路上のモノ

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「路上のモノ」 零

UPDATE : 2013/Feb/20
AUTHOR: 随筆家 ヤマヒデヤ

「路上のモノ」 零

 

 

 

 

皆さん
始めまして
ヤマです

 

今回より ご縁がありまして
こちらでペンを取らせてもらう事になりました

 

僕の具体的な職業はありません
今は
何か楽しい事はないか?
面白い事はないか?
そういう事を考えたり
動いたりしています

 

そして
そのライフワークの中のひとつに
「路上のモノ」
というのがあります

 

これを中心にこちらでも随筆させてもらおうと思います

 

さて この「路上のモノ」なんですが
ある出来事がきっかけで始める事になりました

 

今回は一回目なのでその秘密をお話しましょう

 

一年近く前の出来事です

僕は早朝によく通る路を歩いていました
すると どこからか声が聞こえてきたんです

 

「もしもしそこの人」

 

胡散臭いおじいさんの声でした

僕はまわりを見まわしましたが
早朝がゆえにそこには誰もいませんでした
キョロキョロしてるとまた

 

「こっちこっち
こっちだよ」

 

ようやく声の主がわかりました

僕の目の前には
ボロボロになった扇風機の前面部にあるカバーが路上に転がっていました

 

「えっ?」

 

です

当然でしょう
普通の頭で考えたら
そのボロボロになった扇風機の前面部にあるカバーが話しかけてくるなんてありえない
非常に馬鹿げている

 

しかし
ボロボロになった扇風機の前面部にあるカバーのおじんは僕に話しかけてきました

 

これが声の質のせいか
朝方のせいか
さほど怖くもなかった

 

そして
割りとすんなりと
その状況に馴染めた

なので僕は立ち止まり
そのボロボロになった扇風機の前面部にあるカバーのおじんにこたえた

「なんですか?」

 

ボロボロになった扇風機の前面部にあるカバーのおじんは

「ちょっとだけ俺の話を聞いてくれ」

 

しょうがないので僕は

「はぁ いいですけど…」

 

ボロボロになった扇風機の前面部にあるカバーのおじん

「俺はなぁ昔觔斗雲(きんとうん)と呼ばれとったんじゃ」

 

「はぁ??
なにを言ってるのか全然わからないんですけど…
あの孫悟空が乗ってるヤツですか?」

 

ボロボロになった扇風機の前面部にあるカバーのおじん

「せやっ」

 

「せやって
全然カタチ違いますやん
しかもボロボロやし」

 

ボロボロになった扇風機の前面部にあるカバーのおじん

「うるさい
ボロボロ言うな
今はこれでええねん
でな 教えといたるわ
あれな みんな雲やおもとるやろ
ちゃうで
あれはな俺やねけど
そん時はカーやったんや」

 

「なにゆうてんのかサッパリわかりませんし
めちゃくちゃ関西弁ですやん
で なんでカーだけ英語ですのん?
カーって車って事でしょ?
車やったんですか?」

 

ボロボロになった扇風機の前面部にあるカバーのおじん

「カーゆうのは車とはちょっとちゃうねん
説明しにくいからカーゆうとんねん
でな
関西弁については触れるな」

 

僕は思った
このボロボロになった扇風機の前面部にあるカバーのおじんは おかしいんやないか?
そう思いながらも

「じゃあカーでいいですよ
で それをわざわざ言うために僕を呼び止めたんですか?」

 

ボロボロになった扇風機の前面部にあるカバーのおじん

「あんたやったら わかってくれるかいな おもてな
呼び止めましてん
後 プチ情報でゆうときますけど
あれな まちごうてんで
猿なんて一回も乗せた事ございません
あんなんデタラメや」

 


なんや えらいのんにつかまってもうたなぁ…

「わかってくれる…
ですかぁ…
で 猿乗せてないんやったら
誰が乗ってたんですか?」

 

ボロボロになった扇風機の前面部にあるカバーのおじん

「おぅ
よう聞いてくれた
一休さんや」

 

「一休さんゆうたら
あのトンチで有名なお坊さんですか?
でも そうだとしたらえらい時代と場所がちゃいますねぇ
でもなんで一休さん?」

 

ボロボロになった扇風機の前面部にあるカバーのおじん

「そんなもん知るかいな
勝手に乗りよってんから
まぁとにかく猿やのうて
一休さんや」

 

「話はそれだけですか?」

 

ボロボロになった扇風機の前面部にあるカバーのおじん

「ちゃうでぇ」

 

「まだあるんですか?
僕ちょっと急いでるんで
早よしてもらえますか?」

 

ボロボロになった扇風機の前面部にあるカバーのおじん

「しゃあない
そしたらもう一個だけで勘弁したるわ
俺な觔斗雲の前は銀河やってん
いわゆる」

 

「…」

 

ボロボロになった扇風機の前面部にあるカバーのおじん

「だから
銀河やってん」

 

「おちょくってるんですか?」

 

ボロボロになった扇風機の前面部にあるカバーのおじん

「そんな事するかい
真面目やで俺は
やっぱりアカンか」

 

「アカンかってなにがですか?」

 

ボロボロになった扇風機の前面部にあるカバーのおじん

「みんな俺の話はデタラメやゆうて
話を聞いてくれへんのんや
この前もそれで飲み屋から追い出されたんや
にぃちゃんやったら信じてくれるおもてんけどなぁ
残念やなぁ」

 

「飲み屋って
そのボロボロになった扇風機の前面部にあるカバーでどうやって飲み屋に入れますのん
話がおかしすぎる
もう僕行きますわ
付き合いきれませんわ」

 

ボロボロになった扇風機の前面部にあるカバーのおじん

「…」

 

「もう行きますね」

 

ボロボロになった扇風機の前面部にあるカバーのおじん

「…」

 

「なんで急に黙りますのん?
気分を害したんですか?
ねぇ
聞いてますか?」

 

ボロボロになった扇風機の前面部にあるカバーのおじん

「…」

 

「お〜い
無視ですかぁ〜」

 

っとその時
犬の早朝さんぽのおばさんが
通り過ぎた

 

そして
変な顔で僕の方を見ながら

 

そりゃそうだわな
僕がおかしい人になってる
まぁしゃあない

 

気のせいや

 

でも
気のせいでは無かった

 

ボロボロになった扇風機の前面部にあるカバーのおじん

「アンタもうええわ
もぅ行って」

 

失礼な

 

「なんなんだアナタは
はい さよなら」

 

なんで朝からこんなややこし事ならなアカンねん

 

 

とまぁ こんな話です

 

でも それ以来
僕は路上にあるモノたちが気になってしまいました

そして写真に収めるようになりました

 

しかも撮った写真を後で見ると
その写真が
あの ボロボロになった扇風機の前面部にあるカバーのおじんのように
話かけてくるようになったんです

 

だから僕は
写真と聞こえてくる言葉を文字にするようになりました

そんな 話です

 

こういうのんです

ありがとうございました

 

また会いましょう

ほな!

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