かお。

フィルター

no.31 Al

UPDATE : 2015/Nov/08
AUTHOR: 加賀 耕平

no.31 Al|「かお。」|加賀 耕平

 

海原のようにしか見えない空っぽの荒野に毅然とたたずみ、

 

繊細な詩人のように冷酷な靴や月のように冷たく光る鞄を、パリと同じように誇らしげに陳列しながら、決してそれを売ろうとしない孤独な彫刻。

 

PRADA MARFAと呼ばれるそのオブジェに、心の奥のわけのわからないところを揺さぶられ、船酔いのようになってしまったぼくたちは、ほとんどEmptyを指すガソリンメーターさえ見忘れて、やっとの思いでたどりついたのが、Van HornというI-10沿いの小さな町のChevronだった。

 

アルは、ぼくたちの前でゆっくりとガソリンポンプを元に戻し、車を降りたぼくに声をかけてきた。

 

ここは牛がぶつかって凹んだんだよ、もう10年も前の話だけどね。

 

錆だらけのFord F-150のタイヤハウスを指差しながら、日に焼けたアルが笑う。

荷台には大きな牧草用のフォーク。

 

若い頃にはきっとセニョリータを泣かせまくったに違いないイケメンのじいさんが働くRyan’s Ranchには、746頭のテキサスロングホーンがいて、その中に彼の顔を見れば必ず近寄ってくる雌牛が47頭いるそうな。

 

エルパソまでは121マイル。

すっかり馴染んだ銀色のDodge Rumを返して、フェニックス行きのAA5615便に乗らなきゃならない。

 

And if you give me weed, whites, and wine,

And you show me a sign,

I’ll be willin’, to be movin’.

 

こんなやさぐれたトラック乗りのうたを聴きながら。

TIE UP PROJECT