INTERVIEW

WATARU HATANO|INTERVIEW vol.15

UPDATE : 2014/Jan/11 | AUTHOR : makiko ueno

根っこにあるのは「少ないけど、豊かな暮らし」
京都のやや北部、山に囲まれた小さな谷に、800年以上もの歴史ある和紙を作り続ける人達がいる。
伝統工芸を守り続けるその土地に、油絵の世界から紙漉きの世界に飛び込んだ一人の男性。
彼が表現活動を続ける理由、そして表現したいものとは何か。
今回は京もの認定工芸士であり、「創る和紙職人」でもあるハタノワタル氏にお話を伺った。

──────黒谷和紙との出会いは、大学時代に学ばれていた油絵がきっかけだったのですか?

 

ハタノ氏:友人の作品だったんですけど、卒業制作で和紙を使うことになったんです。それで、染色しても強い和紙を探しに行くことになって、東京の和紙屋さんに一緒に行ったんです。その時に「強い和紙をください」って言って出してくれたのが黒谷和紙でね。それがきっかけで僕も使うようになったんです。ちょっと旅行する時なんかでも、和紙ってクルクルっと巻いておけるでしょ?画用紙みたいにバキバキ折れたりもしないし、楽だったりもしますしね。

 

──────絵での創作活動を続けていかれるのを想像してしまいそうですが、出会った和紙を作る道を選ばれたところが興味深かったのですが。

 

ハタノ氏:絵も勿論制作し続けるけど、生活の収入源が必要でしょ?以前は農業をしながら絵を描いていたんですけど、それがたまたま和紙に変わったんです。

それにテーマもあってね。作品を作ることでも、発表したりすることもそうなんだけど、「暮らし」っていうものをどのようにすれば人間が豊かになるのか、そういうことを昔からずっと考えていたんです。

ちょうど東京の大学卒業の頃だったんですけど、阪神淡路大震災があって、その後に地下鉄サリン事件があったんです。その時にね、危険と分かりながら毎日電車に乗ったり、そういう街の暮らしに潜む危険みたいなものをマジマジと分かりながらそこに居続けること自体が、何か違うんじゃないかな?と思うようになって。

卒業後は勤めてもいたんですけど、2ヶ月位で辞めて北海道に行ったんです。そこでは農業をやってたんだけど、周りには色んな人がいて、それぞれに人間模様があって、「あ、“暮らし”ってオモシロイなぁ」なんて思うようになってね。そんな暮らしを成り立たせる為に、もの凄くシンプルなことをやりたくなったんです。紙もそうですけど、もの作りって1個いくらの世界でしょ?そういう嘘のつけない世界に元々の人間の営みのようなものがあるんじゃないかなぁって。だから年功序列で給料が上がっていくっていうよりも、こっちの世界を知りたくなって紙漉きを始めたんです。始めはそんなに長く続けるつもりはなかったんですけど、気付けば18年目に突入して、もう辞められないですね(笑) 何とか暮らしを立てて行くことが、途中から自分自身への挑戦みたいになってきました。

 

WATARU HATANO|INTERVIEW vol.15

 

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──────絵を描くことと和紙をつくること。表現するという点で共通するところはありますか?

 

ハタノ氏:表現って“根っこ”じゃないですか。表現のベースがあって、それをどう表現していくかによって人に与えるものも変わっていく訳で。その根っこ自体があやふやだと、表現自体もあやふやになってくるんじゃないかな。でも、あやふやでもやっていける人もいますよね。もう訳の分からないところまで行ってしまって、あやふや過ぎてアーティストであるような。そんな方と比べると僕なんか普通だし、私生活まではハチャメチャになりきれなくて、全うに行くしか仕方がない。じゃあそうなった時に、街で暮らしグラフィックデザインをやりながら絵を描いたりすると言うよりは、もう少し深い所へ行った方がいいのかな?っていう思いが心のどこかにあって。それでこの世界に入ったような感じです。基本的には表現をしたいってことが根っこにあります。紙漉きをし続けることも表現だと思っています。ここで暮らしていくことで、日本の歪みみたいなものも見えてくるし、昔の暮らしも垣間みることができる。ちょうど微妙な間にいて、そのせめぎ合いの中でどうやって暮らしを立てていくのかに必死であって、ギリギリと言うか。でもそこまでやらないと、多分アーティストにはなれないと思うんです。僕って普通だなぁ…って(笑) キレイに表現する人って沢山いて、それも良いと思うんだけど、それをもう一歩踏み込んだところで何かをやりたいんです。

 

──────頭では分かっていても、実際はなかなか形にするのが難しそうな感覚ですね。

 

ハタノ氏:なので紙漉きとは別に、“暮らし”をテーマにしたものや、町おこし的なイベントなんかもやらせてもらってたりしてるんですけどね。

 

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──────そちらの活動にも興味がありました。日本人であれば“和紙”というものを知ってるとは思いますが、今ではなかなか身近な存在ではなくなりつつあり、深く知る機会もあまりなかったりしますし。例えば私達が日常的に使う“紙”とハタノさんが作り出されるような“和紙”、この2つの違いを一言で言うとすればどういったところでしょうか?

 

ハタノ氏:今みんなが使ってる紙って用途、目的があるんです。じゃあ和紙はどうかと言うと“素材”であって、用途が決まってない状態なんです。例えば木の板を使って何を作ろうかな?テーブルにしようかな?そんなふうに、和紙はテーブルになる前の木の板のような状態です。家は木と紙と土だけでできるって言われているように、もの凄く少ない素材だけで暮らしてきたんですよね。少ない材料でも使い方を知れば色んな用途に広がっていくっのってオモシロイなぁってね。梅干し1個でも薬になりますもんね。

 

──────修業時代は苦労も多かったのではありませんか?

 

ハタノ氏:修行って言ってもね、仕事自体は難しいものじゃないんでね。スピードアップさせるとか、いかにミスを無くすかとかはありますけど。だから先輩に教えてもらいながらやってるんです。

 

──────怖い親方がいて…なんて想像していました。

 

ハタノ氏:親方なんていないいない。全然大丈夫ですよ(笑)

 

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──────和紙を作り出した頃と今とでは、和紙に対する見方や感じ方に変化はありましたか?

 

ハタノ氏:最初は絵の支持体として和紙を使ってたんだけど、僕の家の床みたいに内装に使い出したり。実際に使う度に広めなくっちゃと思うようになりました。例えば陶芸家だったらひたすらろくろを挽くような感じで、始めの10年位はずっと職人でやってたんですけど、それだと生活や収入の限界が見えてきたりもしてね。1枚いくらって決まってるんで、いくらこれ以上頑張っても稼げない。これではダメだと思って考えたのが、まず利用される方のことでした。利用者が使いやすいことって何か、それを提案しようと思って内装や木版を始めたりして。ちょうど10年目辺りで転機があったんです。その時は自分がこれ程和紙を使うとは思ってもみなかったけど、多分今、個人としては僕が日本中で一番黒谷和紙を使ってると思います。生産者であり、実際に一番使っている人。

 

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──────個展でも作品を拝見させていただきましたが、紙と言っても鉄や金属、土のような質感や布のようなものまで様々でした。一見和紙とは思えないようなものまで沢山あり、同時に色んなものに形を変えられ、とても実用的なんだなと新鮮な印象も受けました。

 

ハタノ氏:昔は素材としてそうやって色んなものに使ってましたからね。僕の感覚としてはあと一歩なんです。一般の方が使う前にあと一歩、和紙を使ってもの作りをする人が増えてくれれば。

 

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──────最近では都会に住む人が田舎暮らしに憧れを持ち、何かのタイミングで移住を考えている人も少なくないと思います。ハタノさんご自身はお住まいをこちらに移されたことで、思い描いていた生活とのギャップなどはありませんでしたか?

 

ハタノ氏:基本的に僕の場合は紙漉きをしにここに来ていて、田舎暮らしをしたくて来ている訳ではないですもんね。ここに来る前は北海道のもっと田舎にいたし、実家の淡路島も田舎なので、田舎に対してどうとか、そういうのがあまりないんです。だから綾部っていう土地をそういう視点で見るとすれば、淡路島よりも、北海道よりもオモシロイなとは思ったんです。

 

──────それは具体的にどういったところだったのでしょうか?

 

ハタノ氏:住みやすいっていうのと、やっぱり人が優しい。その辺が凄く大きいです。

 

──────例えば都会の社会と、こちらのような自然が豊かな田舎の社会では、どういった所に一番違いを感じますか?

 

ハタノ氏:色々なものが出来てくる、生まれてくる様子が見えやすい。例えばお米にしたって、作ろうが作るまいが芽が出ると見えるでしょ?山に沢山木があって、材木屋さんに行けばその木を切るおっちゃんがいたり。

逆に言えば無くなっていく様子も見えやすくなってるんです。日本には四季がありますよね。秋になれば葉が落ちて冬が来る、春になれば木が芽吹き出す。そんな生まれてから無くなっていくサイクルが見えることは豊かだと思いますよ。住んでると分からなかったりもするんだけど、それがないとやっぱり、ものを大切にしようとはならないと思うんです。

 

──────確かに都会ではその様子は見えにくいですね。だから時々無性に木や山に囲まれたくなります。この綾部にも初めて来たのですが、こんな場所に来るともう…

 

ハタノ氏:安心するでしょ?(笑) その辺が一番大きな違いかな?とは思います。

 

──────以前、堺市で開催されたクラフトフェア「灯しびとの集い」に参加されていましたね。前回、実はこっそりハタノさんのブースにもお邪魔させていただき、お話もお伺いしたのですが、その時におっしゃっていた「暮らし」というワードがずっと頭の中に残っていました。今回、作品作りの現場や、改めてお話を伺っていると、ハタノさんが作り出すものがまさに“暮らし”そのものなんだなぁと強く感じるようになってきました。

 

ハタノ氏:そこは意識的にやってると言うか、やらなきゃいけない気がするんですよね。

 

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──────他のクリエイターの方々とのコラボでの発表もされていますね。これもまた繋がりが広がりそうでとてもワクワクしますね。

 

ハタノ氏:そうなんですよ。個展の時だと、単に作品を持っていって並べるだけにしてしまいがちなんですけどね。例えば二人展なんかでも、お互い話し合ってテーマを決めて、そこで生まれる物語があるんです。なかなか気付いてもらえないとは思いますけど、そういうのって凄く良いと思うんですよね。

 

──────その過程での新しい発見があったり、創作の中で新しい気付きもあるんでしょうね。

 

ハタノ氏:これからは他のアーティストの方とコラボして作品展をやったり、そういった分野にも力を入れていきたいと思ってるんです。クラフトってどうしてもみんなモノに目がいってしまうでしょ?でも正直なところ、350円の紙を沢山作って沢山売るって、結構大変なんですよ。

 

 

──────先程実際に紙漉きの工程を見させていただきましたが、あれ程の手間をかけているのにも関わらず、とてもお手頃な価格なんだなぁと思ったのですが…

 

ハタノ氏:でもあれ以上の値段だと絶対売れませんよ、喉が枯れるまで説明しないと(笑) クラフトフェアに出てた時はめちゃくちゃ喋ってたんですけど、最近ではできなくなりました。朝から売り出してお昼過ぎる頃には喋り疲れて、早くも何を言ってるんだか分からなくなってきますし(笑)

 

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──────紙漉き、内装、デザイン、もの作りなど、これらに向き合う時に一番心掛けていることは何ですか?

 

ハタノ氏:僕自身、「素材感」っていうものが好きなので和紙を漉いてると思うんです。こんな何でもない1枚の紙に何を見るか、みたいなね。マチエールなんかも好きですし。

 

──────なるほど。マチエール、油絵もまさにそうですね。

 

ハタノ氏:そうなんです。その素材感を追いかけてもの作りをしていたんですけど、一度そのコンセプトを変えたことがあったんです。きっかけは、京丹後にある原発反対グループの人達とアートフェスティバルをやったことだったんですけど、もうガツンとやられて。「アートは表現だ」「表現することで原発を止めよう」そんな活動だったんですけどね。その時に、素材感やマチエールなんかよりももっと表現しなくちゃいけないなと思って、色々な表現活動を平行してやるようになったんです。

でも最近になって、やっぱり好きな素材感に戻りつつあって…。何故かと言うと、例えばこのテーブルの上に3つの点があるとすると、その点の間隔の違いで人の気持ちが変わってくるように、あるモノとモノとの間隔で精神的なテンションが変わったりするでしょ?抽象的かも知れないけど、そんな間隔を自分の理想とする暮らしの中に取り入れていけるような作品作りができればな、と思ってます。なので内装の時、壁1つにしてもどういう表情にしようか、どう陰を生かすか、そんなことを考えてやってます。ただ内装はほとんどデザイナーさんがデザインされるのであまり僕はできないんですけど、今日見てもらったあの小ちゃなギャラリーの空間は、自分で考えながら作っていて、ああいう仕事をどんどんやっていきたいですね。中に入った時に、何かこう思考停止になるような空間作りを。

 

──────これからはそちらのスペースで展示なともされていくのですか?

 

ハタノ氏:クラフトフェアなんかに出店すると、アトリエに行ってみたいって言われる方が多いですしね。それにフェアは結局、和紙の入門編的な位置でやってるんですが、それとは別で最終的な形を見せたいんです。展覧会と、表現したいその最終的な部分は違うと言うか。昔、ある本を読んだ中にこんな言葉があったんです。「1枚の紙の中に雲を見る」これはあるベトナムの僧侶の言葉なんですけど、その世界が分かるような気がするんです。“愛でる”とは違うんだけど、素材と向き合うと言うか、ものと向き合うと言うか、そこがまさに入り口なのかなって。だから僕は和紙の中からそれを見つけて、見つけ出したもので暮らしそのものまで覆えるような、緊張感のあるようなもの作りをしたいと思うんです。

 

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──────HPを拝見させていただいた中に印象的なフレーズがありました。「一枚の素朴な紙には素朴な強さがあり、素朴な強さの前では嘘をつくことができない」この強さとは、実際に和紙をつくるハタノさんにとってどのような感覚なのでしょうか?

 

ハタノ氏:何でもない1枚の紙なのに、絵を描くだけでも素材感がガツンとくるんです。それって素材の強さでしょ?例えば今の現代書じゃなくて、昔の楮紙に書いてる書の作品ってもの凄く強いんです。紙を超してしまう、そのせめぎ合いが凄く見えるんです。

 

──────書の力だけではなく紙が持つ力。意外にそういう視点で見れていなかったかもしれません。

 

ハタノ氏:紙に勝たないと字が完全に埋もれてしまうんです。僕だと和紙に絵を描いたら負けてしまうから、ベタベタに下地を作って、紙ではなく支持体にしてから絵を描くんですけどね。

 

──────そこが嘘をつけない、というところなんですね。

 

ハタノ氏:そうそう。それが素朴な強さなんです。だから書にしても、和紙に勝ってるものを見ると、やっぱり凄いなぁって思います。それは紙を超える強さがあったり、ちゃんと素材として向き合って文字を置く強さもあるから。よく考えたら昔のものってそんなものだらけだったし、それでものが出来上がれば、日本の昔からある立派な神社仏閣だって建ちますよね。

 

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──────ハタノさんの作品を手にする方に感じて欲しいことはありますか?

 

ハタノ氏:色々あるんですけど、和紙の魅力を感じて欲しいだけじゃないんです。少ないもので豊かなことを、そんな昔の暮らしを感じて欲しい。土でも木でもそうだけど、これだけ沢山のことができてしまうから。「少ないけど、豊かな暮らし」これが根っこにあるんでね。

 

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ハタノワタル | hatanowataru.org

黒谷和紙漉き師/京もの認定工芸士

表現(アート・クラフト・空間・グラフィック)を仕事としている。

和紙を漉きながら感じる昔の日本の生活に興味があり、多岐に渡り表現している。

 

編集後記

初めて手に取ってみたものは、小さな小物入れのような箱だった。
撫でると土や木を触っているような、どこか懐かしく穏やかな風合い。
それが和紙でできていると知った時の驚きは、今でも新鮮なままだ。

冷たく澄んだ川の水の音、山々の木の葉の音、自分の足音さえも
耳に、体に染み渡る心地よい空気で静かに満たされた山里で、昔ながらの暮らしに身を置く人々が居た。

どこからか持ち込まれたものではない、ありのままの自然の中で生み出された1つの和紙。
自生する楮と、静かに、でも力強く流れる黒谷川の清流、山間の厳しい寒ささえも味方し、
その地に住む人の手によって1枚1枚丁寧に作り上げられ、数百年もの間守り抜かれてきたもの。

それは少ない素材から様々な用途に広がる、“素材”として生み出されてきた。
時には厳しい自然環境のもと、生命・ものが生まれ、そして消えていく様子を
体中で感じ取ることができる豊かさの中、嘘のつけないもの作りに向き合うハタノ氏。

たった1枚の紙なのに、ずっと触れていたくなったあの強さと温かさは、
そんな彼の理想とする暮らしそのものだったのだろうと思う。

どうすれば「暮らし」が豊かになるのかを自然体で追い求め、表現し、繋ぐ。
その先にあった1つの答えは、今はもう過去になってしまった昔々のシンプルな暮らし方。

何をもって豊かとするのか、
それはその人の中にあり、決まった答えなどないのだと思うが、
「ものの豊かさを経験した、次は心の豊かさだ」
なんて気持ちでは少々格好がつかない気がする。

作り手、手にする者、この微妙な間を繋げる気持ちの良いデザイン。
もの、素材と向き合う、厳しいせめぎ合いの中にあっても、居心地の良さを感じずにはいられなかった。

山間の村に静かに響き渡る簀桁をくぐらせる音、簀桁の上で水が踊る音、
そんな暮らしの音が、これからも、いつまでも冬の黒谷に響き渡っていて欲しい。

by makiko ueno

Camera / toshinori cawai

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