TOURISM and LOCAL

フィルター

「観光とローカルの間」東京・蔵前

UPDATE : 2014/Jul/18 | AUTHOR : akiko taniguchi

丁寧な人付き合いが育む新たなコミュニティ
関東地方が梅雨入りをした6月の初旬。
USED Livingのメンバーが東京リサーチのために集まった。

「東京」から連想される場所といえば、繁華街である渋谷、原宿、青山、銀座、六本木。下町であれば、浅草、上野、築地といったエリアだろう。

だが、東京はもっと広い。30年近く東京に住み続けている私でさえも、東京という土地の全貌は未だに分からない。

日本で最も有名な都市と言っても過言ではない東京のことを、私たちは、実は知っているようで、知らないのだ。

 

今回の東京リサーチでは、東京が持つ新たな表情を見つけられたらという想いのもと、「観光とローカルの間」をテーマに、2日間、東京の東側を中心に街歩きをした。

 

リサーチ1日目は、蔵前。

ロケーションとしては、東には夏の風物詩で知られる花火大会で有名な隅田川が流れ、奥にはスカイツリーがそびえ立つ。

北側には言わずと知れた観光名所の浅草、西側にはアメ横や美術館、動物園など清濁を併せ持つ独自の文化を形成する上野、南には相撲で知られる両国に囲まれた、江戸の情緒を残した下町らしいエリアだ。

 

蔵前のメインストリートである江戸通りは、隅田川に沿うように南北に伸び、オモチャ問屋が多く軒を連ねる。

職人の息吹が残る倉庫や建物をそのままにした居抜き物件が多いことも特徴で、江戸通りから一本路地に入れば、小さな町工場や住宅が混在している。

 

今では両国にある国技館だが、初代は蔵前にあったことから相撲にも馴染み深く、控えめな佇まいの蔵前神社は、本場所が始まる前に多くの力士が詣でる神社として有名だ。

こうした由緒ある神社をはじめ、路地裏にも小さな神社が多く見られたことも印象的であった。

 

観光名所で知られる街に囲まれた蔵前は、いわばエアポケットのように思われがちだか、ここ数年、若手のクリエイターたちを中心に、新たに店舗を構える、ものづくりの街として注目されつつある。

 

これには、いくつかの理由がある。

ひとつには、歴史を重ねた下町の情緒を残しながらも、蔵前は、周辺の観光地よりもゆったりとした時間の流れを感じられるということ。わざわざ足を運んでくださったお客様一人一人に丁寧な接客ができるし、店主と客人という関係を超えた人としてのお付き合いができるのだという。店を営む者としては、お客様、そして地域の方々との関係性を大切に育てていけるのが、この街の魅力だという。

 

そうした心遣いがあるから、ユニークな形態のお店も多い。

生活雑貨店を営む店主は、駅から少し離れた立地にも関わらず、近くに休憩できるちょうどいいカフェがないから、という理由で、コーヒーや小さな茶菓子を出すようにしたという。

今では、向かいのビルのオーナーが、毎日1杯だけコーヒーを飲みにきて、少しの雑談を交わすことが日課となっているようだ。

 

ものづくりのクリエイターによれば、ちょっとした納品であれば、馴染みの職人さんが歩いて直接お店まで商品を届けてくださることもしばしばだという。

様々な面で融通がきくし、クリエイターと職人という、切っても切り離せない関係の上での信頼を育むためには、顔を見たお付き合いが続けられるというのは、お互いにとって重要なことだ。

仕入れにしても、例えば皮革であれば、隣駅である浅草橋は都内でも屈指の革問屋の街だ。

 

蔵前は、客商売にしろ、ものづくりにしろ、そうした人との付き合いを大切にした、人間味のある商売人が多く集まる街なのだ。

 

Camera / toshinoriCawai