INTERVIEW

JUNICHI MURAKAMI|INTERVIEW vol.14

UPDATE : 2013/Sep/28 | AUTHOR : makiko ueno

僕の中の代表作を「駒鳥文庫」にしたい。
ユーズドリビング編集部が、これからのライフスタイルのヒントになるかもしれないと感じた、今気になる人物にマイクを向けたインタビュー企画。
第14弾は、大阪天満橋にある映画関連専門古書店「駒鳥文庫」代表の村上淳一氏にお話を伺った。

──────昔から古本屋さんが好きで、時々お店にも行ったりしていたのですが、「映画専門」の古書という、こういった品揃えは珍しいのではないのですか?

 

村上氏:意外とありそうでないですよね。ただ東京とかだと、昔から映画・演劇の専門店みたいなところはありますね。でも映画以外の本も置いているので、純粋にそれしかない本屋さんていうのはなかなか少ないみたいです。

 

──────映画は小さい頃からお好きだったのですか?

 

村上氏:子供の頃はテレビが大好きだったんですけど、映画を真剣に観るようになったのは高校・大学辺りですね。ただ高校は付属だったんで、大学へそのまま上がってしまって、あんまり映画の勉強をしようという感じではなかったんです。でも大学を卒業してから、やっぱり映画のことが気になって専門学校に通い直したんですよ。

 

──────それは勿論、映画関連の専門学校なのですね?具体的にはどのようなことを学ばれたのですか?

 

村上氏:放送映画学科だったんですが、勿論映画の理論的なこと、歴史的な部分、それに撮り方であったりとか。実際に映画を作ってみたりもしましたね。

 

──────とても楽しそうな授業ですね。

 

村上氏:楽しかったですよ。その分しんどい思いも色々ありましたけどね。卒業後は、本当は映画の仕事に就きたくて、一度は照明の会社に就職が決まったんですが、働き出すのが2ヶ月先でめちゃくちゃ暇だったんです。そんな時に就職の手続きでハローワークに行ったんですが、そこで何気なく求人をボーッと見てたんです。そしたら大正13年から続く老舗古本屋の正社員募集っていうのを見つけて「何やココ!?」って。古本屋の正社員をハローワークでって…あんまり見ないでしょ?働き出すまで暇だったし、冷やかしで面接を受けに行ったんですが、その場ですごく気に入ってもらえて、「もう明日から来て!」ってなってしまって。それで照明の会社は結局お断りさせていただいて、古本屋で働くことになってね。

 

駒鳥文庫店内 JUNICHI MURAKAMI|INTERVIEW vol.14 駒鳥文庫店内 JUNICHI MURAKAMI|INTERVIEW vol.14

 

──────思い描いていた映画の仕事から古本屋さんに。偶然の面白いきっかけだったんですね。

 

村上氏:そこで5年くらい丁稚させてもらって、色々学ばせてもらって独立開業したんですけど。だから最初の頃はね、何故か古本屋になっちゃったんで、もう映画のことは忘れようと思ったんです。“これで俺の将来良かったんやろか?”って悩むんでね。そうやって丁稚時代は本に専念していたんですけど、独立を考えた時に、やっぱり好きな映画のことが頭から離れなくて。じゃあ一緒にやってしまおうと思ったんです。

 

──────勿論「本」もお好きだった訳ですよね?

 

村上氏:もともと古本屋にはしょっちゅう通ってて好きだったし、抵抗は全くありませんでした。実際働いてみて面白い世界でもありましたしね。

 

駒鳥文庫エントランス JUNICHI MURAKAMI|INTERVIEW vol.14

 

──────店名の「駒鳥」は「コマ撮り」から名付けられたのですか?

 

村上氏:映画にちなんだ名前にしようと思って、最初は「ゴダール書店」とかベタなのも考えてたんですけどね。学生時代に「コマ撮り」のアニメーションを作ったことがあって、凄く楽しかったんです。それでこれに決めました。「コマ撮り」ってCGにはない良さがあると言うか…。うちもどちらかと言うと、そういうハイテクよりはローテクな感じがピッタリだとも思いましたしね。

 

──────映画の世界にのめり込むきっかけや、思い出に残るような作品はありますか?

 

村上氏:僕の学生時代ってミニシアターなんかがブームだったんです。高校生くらいの頃はちょっと背伸びしたくて、小難しいのを観てカッコつけたかったんですよ。最初は訳も分からず、さっき言ったゴダールなんかを観に行ってましたね。でもそうしてるうちに「あれ、これって色々面白いかも…」って思うようになってきて。それで映画館に通うようになったのがきっかけなんですかねぇ?

 

「ありふれた事件」 JUNICHI MURAKAMI|INTERVIEW vol.14

※「ありふれた事件」

 

村上氏:思い出に残る作品も色々ありますけど、大学の頃に観た「ありふれた事件」かなぁ。所謂「ブレアビッチプロジェクト」みたいなドキュメンタリータッチの作品なんです。ある殺人者をドキュメンタリーで追う内容なんですけど、追って行くうちにだんだんとその撮影者も一緒に参加してしまったりして。その殺人者は勿論怖くて残酷なんですが、ちょっとマヌケで、アホっぽくて、人間臭い…何か憎めないというか、そんな面もあるんですが、“あぁ、こういう映画も、こういう表現方法もあるんだ”と思ったことも、映画の勉強をしたい、自分でも撮ってみたいと思ったきっかけかも知れませんね。

 

──────私も映画が大好きなのですが、“好きな映画は?”と聞かれた時に、どこか恥ずかしいような、少しミーハーなところがあります。昔作られた作品にもとても興味があるのですが、どれから観ればいいのか、なかなか選べなくて…

 

村上氏:最近だとミニシアターとかシネコンとかって予約制でしょ?昔って、ちょっと時間ができたから映画でも観ようかな?って、ふらっと町の映画館に入れましたけど、こういうのが最近できなくなりましたもんね。その点ではなかなか身近な生活の中に映画がない感じになってきてるので、寂しい気がしますね。

 

JUNICHI MURAKAMI|INTERVIEW vol.14

 

──────村上さんが“この映画は良かった!”と思う作品はどのようなものですか?例えばストーリー面であったり、映像としてである、またはその両方が融合しているものなど…

 

村上氏:実際に映画監督でもないのでアレなんですけど、一応勉強はしたので、だいたい自分だったらこう撮るなぁとか、そんなのがあるじゃないですか。ある映画を観た時に、例えばカメラマンさんの仕事であったり、役者さんの演技であったりだとか、そういうプロの仕事を見ると“うぉ!スゲー!!”ってなっちゃいますね。

 

──────作り手側の視点なのですね。

 

村上氏:脚本の組み方にしても、“うわぁ、あそこの伏線をココに持ってきはった!”とか、そういうのが多いですね。でも映画なんて、そうは言っても娯楽ですから、最終的には楽しんだもん勝ちですけどね。娯楽の中に芸術を見い出すのは良いと思うんですけど、自分から“芸術やで!”って言ってしまうのはあまり好きじゃないと言うか。変に考えちゃうと逆に楽しくない時もあるので、最近は何も考えないように観てはいるんですけど。やっぱりそういったシブい仕事を見せられると“かっちょエエ…”ってなりますね。

 

──────なるほど。こんなお話をしていると、やっぱり観たくなってきますね。

 

村上氏:昔の映画にしたって、当時は凄くても今観るとそうでもないこともありますし、一概に古いものが良いとは限りませんからね。でも古いものの中には、時代で磨かれたと言うか、残ってるということ自体に、何か面白いものがあるということでもありますから。
きっかけですよね。例えばうちに来て、“あ、この表紙が可愛い、コレを書いたのは誰?どんな作品?”っていうのも1つのきっかけなので。そんなふうな、映画を観ることへの1つの取っ掛かりになれば、うちとしては嬉しいんですけどね。

 

取材風景 JUNICHI MURAKAMI|INTERVIEW vol.14
 

──────ブログを拝見していて1つ気になったお話がありました。“女優「高峰秀子」関連の本を探し古本屋を巡るうち、気が付けば古本屋の店主になっていた” これがお店を出す一番のきっかけとなったエピソードなのかな?と思っていました。

 

村上氏:あ、デコちゃんね!でもそれはそうかも知れないですねぇ。デコちゃんの本を探し出すと、どの本屋さんにもあることはあるんですけど、ちょっとしか無くて。1箇所に集まってくれたらなぁ、とは思ってました。

 

女優「高峰秀子」関連書籍 JUNICHI MURAKAMI|INTERVIEW vol.14

 

──────その演技に引き込まれたのですか?

 

村上氏:いやぁ、もうスゴいですよ。背中だけでも演技しますからね。女優さんやタレントさんの写真集なんて買ったことないんですけど、「高峰秀子」は買ってしまいましたし。演技でその映画が好きになるのも、役者さんは演技が仕事であって、プロですからね。…やっぱりプロに弱いんです、単純に。

 

──────好きなことを仕事に選ぶに至って、特別な思い入れや、実際に行動に移すきっかけなどはありましたか?

 

村上氏:僕の場合は、古本屋になったこと自体がたまたまなんでねぇ。ただ働いているうちに、始めたからにはプロになりたくなって。古本のプロって言うと、やっぱり自分のお店を持つっていうのが最終的な所なので。だから好きだから仕事に、と言うよりは、突き詰めて行くと勝手にそうなってたっていう感じです。

 

──────実際にお店を持ったことで、大好きな映画や本との関わり方や向き合い方に変化はありましたか?

 

村上氏:「あっ 俺、趣味が無くなった」って思うことが時々あります。趣味が仕事なので、趣味がない(笑) 休日に映画観たり本を読んだりしても、仕事してる?って思ってしまうので。特に作品作りではなく、観る方・読む方専門だからでしょうね。月に1回ラジオにも出させてもらっているので、それが近づくと関連の映画を観るんですが、それもどちらかと言うと仕事に近いですし。

 

取材風景 JUNICHI MURAKAMI|INTERVIEW vol.14

 

──────ラジオはどのようなスタイルでされているのですか?

 

村上氏:DJの土井コマキさんとお題を決めて、収録までにお互い観て感想を言い合うだけっていう、ぬるーい感じです(笑) “向こうはプロやけど、こっちは素人やっちゅうねん!”って思いながらも、ぶっつけでやらされてますし(笑)

 

──────私にはそんな機会が巡ってくることなんて一生無さそうですが、そちらも楽しそうですね!

 

村上氏:楽しいんですけどね、毎回噛んでます。でも、もうこれは趣味…って言うと失礼かも知れませんが…

 

──────趣味!あったじゃないですか!

 

村上氏:あ、ほんまや!趣味はラジオ出演…いつ切られるか分からない趣味ですけどね(笑)

 

 

──────「天満橋」という土地を選んだ理由などはあるのですか?

 

村上氏:僕、基本的に本当に理由がなくて、ここでお店をやることになったのもたまたまなんです。来てくださるお客様も、どちらかと言うと映画が好きな方がわざわざ探して来てくださるケースが多いですし。

 

駒鳥文庫外観 @天満 JUNICHI MURAKAMI|INTERVIEW vol.14 駒鳥文庫看板 @天満 JUNICHI MURAKAMI|INTERVIEW vol.14

 

──────コレクターさんも沢山いらっしゃるんでしょうね。

 

村上氏:そうなんでしょうね。でも本屋さんなんで、毎回毎回お話する訳でもないですし。それに、僕より映画を観てる人なんて沢山いるだろうし、逆に教えてもらうことの方が多いんです。それで、そんなマニアックなお話を普通の人ともお話したり。ラジオにしてもどちらかと言うとマニア向けじゃなく、一般の方が聞いても“あ、映画って面白いかも。久々に観てみよう!”って思ってくれるといいなぁって、そんなスタンスでやってるんです。

 

──────邦画・洋画問わずお好きですか?

 

村上氏:はい、問わずですね!アニメーションも好きですし、もう動くものだったら何でも!

 

──────「映像」そのものがお好きなんですね。

 

村上氏:そうなんでしょうね。動く絵だったら何でもアリですね。それこそアレですわ、運転免許の更新の時に見せられるあの映像でも楽しんで見られますもん。

 

──────私個人的なお話なんですが、小学校の頃、学校に行くまでの時間に見ていた子供向けの番組の中のあるコーナーで、粘土で作られたキャラクターがコマ撮りで動くアニメーションがあったんですが、あれが今も大好きで。もしかしたらこれが、私が映画に興味を持つきっかけだったのかな?と、ふと思う時があるんです。

 

村上氏:クレイアニメーションみたいなものですね。あぁいうのって、ホンマに映像の原点ですよね。昔だったら「絵」しかなかった、「写真」しかなかった、そんな動かないものが実際に動く訳ですからね。昔、映像を作ってらっしゃった方って、やっぱりプロが多いんですよ。一見すると、子供の頃は分からなくても、大人になった今観るとしっかり作られてあったり、あえて雑に見せていたり。今のようにCGで簡単にできるものじゃない、職人技っていうのが面白い、と言うか、スゴいです。

 

JUNICHI MURAKAMI|INTERVIEW vol.14

 

──────CGを使った映像や映画などが主流になった今、昔の職人技や技術といったもの自体の出番も少なくなり、また使える人もやはり減ってしまっているのですか?

 

村上氏:最近でも、みんなが知ってるような有名なアニメーション映画監督が、例えばCGなんかの最新技術を使わずに、短編の特撮モノを作ったり、そんなものもあるんです。昔、「ゴジラ」の時代から続く特撮の技術も、使わないと失われてしまいますからね。ミニチュアをどう作ると上手く見えて、どう上手く壊れるか。実際に作り続けないとできなくなってしまう部分だし、それを伝えたいっていう思いからなんですよね。

 

──────これも1つの伝統技術ですもんね。

 

村上氏:最初は上から吊るしていた飛行機を、「線」を隠す為にはどうすればいいか。そういうのって現場で試行錯誤するうちに工夫され、洗練されていくので、そういう意味では技術の伝承は行われるべきですし。みんなが普段観る映画も大事だし、それがないと映画界が儲からない、そうなってしまうと芸術作品や小さな映画も生まれませんしね。

 

JUNICHI MURAKAMI|INTERVIEW vol.14

 

──────もう作品作りはされないのですか?

 

村上氏:学生の頃は作ってましたし、作りたかったんですけど。まぁ、自分に才能がないのも1つと…

 

──────今でも作りたくなるんじゃないですか?

 

村上氏:未だにアレですよ。布団に入って寝るまではオリジナルストーリーとか考えてますよ(笑)

 

──────テンションが上がって眠れなくなりませんか?

 

村上氏:たまに…。“この設定オモロイ!”っていうのたまにあるもん(笑) 例えばね、わざと殺し屋に自分を殺させる依頼をするっていう…。殺し屋に殺されるのを仕事にしてる「殺され屋」の設定とか。じゃぁストーリーはどうしようかなぁって考えたりね。あ、これはこないだ思い付いたんですよ(笑)

 

──────それは眠れませんね、内容的にも(笑)

 

村上氏:そういうのを考えるのが昔から好きなんでしょうね。今イベント企画なんかもやってるんですけど、それも結局ストーリー作りに似てるんですよね。

 

駒鳥文庫店内 JUNICHI MURAKAMI|INTERVIEW vol.14

 

──────お店では勿論、「古本と人、街、空間を繋げる展示やイベント」をkof(コフ)という団体でも展開されているんですね。

 

村上氏:うちのお店と、「ON THE BOOKS」さん「FOLK old books」さんの、だいたい3人で色んなことを企画してるんですけどね。シナリオ的なものを考えて、実際に動いて何かを作るっていうのは、ある意味映画を作るのとやり方が似てると言うか。お店作りもそうかも知れないですね。そこで結局満足できるから映画を撮らなくてもいい…って言ってしまうとアレなんですが、でもカメラを使ってないだけで、「駒鳥文庫」にも始まりがあり、紆余曲折があり、言ってみれば映画の作品みたいなものなので。

 

──────様々な場所で、古本を使って地域や人と新しい繋がりを生む。活動の趣旨も勿論ですが、今までありそうでなかなか無かったんじゃないかな?と思っていました。

 

村上氏:昔から本の即売会のようなイベントはあって、勿論それも大事だと思って参加しているんですけど、それとは少し趣旨が違う感じの。本にあまり興味がない人にも、いかに興味を持ってもらえるか。好きな人だけで固まってると、どんどん小さくなってしまいますからね。今そんなイベントを、映画を撮れない代わりにやってる感じですね。

 

JUNICHI MURAKAMI|INTERVIEW vol.14

 

──────でもそのうち、その映画熱が爆発して撮りまくってた…なんていうこともあるかも知れませんね。

 

村上氏:どうなんでしょうね(笑) でも、僕の中の代表作を「駒鳥文庫」にしたいんでね。映画作品もそうですけど、そもそも映画って何やねん?っていう話で。例えば2時間の映画があれば1時間のものもある。だったら1分の映画も、1秒間に24コマある中の1コマだけの映画だってあってもいいんじゃないか?でもそれだと写真と一緒。じゃあ写真は映画?でもアニメーション映画も映画なんだったら、1枚の絵も映画?  こんなふうに突き詰めていくと、何が何だかわからなくなってくるんです。だったらお店自体も映画であっていいのかな?とも思うんです。

 

──────哲学のようなお話ですね。

 

村上氏:古本なので注文して入ってくるようなものでもないけど、たまたまお客様が沢山買い取りで売ってくださったり、古本の市場で偶然買えたり。細かいことのようですけど、起承転結のあるドラマ・ストーリーのようで面白いんですよ。だからエンディングまで上手く迎えられたらいいんですけど…。今の所はまだ「承」くらいですかね?

 

──────完結はするのですか?

 

村上氏:せざるを得ない時が来るかも知れませんが(笑) こんなこと言ってても、急遽来週、来月にもう無くなってるかも分かりませんし(笑) たいしたエンディングも迎えられず“あっという間に終わっとる、打ち切りやん”ってね。

 

駒鳥文庫店内 JUNICHI MURAKAMI|INTERVIEW vol.14

 

──────でも新店も間もなくオープンされるんですよね?

 

村上氏:そうなんです。今ここでもちょっとコーヒーを出させてもらってるんですけど、新店はブックカフェとして、カフェに力を入れようと思ってます。あと、「駒鳥」の名前にちなんで、「鳥」にまつわる本や雑貨だけにしようかなって(笑)

 

──────「鳥」のみですか(笑) またコアな品揃えになるんですね。例えば「Twitter」の本も並ぶのですか?

 

村上氏:あ、ソレはアリですね。「青い鳥」のような小説でもいいし。…そうか、Twitterの本はアリやな。ソレいただきます(笑) 新店に関しても、もともと名前ありきで始まったんです。「駒鳥文庫」に「駒鳥姉妹店」っていう名前の姉妹店があったら面白いね、ってね。

 

──────鳥専門のブックカフェ。また羽ばたいて行くのですね。

 

村上氏:…閑古鳥鳴いてますよ。飛ぶ鳥落とされる勢いです(笑)

 

──────「駒鳥文庫」「駒鳥姉妹店」として、お店のあるこの町とどのようにありたい、またどのような関係を築きたいとお考えですか?

 

村上氏:何十年経っても“まだココあるで”“何でココまだあるんやろ?”そんな、自然と町に溶け込んでる本屋さんになりたいです。そんな昔ながらの本屋さん、これが最終的なユメ、理想です。特に目立つこともなく、この天満橋にあって当たり前の風景になれば嬉しいですね。

 

駒鳥文庫店内 JUNICHI MURAKAMI|INTERVIEW vol.14

 

──────あと何年か先にそうなれているような気がしてきましたよ?

 

村上氏:いやでも、来月に最終回を迎えるかも知れませんし(笑) 僕自身がそういう古本屋出身なんでね。でも昔ながらの古本屋を今やろうと思うとやっぱり大変なので、やり方だけは新しくと思ってます。色々とイベントを企画してるのも、昔からのお店をいかに生かすか、どうすれば本に興味を持ってくれる人を増やせるかを考えて、結果昔からの古本屋が生き残れれば、そんな思いでやってます。

 

──────ではこの辺りで、村上さんにとって思い入れのある本を3冊程ご紹介いただけますか?

 

村上氏:まずやっぱり1冊はこれにします。お店に入ってきて売れて、また入ってきて、今でちょうど3代目です。

 

参考書籍1「不滅のスター高峰秀子のすべて」 JUNICHI MURAKAMI|INTERVIEW vol.14

※「不滅のスター高峰秀子のすべて」

 

──────これはもう「駒鳥文庫」には欠かせない1冊ですね。

 

村上氏:そりゃあもう、原点みたいなものですよね。当時必死に探して買いましたから。それに、演技は勿論なんですけど、筆も凄く達者な方なんで、そっちもおススメなんです。

 

あと、本で好きなのはこれです。

 

参考書籍2「ヴィネガット 大いに語る」 JUNICHI MURAKAMI|INTERVIEW vol.14

※「ヴィネガット 大いに語る」

 

村上氏:「タイタンの妖女」「スローターハウス5」でも有名なアメリカの作家さんなんですけど、とにかく彼の作品は大好きで、繰り返し読んでます。翻訳なので本当のところは分からないんですけど、それでも文章がとにかく面白い。語り口調であったり、シニカルな考え方、何か一見冷たいようで、でも凄く優しい。現役の有名作家さんも彼に影響を受けた人も多くて、僕も本の作品で一番影響を受けた人物です。

 

あとはね、僕マンガも好きなんです。その中の1冊がこれです。

 

参考書籍3「男おいどん」 JUNICHI MURAKAMI|INTERVIEW vol.14

※「男おいどん」

 

村上氏:松本零士さんって、例えば「銀河鉄道999」とか、「宇宙海賊キャプテンハーロック」とか、宇宙を舞台にした作品のイメージですけど、これには全く出てきません。四畳半のボロアパートに住む男おいどんが、とにかくツイテない毎日を送るストーリーなんです。でもね、密室に近いアパートを舞台にしてるのに、こっちの方が宇宙的と言うか、世界が広いんですよね。「四畳半の宇宙」みたいな感じで。本当にパッとしない、でも楽しく生きてるなって感じです。僕自身も貧乏だけど本屋やってますし、楽しんでくださる方もいて、物語もあるんです。自分の境遇にも近いのかも。

 

 

 

──────最後にもう一つ。HPを拝見して印象的だったフレーズがあります。
“「エンドロールの、余韻」ー映画が終わりエンドロールとテーマが流れ、やがて館内が明るくなる直前の、正にその瞬間。そんな空気漂う店内に…”とありますね。私個人的には、映画が終わってしまうこの瞬間が、映画館にいて一番切ない瞬間です。村上さんのおっしゃる「エンドロールの、余韻」、この瞬間はどのようなお気持ちになるのですか?

 

村上氏:そんな余韻を味わって欲しいんですけどね。僕がイメージしてるのは「理想の映画館のロビー」なんです。館に入って映画が始まるまで待つ場所が、こんなふうだったらいいなぁって。だからお店の出口が映画館の入り口だったら最高なんです。映画の大きなスクリーン自体も良いけど、ロビーのあの空間だってオモシロくてね。

 

駒鳥文庫店内 JUNICHI MURAKAMI|INTERVIEW vol.14

村上 淳一 JUNICHI MURAKAMI / 駒鳥文庫 代表

<INFORMATION>
映画関連古書専門 駒鳥文庫
URL. www.komadori-books.jp
場所. 〒530-0043 大阪市北区天満3-4-5 タツタビル101
TEL. 06-6360-4346
Mail. info@komadori-books.jp
営業時間. 12:00-19:00
定休日. 月曜日その他

編集後記

私も小さい頃テレビっ子だった。

当時大好きだったのは、朝放送されていた子供向け番組。歌があったり、何かを作ったり、人形劇があったり、子供心に「なんか不思議?」と思わせる、その頃ナゾだったアニメーションがあったりしたものだった。今になると懐かしく遠い記憶だが、今でもしっかりと頭の中に残っているものがいくつもある。私の場合、曲やメロディーの断片であったりすることが多いが、必ずそれに合わせて映像もぼんやり覚えている。逆に映像のインパクトに曲がついてきたようなものもある。

少しずつ大きくなるにつれ、そのようなものも見ることが徐々に減り、人気のアニメ番組へと昇格した。3年生の頃、水曜19時の興奮が今も忘れられない。

劇場版アニメ以外の映画を初めてちゃんと観たのは中学生の頃。タイトルは…やっぱりちょっと恥ずかしくて言えないが、顔が潰れるほどたくさん泣いた、今でも大好きな作品だ。

スクリーンを前に映画が始まるまでの、あの長い長い次回作の予告。また1つ、次に観たいものを見つけては水曜の映画館に足を運ぶ、を繰り返し今に至る。まんまとやられている感じか。と言う訳で今でも映画が大好きだ。あのたった数分、数時間でも、音と映像と、あるストーリーの中にどっぷり浸かってしまうあの感覚がたまらない。

映画好きで、とてもシャイな店主が始めた古本屋。マニアも唸る品揃えなのは言うまでもなく、あの雰囲気が何とも心地よい。独特のリズムで時間が流れるその感覚は、ゆっくりなようで、時に速くもあり、ここでも少し不思議な気分になるような。

話を聞いて腑に落ちた。それはまるでそこにシナリオがあるかのように、古本で人や町と繋がり、新しいカタチを生み出すストーリーの真っ最中。「カンペと安物のペンを持った女が質問を嵐のごとくぶつけては、カメラを抱えた男がパシャパシャ撮りモニターを覗く。まったく、営業の邪魔になって仕方がない。」そんなページも刻まれているハズだろう。うっかり、1人でも微笑んでしまうような懐かしさもある、秘密の隠れ家のようなロビーで、次回はどんなストーリーが展開するのか。一度見てしまうと次作が気になるもの。

本日も「駒鳥文庫」絶賛上映中。

次は「駒鳥文庫姉妹店」で、上手なつぶやき方の本でも探してみようと思う。

by makiko ueno

Camera / toshinori cawai

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