INTERVIEW

Bar SMiLE 沖田 順|INTERVIEW VOL.4

UPDATE : 2012/Feb/25 | AUTHOR :

僕はバーテンダーじゃないんです。
関西から世界に向けて新たなムーブメントを発信する若手プロフェッショナルにスポットを当てたインタビュー企画。
第4弾は、アメリカ村の某老舗古着店で7年間勤められた後Bar SMiLEを開業された、代表の沖田順氏に生の声を聞いた。

────── まず最初に、Barをしようと思ったきっかけや動機はどのようなものですか?

沖田氏:「飲食業に元々興味はあったんですが、長く服屋で働いていたなら、セオリー的には服屋を出すのが普通ですよね。結局、人への興味っていうのが強くて。服屋は服ありきの部分があるから。例えば、よく来てくれるお客さんと仲良くなれても、行ったら買わないと悪いな…とか。学生時代はよく買ってたけど、社会人になってあまり服を買わなくなってしまったから行きにくいな…とか。そんなのが凄く勿体ないと思って。僕としてはせっかく知り合えたのに、って感じるから。だったら飲食の方が距離を縮めやすいし、気軽に入れるなあって思うようになったのがきっかけとしてあります。」

 

────── 飲食の中でもBarを選ばれた理由などはありますか?

沖田氏:「最初はカフェをしたかったんです。全く夜なんて考えてなくて。でもご飯が作られへんと(笑)だから違うな…じゃあ喫茶店…コーヒーだけじゃ無理だな…。そうやって消去法で考えた時に、自分の周りにいる仲の良い人達を思い浮かべると、お酒の好きな人が多いなと思って。学生時代に、”一品を食べながらお酒も楽しめる空間”をコンセプトにした、バーカウンターのある一風変わった焼肉屋さんで働いていた事があって、そこで少しお酒の勉強ができた事があったんですが、その余韻もあって。でも詳しいお酒も分からないし、右も左も分からないまま始めました。」

 

Bar SMiLE

 

Bar SMiLE|沖田 順

 

────── 迷いや不安はありましたか?

沖田氏:「もちろんありました。どちらかと言うと僕は、石橋を壊れる位まで叩く慎重なタイプなんですけど、でも30歳までに何かしたいっていう想いがあって。幸い、自分の周りにはお酒が好きな人が多いっていう環境だったんで、『イケるかな?』って思う部分もあったり。不安もあるけど自信の方がちょっと勝る感じ…変な自信ですよね。」

 

────── 古着屋さんで勤められていた頃にも大変興味があるのですが、古着は昔からお好きだったんですか?

沖田氏:「中学生の頃にはもう色んな古着屋さんに行ってました。焼肉屋さんで勤めていた頃、前職のオーナーが食べに来てくれていて、そこで仲良くさせていただいていて、お店にも行くようになったんです。その頃辺りから『古着屋で働きたい』って色んな人にも言ってて、たまたまそんな時「2店舗目をだすからどうかな?」って誘ってもらえたんです。それが21か22歳の頃だったんで、7年間位働かせていただきました。」

 

Bar SMiLE|沖田 順

 

────── 7年もの長い間勤められていたのなら、辞める時引きとめられたのでは?

沖田氏:「そうですね。7年間分の色んな事、想いや経験、教えてもらった事が沢山あって、もう家族みたいになるんですよね。少しでも自分に迷いがあると、もし引きとめられた時に、『やっぱりどうしよう』ってまた迷うだろうし、計画も立てて、ビジョンも明確にして、本当に意思が固まるまで1年間位考えて、それで決めました。」

 

────── 場所は“アメ村”でと決めていたのですか?

沖田氏:「これがね。最初は調子に乗って新町か南船場で出そうと思ってたんです。少し人里離れたというか、わざわざ来てもらう場所にね。ただ夜になるとあまり人通りがないんですよね…。周りの人達からも、その辺は厳しいんじゃないかって言われたりもして。でも東心斎橋は考えてなかったんです。だったらもうこの辺で7~8年育ってるし、ましてや中学の頃から遊びに来てる街なので、この辺でやろうかなと、ミナミで探したんです。」

 

Bar SMiLE

 

Bar SMiLE|沖田 順氏

 

────── 昔のアメ村と今のアメ村。どこが変わったと感じますか?

沖田氏:「まず街全体が変わったのと、“人”ですね。平日でも人で溢れてたし、怖いイメージもありました。服に関しても、変な格好って言ったらおかしいですけど、目立ってナンボの精神と言うか、どれだけ人と違った格好ができるか、それがステータスだったじゃないですか。田舎から出て来た自分からしたら「あの人スゲーな」って。オシャレな人も多かったし。ワクワクする街っていうイメージで憧れもありました。僕が行き出したのが、無国籍百貨がピークの時で、古着屋さんがめちゃくちゃあったんですよ。朝から晩まで1日で全部周ろうとしても周りきれない位。」

 

インタビュアー:「私自信にも当てはまるので懐かしいです。今でも面影を残しているかも知れませんが…。」

 

沖田氏:「今の人でよく聞くのが、「格好では攻められへん、無難で誰かと一緒なら大丈夫」って。でもアイテムがアイテムなので、着方はオシャレになってきてると思うんです。ただ、言い方が悪いかも知れないけど、個性がないように見えて…。アメ村=個性の塊 っていうイメージがずっと自分の中に残ってるから。だから僕らやその前の世代の人達は「街が死んでる」って言いますよね。宝探しゲームみたいだったし。」

 

────── こんな風にアメ村を変えられたら…そういったものはありますか?

沖田氏:「無理かも知れないんですけど、あの時の人の流れとか、人種?って言うんですかね、あの賑わってた頃のミナミをもう一度見たいとは思います。青春時代じゃないですけど、僕が中学の頃一番興味があった、自分の中で一番大きかった“服”を通して、アメ村がカルチャーショックだったんです。ぶっ飛んだ人が多かったですね。」

 

インタビュアー:「当時はぶっ飛んでいらっしゃいましたか?」

 

沖田氏:「いや…そこそこじゃないですかね。田舎育ちなんで、結局ミナミの真似事は雑誌の切り抜きで。でも街を歩いているだけでも、ちょっと休憩がてら三角公園に座って人を眺めているだけでも楽しかったし。オシャレの参考にするのが街の人だったんですよ、一番分かりやすくてリアルやし。今歩いて見てると、昔ほどのパッションがなくて、同一化してきてるというか…。時代なんですかね。こんな事言う事自体古いのかも知れませんね。」

 

Bar SMiLE

 

Bar SMiLE Bar SMiLE

 

────── 好きなお店や影響を受けた人はいますか?

沖田氏:「お店としては正直あまりないです。お店でどうこうじゃなくて、人としてなんです。 Barに通い詰めていたわけでもないし、あと、僕お酒があんまり呑めなかったんです。 カシスオレンジ2杯でアウト、ビールの「ビ」の字も…っていう位だったんで。だからお店を出す時もみんなが、「いけるのか?!」「酒呑まれへんヤツが何で酒場をするねん!」って言われたり。なので昔は飲み会でも呑んでるフリをしてた事もあったり。今では美味しく呑めるようになったし、29歳にしてやっとビールも呑めるようになりました。変わるもんなんですね。」

 

────── どんなお客様が多いですか?

沖田氏:「全体で言うと、飲食・美容師・アパレル、ほぼサービス業の方で、その中でも8~9割がアパレルの方です。ありがたい事に口コミでわざわざこんな5階まで足を運んでくださる方も多くて、そんな方達も不思議とアパレルの方が多いです。何なんでしょうね。」

 

Bar SMiLE|沖田 順

 

────── 今までのBarとは違う雰囲気というのが第一印象だったのですが、理想とするお店のスタイルは?

沖田氏:「まずBarっぽくしたくなかったんです。僕の勝手なBarのイメージなんですけど、薄暗くて、しっとりしていて…。でもそうしたくないないと思って、お店も明るくしてみたり。カフェっぽいイメージってよく言われるんですが、どこかで最初に『カフェがしたい』っていう想いが残ってるんでしょうね(笑)この界隈で10年以上呑み歩いている方に言われたのが、「この業界にケンカを売るようなやり方だから、逆にいいんじゃないか」って。でも僕はそんなつもり一切ないですよ。アパレルで、ぽっと出で、ミナミでやって、Barっぽくない…。」

 

インタビュアー:「確かに、こんなに明るい店内のBarは他ではあまりありませんね。」

 

沖田氏:「多分、アンチと言うか、あまのじゃくな部分があるんでしょうね。自分がお店に言った時に、扉を開ける、薄暗い、Barっぽい感じ、これだと普通だなって思ってしまって。逆に緊張しながら扉を開けるとめっちゃ明るい、「なんじゃこりゃ?」って、だったら面白いんじゃないかと思うんです。だからうちはカッコつけて呑む場所じゃないです。色々考えると、Barの定義って何なのか、とも感じたり。蝶ネクタイ、シャツ、ベスト、何でも作れるのがバーテンダーというイメージなので、僕はバーテンダーじゃないんです。ただの街の酒場の店主。固いイメージを持って欲しくないので、やって行けるのであれば、このままのユルい感じで行きたいです。」

 

Bar SMiLE|沖田氏

 

────── こんな方にもお店を利用して欲しい、そういった部分はありますか?

沖田氏:「例えば、若い頃はよくミナミに来ていたけど最近は…という方に来ていただけると、ちょっと昔話もできるだろうし。あと、女性はBarに行きにくい部分もあるだろうから、もっと気軽に、お茶をするような感覚で使っていただけると楽しいかなって思います。」

 

────── これからの展開について、具体的にお考えですか?

沖田氏:「少し料理も出せるように、カウンターの中を広くしたくて…あと3坪欲しいんです。 もしかするといずれ移転してリニューアル、もあるかも知れませんね。」

 

インタビュアー:「お話を伺っていると、お店をやってる事が楽しい!と伝わってくるようです。」

 

沖田氏:「悩む事もあるし、しんどい時もあるけど、楽しさの方が勝つというか…だから苦じゃないんです。起きる事以外は。お店をするって言う事は勿論リスクのある事だから、生かされている、生きている実感が凄くあるんです。いいお客さんが多くて、支えられているんだなぁ…とか、一人一人のお客さんの大事さ、大切さがね。『自分のお店です。』っていう感覚があまりなくて、店をやってる自分にも興味がなくて、来てくださる人に興味があって。例えば内装も、お酒も、おつまみなんかでも、お店ってお客さんと共に変化していったんやなーって思うんです。だから背伸びはしません。」

 

Bar SMiLE

 

Bar SMiLE 沖田氏|インタビュー

 

インタビュアー:「今までになかったBarの形。これも素敵なこだわりですね。」

 

沖田氏:「ドロップアウトした人間ですからね。自分で選んだ道だから好きなようにやって、食いっぱぐれなかったらいいと思ってて。少しヒッピーな部分があるのかも知れないですね。のし上がって行こうっていうのがあまりないので、経営者向きでも、商売人向きでもないのかもしれません。その日一日が楽しかったら、ハッピーならいいやんって思うし。」

 

────── お店の名前にもその想いが込められているのですか?

沖田氏:「”keep smile” 笑顔を絶やさず行こうっていう。
人生笑っていればある程度の所までは上手く行くっていう、スローガンじゃないけど。 僕、“何とかなる”って言う言葉が好きなんです。でもね、何とかしようするじゃないですか。自分のどこかにほんの何%でも、そうできる自信があったり、変な根拠に基づくものがあると思うんです。SMiLEって、アイコンも分かりやすいでしょ?コンセプトで言えば、笑顔の絶えない店にしたかったんです。

しんどい日、辛い日、面白くない日、テンションが上がらない日。そんな日にココに来る。でも帰る頃には笑顔になってたらいいなって思って、そういうお店づくりをしたいと思うんです。」

 

Bar SMiLE

 

Bar SMiLE

 

Bar SMiLE

 

Bar SMiLE

 

Bar SMiLE

 

Bar SMiLE | 代表 沖田 順

http://starbox1750.blog58.fc2.com/

 

大阪市中央区西心斎橋2-9-3 日報サンフラワービル505

TEL: 06-62226-7791

OPEN: Monday~Saturday 19:00~AM03:00 /

CLOSE: Sunday

編集後記

そこは昔あったまま残る、ちょっと怖い気もするけど、何かがワクワクさせる古い雑居ビル。
SMiLEのアイコンを目印に、扉の前に立つと誰かの笑い声が聞こえる。

扉を開けると明るく、誰かが笑いかける。
何でもない会話がカウンターで、カウンターからも投げかけられる。ココはBarなのか。

お店でもなく、お酒でもなく、自分でもなく、人との。
そこに足を運ぶ人、一人一人がごく自然に主役にもなれ、友達にもなれてしまう。

そこはBarというより、カフェと言うよりも、人に興味を持ち、
人との関係を何より大切にする酒場の店主が造り出した、楽しい仲間が集う小さなコミュニティー。
難しい事は考えず、一度参加してみるとすぐ分かるだろう。

全盛期のアメ村を知る店主がお客さんと一緒になって育てた、
友達の家に遊びに行く感覚で堂々と夜遊びができる、ちょっと隠れた新感覚Bar。

笑いの絶えないこの場所で、さっきよりもっとハッピーな時間を過ごしてみませんか?

by makiko ueno

Camera / toshinori cawai

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