「新しいお友だち」

二人を見かけたのは
まだ夏になる前

そう
春のうららかな午前でした

僕の名前はストーブ
ブンブン暖めるさっ
そして
ココロの中までも
暖めるさっ

私の名前は扇風機
ヒューヒュー涼しくするの
そして
ココロの中までも
涼しくするの

おやおや
今は暖める時さっ

まぁまぁ
今は涼しくする時よ

今は冬だぞ

今は夏よ

冬だ

夏よ

どこかで
そんなやり取りが聞こえる

冬だ

夏よ

おいおい
君たちは何をしているんだ

今は冬だよね

いいえ
夏よ

うぅ〜ん
今は夏でも冬でもないよ
今は夏と冬の間の春だよ

ウソだ

ウソよ

なぜそんなコトを言うんだい

だって夏の間は
僕は押入れの中

そうよ冬の間は
私は押入れの中

押入れの中じゃないなら

冬だぞ

夏よ

そうかぁ
でもさぁ
ここ外だよ
家の中じゃないね
本当は何があったんだい

すると
ストーブも扇風機も
泣き出してしまった

本当は夏でも冬でもないのは
二人ともよくわかっていたらしい

ブンブン暖めたり
ヒューヒュー涼しくしたり
そうしていたお家

その家には
エアコンというスゴいヤツが来た

ヤツがいれば
暖かくなるし
涼しくもなる

押入れの出し入れも
しなくていい

だってエアコンは
天井近くの壁に
ずっと一年中いてるからね

もう
ストーブも扇風機も
いらなくなったんだって

そして年に二度すれ違うふたりが
今はこうしてずっと一緒に

新しい友との出会いは
別れの出会いにもなった

今は夏

もう
あのふたりは
いない

ほな！