UPDATE : 2016/Feb/19
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きみはひなたのにおいがするよ、デビィ
日曜のBuns N’ Rosesは教会からの帰りの人たちで賑わっていて
白人も黒人もみんながそろってブリトーとコーンチップばっかりだ
ジュラルミンの波板で囲まれたそのコーヒーショップには
古ぼけたピックアップがならび
ぼくたちはそこで
バカみたいに晴れ渡ったテキサスの空の色のことをはなし
これから見るアルミニウムのオブジェの輪郭をテーブルになぞった
デビィが注いでくれるぬるくて薄いコーヒーはすこしもおいしくないけれど
この乾いた空気にはエスプレッソもカフェオレもまったく似合わない
きみのTシャツにある「黄金の左腕」っていうのは
あのメキシコのやさぐれたアコーディオン弾きのことだろ?
きみの瞳にはいつか行ったリオ・グランデの川面の光がまだ残っていて
その頬には昨日の夜の夢の残骸
ポートアーサーていうテキサスの田舎町からサンフランシスコに旅立った
ジャニスっていうブルースシンガーのことは知っているかい?
サザン・カンフォートとマールボロ
いつかきみも彼女が好きだった酒を飲むことがあるんだろうか
いつかきみも彼女のようにかっこよく煙草をくわえて子どものように微笑むことがあるんだろうか
デビィ、海を見たことはあるかい?