「観光とローカルの間」東京・砂町銀座商店街
UPDATE : 2014/Jul/19 | AUTHOR :
2日目は、江東区北砂にある商品街「砂町銀座商店街」へと足を運ぶ。
興味深いことに、東京には「銀座」の名を拝借した商店街が非常に多く、23区内には、実に100件を超える「◯◯銀座商店街」がある。
もちろん、この銀座は中央区銀座に由来しているのだが、この事象は関東大震災以降なのだという。
銀座商店街は、最も歴史の古い第一号である戸越から平塚にまたがる戸越銀座を筆頭に形成された関東大震災以降を第一期とすると、第二次世界大戦終戦後に第二期がある。さらに第三期として昭和30年代からの事象があるのだが、注目すべきは第一と第二の類似性だ。
それまで、煌びやかな銀座の街への憧憬から、多くの商店街がその名を冠しているのだと思っていたが、実は震災や戦争からの復興・反映の意味合いもあったのだ。
私たちが訪れた砂町銀座商店街だが、訪れてみてまず驚いたことは、一番の最寄り駅からでさえも歩いて20分程度かかることだ。
明治通りを南下しながら商店街へと向かう途中に、大型の複合商業施設があった。近年乱立する、この大型複合商業施設は、地域に密着した商店を脅かす存在だ。
特に地方の商店街がシャッター通りへと追い込まれている要因のひとつでもある。
そうした地方都市の課題が脳裏をうっすらと掠めていったが、いざ商店街に到着してみたら、そんな気遣いは余計なお世話だと言わんばかりの活気に満ちていた。
長さ670メートル、店舗数約180店の砂町銀座商店街は、八百屋や青果店、肉屋、鮮魚店などの生鮮食品はもちろんのこと、総菜屋に豆腐屋、ケーキ屋、パン屋、酒屋といった加工食品店も充実している。
飲食店は定食屋やラーメン屋、中華料理店、小料理店、喫茶店など、商店街に溶け込んだ昔ながらの堂々とした風格が、いかにも旨そうな店構えだ。
加えて床屋、生活用品店、衣料品店が並び、さらに細分化されて、サンダル専門店、タオル専門店、終いには、近くにある学校の学生服や体操服、水着を扱う制服店まで揃うといった具合だ。
目玉の商店は、雨降りの平日昼過ぎにも関わらず、品切れで店仕舞する有様だ。
まさしく、地元住民の生活を支えている商店街なのだ。
決して洒落てはいないし、目新しさがあるわけでもないのだが、痒いところに手が届く品揃えだし、何より、兎に角物価が安い。駅から多少の距離があるのも、理由のひとつだろう。
商店街には、地元の人々の生活そのものが映し出され、街の人柄が現れる。
砂町銀座商店街は、観光地化されたそれとは違い、そこに住む人々のための営みがあった。
どこのお店の方が安いとか、美味しいとか、商店街攻略のコツがあるのだと思うが、それは、そこに住まなければ見えてこない地元住民ならではの特権なのだと感じた。
「観光とローカルの間」をテーマにした2日間の東京リサーチ。
どのエリアも、その地域に住む人間にしか分からないルールがあるようだった。
観光地のように誰をも受け入れる大らかさがあるわけではないのだが、だからこそ、地域に密着した商店が廃れないし、人との繋がりを第一にした日々の営みが要となっている。
新参者が踏み込むには幾ばくかの勇気が必要だが、ひとたび馴染んでしまえば、江戸の風情を残した“東京の暮らし”が、そこにはまだ息づいているように思えた2日間だった。