UPDATE : 2016/Jun/29
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おいおい、ほんとに大丈夫なのかよ
リッキーのバスを降りたところがLAXのいちばん外れ
フェニックスに行くU.S.Airwayのうらぶれたカウンターは、そこにある
旅慣れた服部くんとシブヤくんはバックパックを機内に持ち込むだけだけど
中川さんの大きいトランクとぼくのダッフルバッグは壁の向こうに流れていった
タグには確かにELPと大きな文字で書いてあって
ルイスはNo Problemって笑ってるけど
うしろにいるネクタイのおっさんの目は、おまえそんなこと言っていいのかよ、と言っているようにしかぼくには思えない
Lost Luggage
LAでルイスに託した荷物がフェニックスを経由して、エルパソ国際空港にちゃんと着く確率なんて、イチローがライトフライを落とすより低いはずだ
白昼夢のようにぼくの頭の中を駆け巡ったそんな妄想は
エアバスA321のなかでC級コメディを眺めている間にあっさりと溶け去って
あきれるほどデカいスカイハーバー・エアポートの果てしなく続くムーヴィング・ウォークを歩いているときにはすでにテキサスの砂漠の幻想に取り憑かれてしまっていた
ルイスのことなんてもう覚えていない
でも飛行機に荷物を預けるときにはいつもこの妄想から逃れられない
それは、ルイスとあのおっさんのせいだ。