路上のモノ

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「路上のモノ」 その弐拾六

UPDATE : 2014/Feb/06
AUTHOR: 随筆家 ヤマヒデヤ

「路上のモノ」 その弐拾六

 

 

「大切なモノはしまいましょう」

 

 

それは
大切なモノをしまっておく
と言われていた

 

 

大切なモノって何だろう?

 

人によって色々と違う

 

 

ある総理大臣は戦没者の為に
靖国神社という所に行く

 

日本人に殺された人は?
そういう訳で中国やら韓国から
非難を受けている

 

総理大臣は靖国神社参拝を
したくってたまらない

 

それにしまっておこう

 

 

 

今は結婚して子供二人ばかりいる
そういう人のありがちな子供の頃の話

 

公園で遊んでいた
どこからか子犬の鳴き声が
行ってみたら可愛いのがいた
お家では犬は飼えない
あきらめて帰ろうと歩く
犬はついてくる
「ダメだよっ」て言ってみる
これはきっと
犬にではなくて
自分に言ってるんだろう
でもやっぱり犬はついてくる
とうとう自分の家まで
その時はもう抱っこしている
勇気を出して
お母さんに
「飼っても良い?」

 

やはりダメだった
悲しいけど
元の公園まで
次は走って逃げた
泣いた

 

そんな彼は家族で動物モノの映画などを観た時は
思い出すのかな?

 

それにしまっておこう

 

 

 

大好きだった男の子にフラれた
大好きだったのに…

 

ジョリーパスタで
やけ食いをした
とにかく
食って食って
食いまくった
独り暮らしの家に帰った
友達にメールした
電話した
思い出の曲を聴いた
ベッドでもうこれ以上
カラダに水分が無いんじゃないだろうか
って思うくらい泣いた

 

次の日
会社で笑ってた
笑えた

 

それにしまっておこう

 

 

 

ここはとある国
国の中で昔から戦争をしている
どちらとも言い分はある
どちらとも正当な感じだ
あまりにも長きに渡り
戦争をし過ぎたタメに
実際は何がどうだったのか
感情と論理が入り混じった大義
子供たちは字をおぼえる前に
銃の扱いをおぼえる
キラキラした目で
遊んでる時の目と同じ

 

でも本当は戦争なんて
みんな嫌なんだよ
子供は言った
「学校に行きたい」

 

それにしまっておこう

 

 

 

少し先の話

 

ここに地球上最後のゴリラがいた
どこの動物園にも
どこの森にも
もうゴリラはいない
ゴリラは自分がなんなのか分からない
目の前に仲間のゴリラがいないから
ゴリラとしての尊厳(そんげん)や立居振舞(たちいふるまい)が分からない
どうしていいのか
どうすればいいのか

 

それから数年
あのゴリラはチンパンジーの群れの中にいた
チンパンジーがゴリラを受け入れた
ゴリラは今やゴリラでは無い
ゴリラはチンパンジーだ

 

ゴリラは笑ってた
そして笑いながら
地球上最後のゴリラが死んだ

 

それにしまっておこう

 

 

 

点滴を付けて病院の廊下を
いつもニコニコしながら歩いている女の子がいる
それを見て入院している
おじいちゃん
おばあちゃんも笑顔になる

 

どれくらい経っただろう
相変わらず女の子はニコニコしながら廊下を
でも今は車椅子だ
おじいちゃん
おばあちゃんも笑顔になる

 

またそれからしばらくして
女の子はニコニコしている
廊下には出られなくなって
ベッドの上で
おじいちゃん
おばあちゃんは女の子の部屋で
笑顔になる

 

女の子は集中治療室に
昏睡状態だ
おじいちゃん
おばあちゃんは会えない

 

そしてとうとう女の子は
天に

 

一人のおじいちゃんが言った
「なぜ生きる権利を奪うのかのぉ
今からいっぱい恋して
いっぱい気持ち良い事して
いっぱいいっぱい楽しいのに」

 

女の子は遺影の中で
いつまでもニコニコしていた

 

それにしまっておこう

 

 

 

信じてしまった宗教のタメに
自殺したり
テロ行為をする人々がいる

 

お金に目がくらんで
法律を破る政治家がいる

 

組のためにカラダを張って
人殺しをするヤクザがいる

 

それも
それにしまいますか?

 

 

 

もう地球ごと

 

それにしまっちゃいましょう

 

 

 

ほな!

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