路上のモノ

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「路上のモノ」 その弐拾八

UPDATE : 2014/Mar/06
AUTHOR: 随筆家 ヤマヒデヤ

「路上のモノ」 その弐拾八

 

 

「居酒屋」

 

 

ここは普通の街のようで
何かが違う

 

いったい何が違うのか
それは分からない

 

恐らく感覚的なものなのだろう

 

「なぁオッサン
後どれくらいで着くの?」

 

「もうすぐや
これやから若いのはせっかちで困る
あの角曲ってチョイチョイって行ったら着くわ」

 

「さっきもそんな事言って
だいぶ時間過ぎてるやん
もうしんどなってきた
ところでオッサン
この街
僕の街と何だか感じが違うんやけど
どこが違うか分からへんねんけど
どっか違うとこってある?」

 

「せやなぁ
ここには路上にはなんも落ちとらんな
あと何じゃろ⁈
空が低い
都会にも田舎にも見える
明るいようでうす暗い
人の気配がしない
音が少ない
他にもなんやあったような気がするけど
思い出されへんよってに
こんなもんでええやろ」

 

「ふぅーん
それでなんや
だからこんな感じなんや
ってどんな感じなんやろ⁈」

 

そうこうしている間に変な建物が
目の前に現れた
いったいいつ頃の建物なんだろ
江戸時代の建物にも見えるし
明治大正の建物にも見えるし
未来の建物にも見える
少なくとも現代の建物には見えない
カタチはピラミッドっぽいが
あんなに大きくない
三階建てくらいの大きさだ

 

どんどんそこへ近づく
静かだったのに
徐々に活気めいた空気が
どうやらあそこが居酒屋のようだ
想像していたのと全然違った
人影はまだ見えない
声は聞こえてきた
繁盛しているようだ

 

「もう分かったやろ
あそこが居酒屋や
いつも満席やから電話しとかんとな」

 

「やっと着いた
何だか数日たったような気が」

 

「わっはっは
大げさやのぉ
さぁ着いたぞ」

 

中に入った

 

 

 

すると

 

そこには

 

誰もいなかった

 

 

そして瞬きをした後
たくさんの人で
あふれかえっていた
何かがおかしい?
気がする
やはり僕の世界とは違うからなのか?
とにかく今は店の中に人が
あふれかえっている

 

「おぅオヤジ俺たちの席はどこや?」

 

店のオヤジさんはニコニコしながら奥の座敷を指差した

 

「おぅこっちか
やっぱりゲストがおると
ちゃうねぇ」

 

「何が違うんですか?」

 

「いやなぁ
いつもやったらこっちのカウンターで飲むんや
あそこの座敷はなんやエラそうな
人ばっかり使こててな
なんやちょっとばかし羨ましかったんや
せやからええ気分や
さぁ行こ行こ」

 

オッサンは上機嫌だ
座敷に向かう途中
オッサンは色んな人に声かけなが歩いて行った
もちろん僕は初めての場所だから
誰も知らない
がしかし歩いていると
何人かのお客さんが僕を笑顔で迎え
中にはカラダをポンポンしてくるものもいた
知っているモノたちなのか?
今目の前にいてるのは
僕と同じ人間にしか見えない
判別はできない

 

話しかけてくるモノもいない

 

座敷に着いた
靴を脱いで上がった
へだてるトビラは無いが
そこへ入ると静かになった

 

オッサンは生ビールと枝豆と冷奴を頼んだ
僕は壁にかかっているメニューをにらみつけるように見た
たくさんある
何にしようか
ポテトサラダと豚平焼きを頼んだ

 

オッサンと色々話した
楽しかった
この内容はまた後日
話すとしよう

 

美味しかった
ひとしきりご馳走になった
今度はカウンターで飲みたいと思った

 

一緒に帰ると思ったのだが
オッサンはもう一杯やってから帰ると言ったので
おじぎをし僕一人だけで店を出た

 

オッサンから帰り道を聞いてメモをとってあるから大丈夫だ
そしてオッサンからは
店を出たらその場で目をつむり
十数えてそれからゆっくり目をあけて
それから帰りなさいと
でないと帰れないらしい
なんだかよく分からないけど
オッサンに従った

 

店の前で目をつむった
頭の中で数をかぞえた
イチ
ニィ
サン
シィ
ゴォ
ロク
シチ
ハチ
キュー
ジュー

 

ゆっくり目をあけた

 

空が高くなった
まぶしい
そして景色が一変した
なんだここは?
どこだ?
あまりにも違い過ぎてあわてた

 

ゆっくりとふりかえった

 

 

そして僕は途方にくれた

 

 

僕の世界から見ると
それはゴミの山にしか見えない

 

オッサンはこの中にいるのか?
僕もさっきまでこの中にいたのか?
こんなとこで飯食って酒飲んでたのか?
ちょっと吐きそうになった

 

でもきっとここだけど
あそこはここじゃ無いんだろう

 

そう自分を納得させて歩きだした

 

 

ほな!

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