かお。

フィルター

no.22 George

UPDATE : 2016/Jan/17
AUTHOR: 加賀 耕平

no.22 george|「かお。」|加賀 耕平

 

巡礼の午後

 

ドナルド・ジャッドのスタジオはもともと銀行だったところで

今は誰もいなくなった寺院のようなその仕事場のひとつひとつの部屋を

ジョージはいとおしそうに案内してくれた

 

外に出ると、さっきまであっけらかんと晴れていた空に急に不穏な雲が広がって

ぼくたちはあわててオフィスに駆けこんだ

 

それハワイの言葉だよね、なんていう意味だったかな

ぼくが着ていたTシャツの “MAHALO” という文字を見て彼が尋ねた

 

It means “Thank You”, I think

 

そうそう、そうだった

弟がずっとハワイに住んでるんだけど、なんかい訊いても忘れるんだよね

 

忘れてしまいたいことは澱のように積み重なってぜんぜん流れてくれないけど

忘れたくないことは上澄みのように溢れてこぼれおちてしまう

 

魔法みたいな言葉の意味はかろうじて憶えていたけれど

カウアイで暮らしてるというジョージの弟のことはなんにも知らないし

ジョージはジョージじゃなくてひょっとしたらジョンじゃなかったのかなんて

考えてる

 

ジャッドのスタジオの吹き抜けには

誰が描いたのかわからない牛のいる草原の大きな絵がかかっていて

ぼくたちは明日行くCHINATIという滑走路のことを夢みている

 

すうっと掬いとれたらいいんだけど、スープみたいに

TIE UP PROJECT