UPDATE : 2016/Feb/19
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ブライアンがどこかのバーで椅子を蹴っているころ
ニックはカルバーシティの家のカウチで、同じようにコアーズを飲んでいる
今日のカーショウはだめだな
TVを観ながら、ひとりごとのように妻のナンシーに話しかける
ナンシーはもちろんなにも応えない
嘘はやっぱりよくないわ
ナンシーがニックの顔をじっと凝視めて
ふいになにかを吐き出すように、その言葉を投げた
今朝、LMUに出かけるニックの車を見送ったときからずっと言おうと思っていた
ちょうど小さな蕾が開きはじめた裏庭の蔓薔薇を摘んでいるときも
昼下がりのジムで古ぼけたランニング・マシンの上を歩いているときも
TVディナーのミートローフをオーブンに入れるときも
そのことを考えると波打つような胸の鼓動がおさまらなかったけれど
それはどうしても言ってしまわないといけないことだった。
そのことを、ブライアンはまだ
知らない
ニックが、ゆっくりと
カウチから身体を起こした。
What the hell are you talking about ?
TVの音が消えた