路上のモノ

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「路上のモノ」 その拾四

UPDATE : 2013/Aug/29
AUTHOR: 随筆家 ヤマヒデヤ

「路上のモノ」 その拾四

 

 

「カート」

 

 

道を歩いていると
スーパーマーケットの大きなカートがあった

 

どこのだろう?
見たがスーパーマーケットの名前は印サツされていなかった

 

変わったたたずまいだ

 

するとカートが一瞬
ブルッとふるえた気がした

 

僕は恐る恐る
話しかけてみた

 

 

彼の名前は
バッファロー
ブファローでも
ヴァッファローでもない

 

アメリカ大陸にいてる
アイツである

 

これはあくまでも
本人いわく
のこと

 

僕たちの目から見たら
どう見ても
スーパーマーケットのカート
にしか見えない

 

でも
彼はバッファロー

 

では
それならそれで良いとして
なぜそのバッファローのキミが
スーパーマーケットでも
アメリカ大陸でも無く
道端におるのだね

 

そう思いませんか

 

僕はそう思います

 

なので
早速聞くコトに

 

「バッファローさん
どうしてキミは
そこにいるのですか?」

 

少し
沈黙があってから

 

「それは僕にもわからないのだよ」

 

これは困った
それから色々と
これまでのいきさつを
聞いてみた

 

 

彼が言うには
まず

 

“自分はバッファローである”

 


そして

 

“広い草原でお父さんとお母さんと暮らしていた”

 

恐らくアメリカ大陸だろう

 

“他にもたくさんの家族やお友達がいた”

 

 

〜そこは
とても気候が良く
食べるための草も
じゅうぶんあった

 

皆で草原を走りまわったり
休んだり
本当に楽しい毎日だった

 

茶色いニンゲンは怖かったが
必要以上に僕たちをおそったりしなかった
だから見かけても
いちもくさんに逃げるコトも無かった

 

ずっと
そういう生活だった

 

 

でもある日
日がのぼる方から
白いニンゲンが来た

 

見たコトが無いから
皆ザワザワした

 

僕たち子どもは
そんなコトはおかまい無しで
普通どおりに遊んでいたんだ

 

そしたら
その白いニンゲンがドンドンこちらにやってくる
さすがに怖くなったから
お父さんやお母さんのトコロへ逃げた
そして家族一緒に
群れも一緒に
一生けんめ逃げた

 

反対のトコロからも
白いニンゲンが

 

そうしていたら
パンパン音がなって
お友達や
お友達の
お父さんや
お母さんが
たおれていったんだ

 

僕は
怖くて
怖くて
泣きながら走った

 

 

目の前で
お母さんが
たおれた
僕は動けなくなった

 

お父さんは
白いニンゲンに
向かって行った

 

そして僕に
逃げなさいと

 

でも僕はけっきょく
動けないままだった

 

とうとう
お父さんも
地面の上にたおれた
お父さんと
お母さんの
そばに近よった時に

 

最後の
パンッ
ていう音がした

 

そのまま
真っ暗になったんだ
どれくらいたったのかは
知らないけど

 

気づいた時には
ココだったんだ〜

 

 

キミはスーパーマーケット
というトコロいなかったのかい?

 

違うよ

 

気が付いたらね
ココにいたんだよ

 

僕から見ると
キミはブッファローには
見えないよ

 

彼は
わからない
と言った

 

それっきり
話しかけても
何も答えてはくれなくなった

 

次の日
気になったので

 

もう一度
その場所に行ってみた

 

そこにはもう
彼のスガタは無かった

 

 

ほな!

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