INTERVIEW

LIFE IS JOURNEY|INTERVIEW vol.17

UPDATE : 2014/Mar/23 | AUTHOR : makiko ueno

自分を変えてくれる世界への旅の途中で
より良い暮らし方のヒントを、世界中を駆け巡り、見つけ出す旅を続ける二人がいる。
それぞれの国に根付く歴史や文化を感じながら、その地での暮らし方を自ら体験し、いいところを持ち帰る。
常に新しい発見に満ちた旅の中で、少しずつ広がり、繋がっていくいくつもの小さな輪。
彼らが見つけた、理想の暮らし方とは。
約9ヶ月間、全二十数カ国に渡る世界一周の旅を終えた、川内夫妻にお話を伺った。

──────お二人で世界中を旅される前は何をされていたのですか?

 

川内 まり氏(以下:まり):私は現在もなんですが、スノーボード関係のメーカーで働いています。

 

川内 康行氏(以下:康行):僕はサラリーマンで営業をしていました。僕は仕事を辞めて、まりはたまたま休職できたこともあって。

 

──────お仕事を辞めるのも大変だったのではないですか?

 

康行:結構大変でしたね。たまたま僕の弟が、僕より先に会社を辞めて転職していたんですけど、そのことで両親もすごく心配していて、僕が親からその相談を受けていたんです。 これは今すぐ言う訳にもいかないと思って、少し時間をおいてから「弟の話の後で申し訳ないけど、実はオレも…」って(笑) やっぱり最初はかなり驚かれたんですけど、今まで僕が「こうしたい」って言ったことに対して、あまり反対されたことがなかったんです。でも親に話したものの、自分も悩むところがあって…。そんな時に、「世界一周して日本に帰ってきて仕事に困るようなことがあったとしても、家だけはあるから気楽に行っておいで」って言ってくれたんです。この両親の言葉は嬉しかったし、心強かったですね。そう言われなくても、結局は行ってたと思うんですけど(笑)

 

──────世界を旅して周る一番のきっかけやエピソードなどは、お二人それぞれにあったのですか?

 

まり:私は十代の頃から、いつか世界一周に行きたいってずっと思っていました。

 

康行:僕はそれまでは全く行ったことがなくて、学生の頃はまりが行くのを横で見ながら、「今度こそ、本当にもう会えなくなるかも知れへんなぁ」って思っていました。

 

まり:そうなんです。海外に行ったら、死んで帰ってくるって思い込んでみたいで(笑)

 

康行:夏休みとか春休みになると結構海外に行ってたみたいなんですけど、僕は行ったら死ぬって本気で思っていたので、絶対に行きませんでした(笑)

 

──────危険な場所や土地を選ばれていたのですか?

 

まり:いや、そんなことは全くなくて、タイに行ったり、インドに行ったり。インドは女性一人旅だとちょっと危ないかも知れないですけど、学生の頃はよく一人でウロウロしてましたし、普通に帰ってこれていたので大丈夫ですよ。

 

康行:バックパッカーと、ツアーで行くツーリストのちょうど中間くらいでしたね。そこまでパックパックで安宿にガンガン泊まっていた訳でもなかったし。

 

LIFE IS JOURNEY|INTERVIEW vol.17

 

──────旅先で不安になったりすることはありませんか?

 

まり:それまで東南アジアでは、ちょっと良いホテルに泊まったりしていたんですけどね。初めてバックパッカーとしてインドに行った時なんですけど、空港に降り立った瞬間、目の前にものすごい世界が広がっていたんです。「ここで私が右を選ぶのも、左を選ぶのも自由だし、もし私に何か起こって死んでしまったとしても、誰も見つけてはくれないだろうなぁ」って。その自由感が怖かったんですけど、同時に最高だとも思ったんです(笑)

 

──────エキサイトしたんですね!私だったら泣いてしまいそうです。

 

康行:空港を降りた瞬間って、怖いのは勿論なんですけど、「これから何が始まるんやろ!?」っていうワクワクする感じが自分の中でも大きいですね。

 

INDIA BY LIFE IS JOURNEY|photo by Mari Kawauchi

photo by Mari Kawauchi

 

INDIA BY LIFE IS JOURNEY|photo by Mari Kawauchi

photo by Mari Kawauchi

 

──────では、きっかけと言うよりは、昔からまりさんはよく海外に行かれていて、康行さんはそれを横で見ておられて…自然の成り行きでといった感じだったのでしょうか?

 

康行:よくやるなぁって、僕はずっと思っていて。結婚から1年くらい経った頃に、「一緒にインドに行こう!」って突然言い出したんですけど、僕はその時もまだ一度も海外に行ったことがなかったんです。多分一緒に行かなかったら、絶対一人でいくやろうなぁと思って。じゃあ、まぁ行くか…ってなったのが最初です。

 

──────あまり乗り気という感じではなかたのですか?

 

康行:そのインドの時はほとんど嫌々、半強制(笑)

 

まり:なんでそんなこと言うのよ!(笑)

 

康行:その時はね(笑) だって、本当に死ぬって思ってたくらいだったんで。あの時、デリーの空港に着いたのが夜中で、もう時間も遅いからデリーで一泊したんです。空港からタクシーに乗っている時、外を見れば普通に路上で寝ている人がたくさんいたり、その辺を牛が歩いていたりするのを見てると、「なんじゃこりゃ、このままどうなるんやろ?」って、正直すごくビビったんです。でも同時に楽しいと言うか、ワクワクする感じもあって。あの感覚が今でも忘れられないですね。

 

──────その初めてのインドの旅で「これだ!」となったのですか?

 

康行:そうかもしれないですね。その時は世界一周に行こうとまでは思っていなかったんですけど。今までずっと食わず嫌いしていて行けなかったんですけど、こんなに自分の知らない世界があるんだと気付くと「これは見たいな」って単純に思ったのが、世界一周に行こうと思ったきっかけですね。

 

LIFE IS JOURNEY|INTERVIEW vol.17

 

──────初めての旅で、心に残るエピソードはありましたか?

 

康行:ヒンドゥー教の聖地のバラナシっていう所が、僕は好きなんです。みんなが最後、死にに来る街なんですけどね。

 

──────「死を待つ人々の家」というのを聞いたことがあるのですが・・・

 

康行:それです。海外に行ったら死ぬかも知れないって思ってる自分が、実際に「死」がある街を目の当たりにすると、改めて「死ぬ」っていうことについてすごく考えさせられたんです。「明日死ぬかも知れない」って、日本で感じることなんてないでしょ?でもそれを感じると、一日一日が楽しかったんです。

 

LIFE IS JOURNEY|INTERVIEW vol.17

 

──────なるほど。でもそこから会社を辞めてまで「世界に行くぞ!」と実行に移すのは、大きな決意だったのではありませんか?

 

康行:確かに、世間の目とか、自分の両親からすると、やっぱり僕が稼がないといけないって思うところもあるだろうし、僕自身も少し気にはしていたんですけど。でも二人なんでね。帰ってきても何とかやっていけるだろうと思っていて(笑)

 

まり:極めて楽天的なんです(笑)

 

──────お二人の独特の同じ空気感が心地良くなってきました。

 

康行:焦ることもありますけど、今まで何とかやってこれたので、ちゃんとさえしていれば、これからも何とかなるんじゃないかな?って思ってます。

 

LIFE IS JOURNEY|INTERVIEW vol.17

 

──────様々な国の暮らしを見てこられた中で、今も心に残るのはどのような暮らしでしたか?

 

康行:ネパールのヒマラヤで一週間くらいトレッキングしたことがあったんです。多分料金がかなり高いと思うんですけどロバに乗るか、歩くかでしか行けないような山の中で。僕達はずっと歩いていたんですけど、二時間おきくらいのペースで山小屋が点々とあったんです。その山小屋での暮らしがすごく良かったですね。

 

まり:長時間滞在することはほとんどなかったんですけど、一日だけお天気の関係で動けなくなって、山小屋で丸一日待機したことがあったんです。他のトレッカー達はもう歩いて行っちゃってて、私達とその宿の方だけで一日過ごしたんですけど…。朝起きると宿のおばちゃんが、「あ、今日は山が見えるよ!」って言って、みんなで見に行くんです。現地の人なんて毎日見る景色なのに、「うわぁ!今日もキレイ!!」なんて言って携帯で何枚も写真を撮ったりしていて。毎日見飽きることなくこんなに感動してしまうんだっていうことに正直驚きました。それからはすごくゆっくりとした生活で、朝ご飯食べて、お昼を食べて、お昼ご飯が終わるともうすることがなくなっちゃうんで、みんなでトランプをしたりして…

 

NEPAL BY LIFE IS JOURNEY|photo by Mari Kawauchi

photo by Mari Kawauchi

 

NEPAL BY LIFE IS JOURNEY|photo by Mari Kawauchi

photo by Mari Kawauchi

 

TIBET BY LIFE IS JOURNEY|photo by Mari Kawauchi

photo by Mari Kawauchi

 

──────小さい頃、田舎に帰るとそんな感じでした。

 

まり:そうなんです。庭になってる果物を取ってみんなで食べたりもしながら。夜はすごく寒くなるので、15時くらいにはもう夜の準備の為に薪をくべだして、火がつくまでまたお昼寝したり。

 

──────日本だと、休日でもパソコンを少し開いてみたりしないといけないこともあったりしますし、そういった時間の流れが羨ましくもなりますね。

 

康行:日本で二人共働いていた時と比べて、あの場所での時間の流れ方は全然違いましたね。と言うか、時間の使い方かな?ヨーロッパを周っていてもそれは感じました。フランスでも、17時くらいになると小学校にお父さんが子供のお迎えに行ったり、家族で必ず食卓を囲んだり。先進国でもそうでしたからね。

 

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──────最近では家族との時間もなかなか持てなくなってもいますしね。

 

まり:イタリアの方にお話を聞いていたら、日本人って仕事がいっぱい立て込んでくると「仕方無い、残業するか」ってなりますけど、向こうの人達は家族の時間はしっかり取りたいから、その時間に仕事がはみ出してくるとオーバーワークとして断っちゃうんですよ。

 

康行:日本でそれをするのはなかなか難しいし、でもどちらが良いのかも分からないんですよね。結局ヨーロッパでも、若者の失業率がイタリアで40%、スペインで60%で、すごく高かったりもしますし。かと言って、街中を歩いていても悲壮感のようなものは一切感じなかったんです。実際は分からないんですけど、みんな楽しそうでしたし。会う人会う人、失業率からすると、多分半分以上の人が失業しているハズなんですけどね。

 

──────気のせいかも知れませんが、その悲壮感、日本の都会ではよく感じることがあります。時間の使い方も関係しているのでしょうか?

 

康行:どうなんでしょうね。でも、例えばイタリア、スペイン、南米のチリなんかだと感情の表現もストレートなので、そんな内側のものを表に出してくれる分、僕達みたいな外国人が他に知り合いがいなかったとしても、街自体が活気づいてる感じなんです。こっちまで楽しくなってくるんですよね。

 

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──────初めて飛び込んだ異国で出会う人達は、もちろん知らない人ばかりだと思いますが、旅の途中では必ず現地の人との交流が生まれますよね。そんな関わりの中で何か発見した、その国特有の人々の個性のようなものはありましたか?

 

まり:モロッコってイスラム教国なんですが、日本人からすると女性が虐げられているようなイメージってありませんか?すごく暑い国なのに長袖を着て、ベールを被って、足首まで隠していないとダメなんですよね。私、それが本当に大変なんだろうなぁって、ずっと思いながら見ていたんです。そんな時に、幼稚園に通う小さな女の子のいる一人のイスラム人女性の友達ができたんですけど、その人とすごく仲良くなったんで聞いてみたんです「毎日ベール被らないといけないのって大変じゃないの?」って。でも彼女、「え?何言ってるのよ?コレがあるから楽なのに!」って言われたのには驚きました。「だって目元しか見えないのよ!」ってね。その時彼女、実は髪もボサボサでパジャマみたいな服をベールの中に着ていたんですけど、目の前でベールをすぽっと被って実演もしてくれて(笑)

 

──────私が朝、時間がない時にマスクでノーメイクを隠すのと同じですね。

 

まり:そう!それのもっと強力な感じです。向こうは向こうで「私もずっと聞きたかったんだけど、毎日髪の毛やメイク、服まで考えるのって大変じゃないの?」って聞き返されてね。

 

──────と言うことは、予想に反して現地の女性は、それが苦ではない方もいらっしゃったんですね。

 

まり:そうでなくても家事や子供の世話で忙しいのに、これでベールを取られたらやってられない!っていう感じでした。ちょうどこの女性に会う前に見た映画で、イスラムの女性が出ていたものがあったんです。秘密の場所に女性達が集まって、ベールを脱ぐとみんなハイブランドの最新コレクションを着ていたシーンがあったんですけどね。先進国からすると、そういうイメージがありますよね。

 

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──────そういう形で見てしまうと、本当はオシャレしたいのにできない、そんなイメージ付けにもなりますね。私自身も、今のお話を伺うまではそう思っていました。

 

まり:私もそうでした。映画の後に聞いた話だったので余計に衝撃でしたね。目元しか見えないとすごく美人に見えるんです。ベールの中は毛玉だらけのスエットを着ていて、二人で笑ってたんです(笑)

 

──────それにしても…“たまたま仲良くなった”方がたくさんおられますが、それさえも私からするとすごいな…と思うのですが。

 

康行:他の旅人と比べて僕達が多いか少ないかは分からないんですけど、出会いは色んなところに潜んでいて。僕達も今ではバックパッカーがよく使う安宿に泊まるんですけど、そこで仲良くなることもありますし、到着が遅い時は空港に泊まるんですけど、そこでも知り合いができたり、もちろん街の商店の人であったりも。

 

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──────つまらない質問なのですが、コトバはどのように?

 

康行:一応、つたない英語を駆使しています。

 

まり:向こうも英語を話せないことが多いので、お互いに単語を言い合って何とかコミュニケーションを取ってるんですけど…。でも全然意味の分からない時もありますしね。

 

──────でも、これだけ多くの国を旅されていたら、色々な外国語もマスターされているんだろうなと思っていました。

 

康行:それが全然喋れません(笑) 何とか聞き取ることはできるんですけどね。

 

──────それなのにここまでの交流を生めるなんて、素敵ですね。

 

康行:何と無く分かると言うか、何と無く信用できそうだとか…。たくさんの人とすれ違っていくから、自分の中で基準のようなものができてくるんです。目を見て“この人大丈夫そう”とか。多分ハズレることもあるんですけどね(笑)

 

──────それは少しずつ磨かれてきたカンのようなものなのかも知れませんね。でも危険な目にあわれたことはなかったのですか?

 

康行:一度トルコでバーベキューに誘われたことがあったんですけど、ちょっと怪しい雰囲気だったことはありました。「泊まっていけ、泊まっていけ」って言われるんですけど、目が全然笑ってなくて。結局行かなかったから分からないんですけどね!もしその時行ってたとして、実はその人が良い人だったら、また自分の知らない別の仕草で、その人の内面が分かる“カン”のレベルが上がってたかも知れませんね(笑)

 

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──────「訪れたところの暮らしのいいとこどりをする」というコンセプトを拝見しました。とても素敵だと思います。ですが、様々な国で色んな暮らしを見て、体験する中では、「いいとこ」ではない部分にも直面することがあるのでは?と思うのですが、いかがでしたか?

 

まり:病院が遠いっていうのは感じました。ネパールの山奥で、病気になってしまったおじいちゃんを村の人達が交代でおんぶしながら、町の病院に連れていっている現場に遭遇したことがあったんです。車も入れないような場所で、ロバを使うか人の手でしか運んでいけないような場所なんですけどね。

 

康行:日本だったらある程度田舎に住んでいても、そこまで苦労することはないですしね。

 

まり:エベレストに行った時も、もちろん近くに病院がないし、夜の間は危なくて車も通れなかったんです。現地の人に「もしここで君に何かあったとしても病院には行けないから、自分で何とかするしかないよ」って言われたんですけど・・・私自身がひどい高山病になってしまって、その時は本当に死を覚悟しましたね。

 

康行:あれは本当にヤバかったね。標高が5600mくらいだったんですけど、心臓が変な動きをしていて「ヘリ呼んで…ヘリ呼んで…」って繰り返し言ってましたね(笑)

 

まり:その3日前に、ちょうど中国軍も駐屯していたんですけど、その軍の女性が同じような症状で亡くなったっていうのも聞いていたし。たまたまタイミングが悪かっただけかも知れませんけど、あれくらいの標高に行くと、3日に1回は誰かが亡くなったって聞いていました。

 

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──────便利さという点では、日本と比べるとやはりそうなんですね。別の視点で「人」や「人間関係」としては日本と比べていかがでしたか?最近では、例えば代表的なSNSなどでも、多くの方と繋がりを持てるようになりましたが、リアルな社会に出ると実はその関係性が希薄なものであることも多いのではないかと思います。物質的に豊かであり、何不自由することもありませんが、ふとそう思うと貧しさをを感じてしまうことがあります。訪れた国々での、人と人の関係はいかがでしたか?

 

まり:向こうはどこの国もストレートなので、興味がなかったらそもそも付き合わないですね。でもそれで良いような気がします。

 

康行:始めはやっぱり戸惑ったし苦労もありましたけど、それが楽になってくるんです。

 

まり:以前イタリアで写真教室に通ったことがあったんです。その頃は私自身も旅に慣れてきたし、自分の意見もかなり言えるようになってきたと思っていたんですけど、それでも現地のイタリア人には「君は全然意見を言わないから何を考えているのか分からない。もっと言わなきゃ」ってずっと言われ続けました。みんなで食事していても、こっちは何を食べても美味しいから「美味しい!」って言ってるのに、「全部美味しいじゃ、本当に何が好きなのか分からない」って言われたり。これ以上まだ意見をいわないとダメなの?っていう感じでしたね。

 

──────グルメレポ的なコメントが欲しかったのですかね(笑)

 

まり:多分、私がそこまで慣れていない料理を食べているのに、全部美味しいって言うものだから、私が気を遣ってると思ったみたいなんです。

 

──────優しさだったのですね。

 

まり:そうですね。常に意見を求めてくるのには本当に驚きました。日本とは全く違いますからね。なので会議なんかがあると、常に意見が出過ぎて大変みたいです。いつも問題になるみたいなんですけど、みんなが発言し過ぎて収集がつかなくなるみたいで。逆にそんな時は「全員がもっと気を遣うべきだ!言いたいこと言えば良いってものでもないぞ!」なんて怒ってましたしね(笑)

 

LIFE IS JOURNEY|INTERVIEW vol.17

 

──────私自身、お二人程たくさんの国に訪れたことがある訳ではもちろんありませんが、海外に行った経験の中で、いつも何かしらの感動を覚えていました。それは見慣れたものではありませんが、普通の街並みであったり、写真でしか見たことのない風景だったのですが、それは現地の方にとってはごく当たり前の日常ですよね。そう考えると、旅はある意味普通の1コマの連続だとも思うのですが、数多くの1コマを見てこられたお二人にとって、今の段階で改めて日本はどのように目に映りますか?

 

康行:怒られるかも知れませんけど、空港を降りた時は雰囲気が重いような印象をかなり受けました。どこよりも暗いと言うか…

 

まり:“黒”とまではいかなくても、何と無く“グレー”な感じではありますね。

 

──────確かに。今日ここに来る途中、土曜日の人ごみの梅田でさえも、暗い顔をした人が多かった気がします。何故そうなってしまうと思いますか?

 

まり:それなんですが、私考えたんです。私達には普通に家があって、毎日ご飯を食べられて、結局日本ってすごく恵まれていて良い暮らしができますよね。でも仕事とかになると、嫌々であったり、仕方無く働いているような人が多いのも事実で、好きだからやってる人が少ないと思うんです。それはそれで他の国にはない良さの部分でもあると思うんですが、突き抜けた感がないような気もします。プラスの部分とマイナスの部分を、自分の中でバランスを取ろうとしてのことだとも思うんですが、バランスを取ることに一生懸命になり過ぎて、自分の本当の欲求とか、情熱的な部分をないがしろにしてしまっているような気がしてしまいます。

 

LIFE IS JOURNEY|INTERVIEW vol.17
LIFE IS JOURNEY|INTERVIEW vol.17

 

──────確かにそうなのかも知れませんね。では、その“グレー”である負の部分を、何でバランスを取ろうとしているんでしょうね?バランスを取るためにプラスと思うものを取り入れても、また月曜日には暗い顔になってしまっているのだとすると、そのプラスと思っていることさえも、本当はマイナスなのかな?と思うことがあります。

 

まり:旅って、小さいものから大きなものまで色々あると思うんですが、知らない場所に訪れることって新鮮で、素直に楽しいですよね。遠くを旅することに憧れをもっている人も多いと思うんですが、きっとそれって、本当は難しいことではないと思うんです。

 

康行:僕達以上に世界を旅している方はたくさんいらっしゃいますし、僕達自身が旅の上級者であるとも思っていませんしね。例えば僕達の場合は、ただ見てみたいから旅をしているように、そんな自分のもつ欲求や情熱的な部分をもう一度見つめ直してみると、もしかしたら何かが変わるかもしれませんね。

 

PATAGONIA -Torres del Paine- BY LIFE IS JOURNEY|photo by Mari Kawauchi

photo by Mari Kawauchi

 

PATAGONIA -Torres del Paine- BY LIFE IS JOURNEY|photo by Mari Kawauchi

photo by Mari Kawauchi

 

──────もし将来、日本以外の国で暮らすとしたら、どこの国が良かったですか?

 

康行:チリとアルゼンチンにまたがるパタゴニアっていう広いエリアがあるんです。その中の、地図で言うとちょうどチリの下の方にパイネ国立公園っていう所があるんですけど、そこの自然がもう桁違いと言うか…。ネパールのヒマラヤをトレッキングした時もすごく良かったので、この2つのどちらかですね。

 

まり:自然が溢れていて、その中で人がうまく暮らしているんですよね。

 

──────“自然”というものも外せないポイントなのですか?

 

康行:街中にいる時も楽しいんですけど、自分が一番リラックスできるのは、やっぱり自然の中にいる時でした。

 

LIFE IS JOURNEY|INTERVIEW vol.17

 

Mother Hand made BY LIFE IS JOURNEY|photo by Mari Kawauchi

 

──────HPで販売されている商品については、どのようなコンセプトで展開されているのですか?

 

康行:基本的には自分の手元に置きたいかどうかでセレクトしていて、自分の部屋を見てもらっているような感じです。作り手の人や、売り手の人の気持ちが見えるかどうかも重要なんですけどね。

 

まり:ネパールの商品で、Mother Hand Madeシリーズのアイテムについては、現地で知り合った女性がきっかけで始まったんです。

 

康行:ネパールでは、旦那さんが奥さんや子供を置いて、他の女の人の所へ行ってしまうことが多いらしくて、シングルマザーとして毎日大変な仕事をされている方が多いんです。その知り合った女性は、たまたま僕達が泊まったホテルのオーナーの奥さんだったんですが、彼女のお母さんも同じような目に合っていたこともあって、何かしらの支援をしたいと考えていたそうなんです。そういった境遇の女性を助ける為に、収入支援や職業訓練を実際にやっている彼女と出会ったことと、僕達自身もHPで商品の販売を考えていたことも重なって、一緒に始めることになったんです。

 

──────日本から支援されているのですね。

 

まり:私達がたくさんオーダーできれば、現地のお母さん達が少しでも潤いますから、Mother Hand Madeシリーズについては、できるだけお求めやすい価格にできればと思っています。他には一人で頑張っている作家さんの作品だったり、チベットから難民としてネパールへ逃れてきたおじいちゃんが作る、手作りの雑貨なども扱っています。

 

──────なるほど、まさに作り手が見える商品ラインナップなんですね。

 

康行:作り手じゃなかったとしても、売っている人が分かるもの。後は暮らしに取り入れると良いんじゃないかな?というところです。なので全ての商品を見ると共通している訳でもないんです。自分の家も、自然にそうなりますしね。

 

まり:自分達の理想の“家像”があるんです。その家に合うかどうかでも判断しています。

 

PATAGONIA -lodge- BY LIFE IS JOURNEY|photo by Mari Kawauchi

photo by Mari Kawauchi

 

──────それはどんな“像”なのですか?

 

まり:実は世界一周中に見つけたんです。パタゴニアで見つけた山小屋なんですけどね。

 

まり:朝は住んだ空気の森の中でホットティーかコーヒーを飲んで、夜は寝る前に暖炉の火を見ながら毛布に包まって、ホットミルクを飲んだりできちゃうような…そんな家(笑)

 

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──────妄想が広がってしまうような可愛いらしいお家ですね(笑) 理想の暮らしで考えると、どのようなものですか?

 

康行:僕もまりが言っていたような生活ができるといいなと思うんですけど、時間的にも心にも、それができる余裕があるかどうかですよね。もし今見てもらった家を大阪に建てたとしても、めまぐるしい毎日を送らないといけないのなら、全く別の話になってしまいますからね。

 

──────心にもゆとりを持つ為には、何が必要だと思いますか?

 

まり:今、原発の問題とか、食の安全面でも不安なことが多いですよね。そんなことも踏まえて今後の生活の目標として考えているのは、田舎と言うか、山が近くにある場所に引っ越して、自分が食べられるだけでも良いから自給自足できるといいな、と思っています。我がままを言わなかったら、食事さえ何とかなればお金だってそんなにかかりませんしね。ゆっくりと暮らしたいな、とは思います。

 

──────次はどこの国を旅してみたいですか?

 

康行:二人で話していたのは、前回行った時にオーロラが見れなかったので、北米のアラスカとかカナダですかね。そこからアメリカ大陸を南下して、中米を経由して南米に。南米もチリとアルゼンチンしか行けなかったので、ちょっと上の方を周ってみたいし。その後はアフリカ大陸も北上したいです。多分前回の規模で行くとしても、いつ行けるかわからないですけどね。

 

まり:お金ないからね(笑)

 

──────私は想像もつかないのですが、前回の世界一周ではどれくらいお金がかかったのですか?

 

康行:僕達はかなり使ってる方だと思います。多分一人170~180万くらいですかね。

 

──────私も一度お邪魔させていただいたのですが、現在grafで開催されているポップアップショップは、今後も展開されるのですか?

 

康行:今の所は継続してやらせていただく予定です。僕達も元々は旅メインだったので、ショップがスタートした時はあそこまで出来ると思っていなかったんですけどね。ただ、シーズンのせいで買い付けが少し偏ってしまったので、夏は夏でまた何か考えようと思っています。現地で撮り貯めた写真を使って何かとか、そんなこともできるといいですね。

 

LIFE IS JOURNEY|INTERVIEW vol.17

 

──────お話を伺っていると、旅に出れば出る程、お二人の中で変化が生まれるんだなと、同行していた訳でもないのに自分も旅したような楽しい気分になってきます。これからも旅を続けて行かれる訳ですが、もしかすると何か一つの特別な目的のようなものがあるのですか?

 

康行:僕の場合は、何か一つのものを追い求めているような感じではないです。

 

──────では、何故旅を続け、暮らしを追うのですか?

 

まり:何と言うか…ただ見てみたいっていう感じなんです。

 

康行:次の場所に行ってみたいとか、この国知らないなと思ったらまた行きたくなる。きっと単純な欲求なんです。動き回っている時は体も結構疲れるんですが、やっぱり楽しいんですよね。

 

LIFE IS JOURNEY|INTERVIEW vol.17

 

──────一言で言うと、お二人にとって旅の魅力は何ですか?欲求を満たしてくれる何かがあると思うのですが。

 

康行:変化と出会いかな?人との出会いはやっぱり楽しいし、別に移動距離と比例するかどうかは分かりませんけど、旅をする前と後の自分を比べると、こんなこと思ってもみなかったなぁっていうことがよくあるんです。自分の考え方、自分自身が変わっていってるってふと気付くと、余計に楽しいですね。

 

まり:人との出会いは本当に楽しいです。後は…説明しにくいんですけど、例えば自然の中でただボーッとしている時に、何とも言えない一体感があるんです。空気感と言うのか、それが何なのかは分からないんですけど。

 

康行:たまらない瞬間ですね。スーッと体の中に染み込んでくるような、ダイレクトに体の中に入ってくるような感じなんですけど。きっとそこが、僕達が一番落ち着く所なんでしょうね。

 

LIFE IS JOURNEY|INTERVIEW vol.17

 

 

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川内 康行 ・ まり | LIFE IS JOURNEY

 

<INFORMATION>

LIFE IS JOURNEY WEB SITE | http://life-is-journey.tumblr.com/

ONLINE STORE | http://www.lifeisjourney.org/

 

<取り扱い店>

graf studio | http://www.graf-d3.com/
open / 11:00 - 19:00
定休日 / 月曜日(祝日の場合は翌日休)

編集後記

私も旅が大好きだ。

誰かにとっては日常である出来事や、毎日見る風景の1コマ、ふらっと入った定食屋に満ちる店の香りや、自分のマンションのそれとは違う宿の廊下に流れる独特の空気にさえ、ワクワクを感じずにはいられない。

もっと細かく言うと、例えば普段は意外と足を伸ばしてみることのない、最寄りから2つ、3つ隣の駅を降りた町。
気になる細い路地を見つけては探検気分で奥へ進み、人様の家の佇まいや、古いタバコ屋の看板、賞味期限が少し不安になってしまうような趣のある駄菓子屋を見つけても、旅するようにワクワクする。
もと来た道に戻るには、少々時間がかかってしまうこともよくあるけれど。

自分が歩いたその道は、文字通り“道”だが、道のないところに自ら道を作りながら歩いているような気分にさせてくれる、そんな道。

たかが隣の町で何か大変なことが起きてしまうようなことはきっとないのに、その先には期待と不安が混ざる小さな未知の未来がある。
幼い頃は“探検”と呼んでいたこんな気持ちを、ずいぶんと大人になった今、持ち続けられているのかとふと考えた。

自分にとっての非日常を探る、あの新鮮でいて不思議な気持ちをいつも自分の奥に持ち続けることができれば、日常に潜む「旅」だって見つけられるかも知れない。

そう言えば、予定と言える程の予定があった訳でもないのに、それほど予期できなかった出来事でもないのに、あの頃は小さな事件も全力で楽しめた。

もう大人なんだから…と、心の中にいつしか押し込んで出せなくなくなってしまった、とても単純で純粋な心のまま、自分の求める本当の豊かさを探すシンプルな生き方。

色んな国で少しずつ繋がっていくその輪は、それまでの日常そのものを変えてくれる。
まだ見ぬ何かを見つけては、見残しておきたくもなるかもしれない。

まさにLIFE IS JOURNEY

可愛かった昔々のあの頃のように、旅するように暮らしたくなった。

by makiko ueno

Camera / toshinoriCawai

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