ
ようウソつくからな」

 

「ウソですか」

 

「せや」

 

「じゃあ
地球のオッサンは昔
ちゃぶ台やったってのも
ウソなんですか?」

 

「それはホンマや」

 

「ホンマなんですか
じゃあじゃあ
戦争があって
その後
その家族じゃない
別の家族がきて
ボロボロにされて
河原に捨てられたのは?」

 

「まぁまぁホンマや」

 

「まぁまぁですか
実際はどうやったんですか?」

 

「実際はやなぁ
あの頃は
いっつも昼間は
家族がいてへん時に
こっそり抜け出して
居酒屋に飲みに行っとったんや
ちゃんと夕方には
帰ってきとったんや
でもなぁ
ちょいちょい来てた
うさんくさいヤツがおったんや
そいつと知り合いなって
何回目かにワシはスゴい酔うてもうてな
でそいつん所へ
泊まったみたいなんや
記憶のうてよう覚えてへんねんけどな
ほいたら次の日の朝じゃ
そんなもん
もう家に帰られへんやろ?
昨日の晩におらんようになった
ちゃぶ台が次の日にあったら
怖いやろ
しゃあないから
それからそこで暮らすようになったんや
結局なそれが
そいつのこんたんやったんや
なんや淋しかったんやろ」

 

「ふぅーん
でそこってどこなんです?
もしかして河原ですか?」

 

「せや
でそいつの話し相手になっとった」

 

「なんか全然ちがう
人間に捨てられて
人間嫌いになって
カエルとかヘビとかが友だちで
人間が作った工場排水で
川が汚れ友だちが減って
更に人間嫌いになったとかは
どうなんです?」

 

「そこな
まちごうとる
確かに工場から変な水流しとったわ
せやけど
それでおらんようなったんは
魚や
ワシの友だちは
ヘビとかカエルとかトカゲや
あいつらは普通におったぞ
やし別にワシ人間は
好きでも嫌いでもないわ
それはあいつの作り話じゃ」

 

「じゃあじゃあじゃあ
地球の使いの泉水の神様から
河原の神様の権利を断ったはなしは?」

 

「なんじゃそら?
そんな話しとったんか
あの老いぼれ
デタラメもええところや」

 

「マジっすか」

 

「マジもマジ
大マジじゃ
兄ちゃん教えたろうか
あのジジイは元々
ワシと同じちゃぶ台やったんや
せやけどちゃぶ台の四本ある内の一本が壊れてのうなってもうたんや
その一本があいつや
なんでか知らんねんけど
本体の台と他の足やのうて
とれた方になりよったんや
でな捨てられよったんや
ほいでうさ晴らしのタメに居酒屋で酒ばっかり飲んどったんや
そこへワシが来るようなってな
自分が淋しいもんやから
ワシまで引っ張り込まれたゆう話や
そんなもん地球の使いでも
神様でもあるかいな
アホゆうたらアカンで
あれはただのとれた足や
人間嫌いなんもワシやのうて
アイツや
だからワシはよう言うてたんや
そんなに人間くさしたらアカンってな
ええヤツもいっぱいおるってな
せやから兄ちゃんのコトも話したんやで
ええ兄ちゃんがいてるさかいにな
会うたら話してみたらええねんってな
ほしたら
この間
会うたわけやろ?
喜んどったでぇ
なんや人間見直したってな
そういう話や」

 

なんだかわからなくなってきた
いったいどっちの話が本当なのか
しかしオッサンに会えて良かった

 

「ところで前から気になってたんですけど
居酒屋ってどこにあるんですか?
一回連れていって下さいよ」

 

「居酒屋か
ええよ
今から行くか?」

 

「今からっすか?」

 

「善は急げゆうやろ
ゆうコトでワシをかつげ
ワシが自分でコロコロしとったら
ヤバいやろ」

 

「わかりました」

 

というワケで僕たちは居酒屋に行くコトになりました

 

 

ほな!

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