路上のモノ

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「路上のモノ」 その弐拾五

UPDATE : 2014/Jan/23
AUTHOR: 随筆家 ヤマヒデヤ

「路上のモノ」 その弐拾五

 

 

「アポイントメント」

 

 

地球のオッサンをかつぎ 言われるがままに 歩いていく

 

「そこ右」

 

「そこ左」

 

「ええっとそこは道なりでええっ」

 

 

いったいいつまで歩かされるのか
いったいいつまでかかるのか

 

 

「なぁ オッサン 本当にこの道であってるの?」

 

「なんや うたごうてるのか
お前人間やろ
せやから時間がかかんねんや
わし一人やったら すすっと行けるねん
我慢せぇ」

 

「人間やとなんなんですか?」

 

「アホやなぁ
そんなんも分からんのかいな
お前あれ観たこと無いんか?
ほれ映画の」

 

「なんすか?」

 

「なんやあったやろ
千となんとかの神隠し
とかなんとかゆう
ほれ」

 

「ああぁ
千とちひろの神隠し
ですね
あれがなにか?」

 

「わからんやっちゃなぁ
お前これからどこ行く思てるねん
こっちと違うんやぞ
あっち行くねんから
それなりのプロセスゆうもんがあるやろ」

 

「プロセス…ですか
変なトンネルとか抜けて別世界に入る
みたいな?」

 

「せや
そーゆープロセスゆうのがあんねん」

 

「オッサン」

 

「なんや」

 

「そのプロセスゆうのん
最近覚えたやろ?」

 

「なんでや」

 

「似合わん」

 

「なんや
わしがプロセスゆうたらアカンのんかえ
失礼なやっちゃのぅ

 

まぁ確かに
最近覚えたけどな
そんな事はええがな

 

そんなんゆうてるから通り過ぎたがな
そこ戻って右」

 

 

そんなやり取りをしながら
数十分は歩いただろうか

 

普通の住宅地を歩いていたはずなのに
古びた商店街を途中で曲がった辺りから 景色が変わってきた
まるでそれは時計を逆回ししていくかのごとく
時代がさかのぼっている感じの感覚だ

 

その時だ
急にずっしりした

 

抱えていたオッサンが
本物のオッサンに変わっていた

 

僕は思わず女子みたいな悲鳴をあげてしまった

 

「うるさいねん
これくらいの事で驚くな
お前は女か
とにかくおろせ
ここからは歩いていく」

 

初めて見たオッサンは
想像していたオッサンとは
まるで違った

 

皆には秘密だが

 

そこからは
オッサンの後について歩く感じになった

 

「なぁオッサン
オッサンの本当の名前はなんなん?」

 

「地球」

 

「それは今の仮の姿やろ」

 

「仮ってなんや」

 

「だからこっちが本物で
地球は仮の姿と違うん?」

 

「どっちもこっちも無い
どっちもこっちもわしや
で名前はお前には聞こえんから
ゆうてもしゃあない
せやさかいにオッサンでええ」

 

「はぁ…」

 

きっと面倒くさいだけだ
そうに違いない
更に進むとオッサンは急に立ち止まった

 

そこには一台のFAX付き電話が

 

オッサンはしゃがんで おもむろに電話をし始めた

 

「わしや
おうっ
今から二人やねんけど
席空いてるかなぁ?
そうか
よっしゃ
ほいたらすぐに行くよって
いつものあれも用意しといてや
ほな!」

 

オッサンはどうやら居酒屋に予約をしていたようだ

 

「予約も取れたから
ボチボチ行こか」

 

いよいよ
居酒屋に潜入かっ

 

 

ほな!

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