路上のモノ

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「路上のモノ」 その弎拾七

UPDATE : 2014/Jul/10
AUTHOR: 随筆家 ヤマヒデヤ

「路上のモノ」 その弎拾七

 

 

「何なのか解らないモノ傑作選その1」

 

 

どうしてこのようなモノがつくられ
どうしてこのようなモノがここに?
どういう代物なのか理解できないモノ

 

そんな疑問を投げかけてくれる出会いがあるよ

 

 

 

 

この方
きっと足をモミモミしてくれる
でもどうしてここへ?
どうしてテレビの上に?
モミモミに飽きられたのか?
モミモミをしなくなったのか?
モミモミのところに足が入らなかったのか?
モミモミが揉むどころか拷問のようなスペシャルハードだったのか?
いくら考えても答えは出ない

 

 

だから聞いてみた

 

「あのぉーすいませぇん
なんてお呼びして良いのか分からないので
モミモミさんお呼びしていいですか?
そう呼ばせていただきますね
お名前を知らないのでモミモミさんで失礼します

 

えっとあのぉ
モミモミさん(仮名)
あなたはなぜ路上に来られたのですか?」

 

 

すぐに返事は無かったが
少し間をおいてモミモミさんは
ゆっくりとした口調で話し始めた

 

 

「私を呼んだのはアナタ?」

 

「はい
僕です」

 

「どうして呼ぶの?」

 

「いやー
別に大した理由は無いのですが…
どうしてここに居られるのかなと
思ったので…」

 

 

ゆっくりとした
やわらかい口調の中にも
なにかドスのきいた
と言いますか
迫力と言いますか
そういった圧迫感を感じさせる
話し方だった

 

 

「望んでここに居る訳ではないのよ
でもここに居てはいけない理由も無いでしょ?」

 

「まぁそうなんですけど…」

 

「まぁ良いわ
気になったのよね
じゃあ
教えてあげる」

 

「はい」

 

「私は
飽きられた訳でも
モミモミしなくなった訳でも
モミモミのところに足が入らなかった訳でも
拷問のようなスペシャルハードだった訳でも無いのよ

 

もちろん
テレビの上に居たいから
居る訳でも無いのよ」

 

 

なんで僕の考えを知ってるんだ
怖いです

 

 

「はぁ」

 

「じゃあなに?
って思われるでしょ?」

 

「そうですね」

 

「教えてあげるわ
聞いてもガッカリしない?」

 

「はい
ガッカリしないと思います」

 

「いいわ教えてあげる

 

私ね
きっと今でもモミモミできると思うの
でもね
気付いたらここに居たの
自分でも何故ここに居るのか
分からないのよ
だから
むしろ誰かに教えてもらいたいくらいだわ」

 

「そうなんですか?」

 

「そうなのよ
突然よ突然
信じられる?
ホント失礼しちゃうわ
こんなに素晴らしいのに
どうして路上なのよ
ここには電源無いし
電池も抜かれてるみたいだから
試してもらえないけど
私ね
ものすごいのよ
テクニックが
気持ち良過ぎて天国まで
お連れすることできるわ
しかもバイプレーヤーだから
ご婦人方も殿方も昇天よ
ねぇ
試してみない?
電源のある所まで連れて行ってよ
ねぇー
サービスするから
たっぷりと
最高よ私のプレーは」

 

 

ちょっと危ないよ
なんだかここに居る理由が分かったような気がしてきた
逃げ出したくなってきたよ
まだずっと喋ってるし

 

 

「ちょいと
ちゃんと私の話
聞いてくれてる?」

 

「ああ
もちろん
もちろんです

 

もちろんなんですが
僕ちょっと用事を思い出したんで
また後日改めてモミモミに来ますから」

 

 

そう言い
僕は逃げるようにその場を去った

 

あんなモノに足入れたら最後
揉み尽くされてボロボロにされそうだよ

 

うっかり話しかけるもんじゃないね

 

個性強過ぎだわ

 

 

数日後
僕はどうしても
そこを通らないといけなかった
恐る恐る進んで行くと
モミモミさん(仮名)は居なかった
安心した
でもどこかで
お話してみたい気持ちが
あったり
無かったり

 

 

モミモミさん
さよなら
お元気でぇ

 

 

 

ほな!

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