INTERVIEW

SEIGOU SATOU|INTERVIEW vol.18

UPDATE : 2014/Apr/25 | AUTHOR : makiko ueno

「未だ見ぬアンハッピーは、今どこにあるのかな?ってね」
暮らし、ファッションに関連する様々なショップが立ち並ぶ大阪は堀江の外れにある小さなアトリエショップ。
オリジナルのウェアと、ヨーロッパ各国より集めた暮らしの雑貨。
それはどこか違う国のおとぎ話の一場面のようでもあり、かと思えばとても親近感の湧くデイリーユースな香りも漂う。
暮らしの中の「衣」をデザインし、作る過程で、彼が見つめる先にあるものは何か。
2005年創立、ストリートアイテムを発信する大阪発のブランド「miraco」デザイナーの佐藤誠剛氏にお話を伺った。

 

──────「miraco(ミラコ)」というブランドネームは「miracle(ミラクル)」が由来なのですね。

 

佐藤氏:ミラクルのネイティブな発音と言うか、響きを当てはめ直した感じです。例えば○○語でこういう意味がある、そんなよくあるようなものに自分自身が馴染みがなさ過ぎて。ただその時は「和」とか「日本人」であることを変に意識し過ぎているところがあったから余計にそう思ったんですけどね。でも色んな人に見てもらいたいと思ったら、アルファベット表記できる方がいいし。なので勝手に和製英語のようなものを作ったんです。

 

──────「miraco」という言葉はないのですね?

 

佐藤氏:多分ないんです。間違った感じの解釈にワザとしたくって。でも和製英語って、間違ってるって言われますけど、1つの日本語であったりしますしね。

 

SEIGOU SATOU|INTERVIEW vol.18

 

SEIGOU SATOU|INTERVIEW vol.18

 

──────ブランドを立ち上げられる前は古着屋さんでも勤めていらっしゃったと伺っていますが、そこが初めてのファッションの世界だったのですか?

 

佐藤氏:そうなんです。と言うより、ファッションとしてはそこでしか働いたことがなかったんです。それもよくある感じで、その小さいお店によく遊びに行っていて、移転のタイミングで手伝わせてもらうことになって。21歳から4年間位ですかね。なのでファッションを学びに行ったことも全くないんです。

 

──────その古着屋さんで学ばれたことも、今に影響していたりするのですか?

 

佐藤氏:興味はあったんですけど、もともとそこまでお洋服が好きでとか、vintageが好きっていう訳でもなかったんです。ただそこで働くことが面白くて、売り子さんとして働かせてもらっていたんですけどね。そこで触れたものは、たくさん影響していると思います。

 

──────ではその時は、今のような形でブランド展開をしたり、お店を持つことを考えていた訳ではなかったのですか?

 

佐藤氏:全くなかったです。香川県の出身で、高校を卒業してから専門学校に行く為に大阪に出て来たんですけど、それも当時は、四国の田舎で特に何もすることが見付からなくて、とりあえず一番近い都会に出たいっていうことが、学校を選ぶ動機だったんです。グラフィックデザインの勉強をしてはいたんですけど、卒業後も特別やりたいことが見付からなく、アルバイトをしていたりもしました。そんな中で古着屋さんで働くことになったんです。そこは本当に楽しかったんですよね。でも、生活をする為に働いていた訳でもあって。お金もないし、時々先のことを考えるのが嫌になる瞬間もありました。そんな時に、そのお店でTシャツを作ったり、デザインをやらせてもらったりするようにもなったんですけど、そんなことがきっかけにあったりもして。

 

──────なるほど。専門的にお洋服のことを何も学ばず・・・と聞くと、ただただ凄いなぁと思うのですが。

 

佐藤氏:それに服キチで、お洋服が好きでたまらない訳でもないから、本当に好きでやってらっしゃる方と目を合わせて話せなかったんですよ。今もどうにかこうにかやっていて、未だに知らないことの方が多いし。でもね、今になって1つ良かったと思うのは、「知らない」ことって強いと思うんです。展示会って何?取引するってどういうこと?卸すって?そんな所からスタートしたので、ましてそれで生活できるなんて思ってもなかったし。でもどうなんでしょうね?職種として頭でっかちにするところじゃないかな?って思うんです。方程式もなければ答えもないし。そのせいで困ったこともたくさんありましたけど、今はそれで良かったと思うんですよね。

 

SEIGOU SATOU|INTERVIEW vol.18

 

──────今日の取材に伺う前に、miracoのブログを拝見させていただいたのですが、個人的に気になるキーワードがいくつもありました。その中の1つが「伝統と現代 プロダクトと個人制作」、これが素敵な商品における大切なキーワードであると書かれていましたね。新しいものやデザインを生み出す時に、昔から伝わる日本の伝統などを意識して形に起すことはありますか?

 

佐藤氏:自分がこれまで生きてきた長さの分、その中で何らかは反映されていると思います。ファッションにしても、その分野の背景や意味深い歴史なんかに沿ったものじゃないと深みも出ないし、伝えたいことも伝わらないのかな?とも思いますし。ただ僕はカジュアルに色んな所を触り過ぎて、あっちこっち見たくなってしまって浅いというか、そこが全然足りていないと思うんです。なので、例えばレコードコレクターみたいに1つの分野を突き詰める、いわゆるオタクって呼ばれる人達が大好きなんですよね。特に明るいオタクが。そこを掘り下げられるパワーって、すごく男の子だと思いますしね。でもそれをものづくりの面で考えると、僕自身は0を1にするようなものを生み出したいんです。でも実際は1を10にするのが得意な日本人タイプだとも思うし、結局は何をやっていても全部編集なんですよね。それをどれだけ新しい雰囲気のものに掛け合わせていくのか、掛け合わせたものがどれだけ新しく見えるか。その掛け合わせるものが、自分がこれまで見てきたものであり、ソースとなるものが伝統的なものであったり。その辺は難しい所ですね。

 

──────佐藤さんにとって「洋服とは?」と聞かれると、どんなイメージが頭に浮かびますか?

 

佐藤氏:まず、その人の主張的なものであって欲しいと思うんですけど…。この前の「day*」の質問で、『着る、または飾る時に一番意識することは?』っていう質問がありましたね。あれが面白かったんですけど、でもまさにシンプルにあの時の僕の回答で、『着る、飾る』っていう部分が大きく影響すると思うんです。お洋服に着られてしまうと、多分その人に似合っていないと思いますし。その人が服を着ないといけないし、その人そのものであって欲しいと思うから。
(* day|MARCH.2014「たとえばファッションに携わる人の場合」:http://www.used-living.com/day/march/

 

──────私自身、昔お洋服をお仕事にしていた頃は、街中で歩く人達を見て「着られている」と思うことが正直あったりもしました。ただ今のお話を伺っていると、では「着られていない」状態とは?とふと頭に過りました。似合う、似合わないも勿論なのですが、もしかすると他に何かあるのかな?と・・・

 

佐藤氏:そうですね。でもややこしいのは、僕は仕事として長く付き合って行きたいものに、知らないうちになってしまいましたからね。もし僕が違う仕事をしていたら、関わり方も違っていたと思うんです。お洋服はその人自身であったりするから、あまり意識せず、着たいものを着る感じが美しいとは思うんですけど。でも着ることを楽しむ枠組みになってくると、イメージとして「ファッション」っていう言葉の方が前へ出てきてしまって、そうなってくるとまた話も変わってきますからね。僕はお箸1本からでも生活の中のファッションだと思っていて、お店もこんな形でやっているんですけど。そう考えるとお洋服もファッションも、生活を豊かにするものだと思うんです。それはデザインっていう言葉の意味でもね。生きていく中で絶対に身に着けるものだから、結果的にその人の人生を豊かにするものであって欲しいと思うし。

 

──────こうして考えると、色々な角度がありますね。

 

佐藤氏:僕の場合は仕事であって、お洋服を学んできていない分、ルールのない工作の楽しみでもあったりするんです。もし僕が大きな組織の中で「デザイナーです。数字を取ることが最優先です。」こんなふうだったら、また答えも違ってきそうですしね。

 

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──────衣食住の衣にあたるお洋服は、生活をする上で欠かせないものですが、1つの大きなコミュニケーションツールとしての役割も大きいのでは?と思います。実際にmiracoとしてものづくりを続けることで生まれた出会いや、発見したことなども数えきれない程あると思うのですが、手にする人や着る人に何か感じて欲しいことはありますか?

 

佐藤氏:難しい質問なんですけど、ないと言えばないんです。手に取る人のものであっていいと思うし、その人の色で着飾るものですしね。ただその人がmiracoに着られてしまったら、僕が思い描く「着る」ではなくなってしまうので、その人がちゃんとmiracoを選んで着て欲しいです。なのでデザイナーの想いだとか、こんなメッセージがあって…なんていうのは僕からするとちょっぴり暑苦しいですね。例えば美術なんかでも考える余地のあるものが好きなんです。それはお洋服でも言えるのかな?とも思うので、その人自身に作って欲しい。ただ、生活を豊かにするような雰囲気であったり、空気感を纏ったようなものを作りたいし、そこをきっかけに手に取って欲しいから、そのきっかけを工作や企画の部分でもり込められればと思っています。さっきのお話のコミュニケーションツールっていうのも、僕の中でのキーワードになっているんですけどね。自分のいない所で、知らない2人が着ているお洋服で繋がることってありますよね。「それどこの服?」なんて会話もそうだし、その2人を繋ぐ真ん中に挟まったものが、自分の作ったお洋服であったりするともの凄く嬉しいし、そうであって欲しいです。

 

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──────昨年、私達used livingもお手伝いさせていただいたイベント「寄リ道 夜マデ市」ではDJとしてご参加くださいましたね。佐藤さんのDJを聞かせていただいたのはあの時が初めてだったのですが、個人的には音楽活動にも興味がありました。そんな時HPを拝見していると、「ミックステープ」について綴られていたものを見つけたのですが、内容がとても印象に残っています。キーワードは「温度」だったのですが…

 

佐藤氏:確か…形がどうであれ、そこにある「温度」が大切。そんなお話でしたよね。

 

──────そうです。佐藤さんのおっしゃるその「温度」とは、どういう感覚なのですか?

 

佐藤氏:プロセスが見えるかどうかっていうのは1つあるんじゃないですかね。データだからダメ、簡単なメールだけだからダメだとか、そういうところではないような気がするんです。アナログだから良いって勘違いされやすいとも思うんですけど、あったかいデジタルもあるだろうし。プロセスであるとか、そこに乗っかる気持ちが大切なのかな?って思うんです。

 

──────確かに勘違いされがちなような気がします。古いものやアナログの良さは勿論たくさんあると思いますが、この点は色々な人のお話や、歴史などをちょっと覗いて見ると、簡単に答えを出せないことも多いと思います。

 

佐藤氏:お洋服でも多分あると思うんです。大事に作られているものと、そうでないものが。音楽にしても、テープに落にされているから良いのかと言われるとそうではなくて、アウトプットの仕方だけの話ですよね。データになっていても、すごく手の込んだ素敵なものもたくさんあると思います。選ぶ側の選択肢も増えた訳ですけど、何が本当に良いのか、そこを見極めるポイントですよね。一概にアナログや手作業が良いっていう話ではないような気がするんですよね。

 

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──────私も佐藤さんとほとんど年齢が変わりませんが、小さい頃はテレビのチャンネルはガチャガチャ回すタイプで、父のお気に入りは冷蔵庫くらい大きなステレオと2台のスピーカーでした。あの頃は30年後の今、こんなに薄い携帯電話を持つことなんて考えもしませんでした。

 

佐藤氏:バブルは味わえなかったけど、僕もすごく濃い世代だと思っていて。動作的なアナログを知った上で、どんどん移り変わりましたよね。物心がついた時はポケベルがあって、次は携帯電話の出現。色んなことが判断できる年齢で、それらが目の前にあって。レコードの良さも分かる、テープの良さも分かる、CDも分かるしデータっていうものも分かる。それらの経てきた過程を見ることができたのは、1つ大きな意味がありそうですね。今生まれた人達は物心ついた時からテレビは薄いだろうし。でもそんなデータ世代の子供達はそこからのスタートだから、その環境に適したものを生み出す能力は僕達よりも高いんでしょうね。変に古いものやアナログみたいなものにこだわり過ぎると、ただただ感覚の古い人になってしまいそうですしね。言葉が時代によって変わってくるように、ツールも変わっていきますからね。

 

──────私達の親もきっと思っていたとは思うんですが、今の時代に生まれた子供達はどんな大人になるのかな…なんて思うこともあったり…

 

佐藤氏:思っていたでしょうね。そんなことを考えるようになったっていうことは、僕達もおっさん、おばはんになったっていうことかも知れませんね(笑)

 

SEIGOU SATOU|INTERVIEW vol.18

 

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──────まだ認めたくはありませんが、きっとそうなんだと思います(笑)
話は少し変わりますが、これまで時々おっしゃっていた「豊かさ」についてですが、佐藤さんはどんな時にそれを感じますか?

 

佐藤氏:それは僕の苦手な深いお話ですね(笑) でも豊かさは・・・もう自分の中にあるんじゃないですか?

 

──────カッコいい一言ですね。

 

佐藤氏:いや、そんなこと言われると本当に話しにくくなりますよ(笑) でも、ものがいくら増えても世の中は変わらないでしょ?何かのコレクターさんがいたとして、その人のコレクションはすごいと思うけど、でも丸裸になった時にどうなのか。その人の真価が問われるのは、本当に何もなくなって丸裸になった時、そう考えるとものは?っていうことであって。これは映画評論家の方の言葉なんですけどね(笑) でも本当にその通りだと思います。結局一番大きいのは心の豊かさとして自分の中にあるんじゃないですかね。世の中を変えられるなんて、本当に限られた人でしか無理ですし。だとすると、世の中を自分はどの角度から見るのか、自分をどの位置に置くのか。それを自分の中でコントロールできれば、常に心地良い場所にいられるし。何が豊かなのかは自分の中にあって、そこに身を置く為の生活道具であったり、お洋服であると思うんです。

例えば自然派のものが良い、マクロビがどうとか、お肉を食べないとか、色々あるでしょ?それも頭でっかちになり過ぎるとダメなんじゃないですかね?お肉も食べる、ケミカルなものもとる、タバコも吸う、不規則な生活をする、それでいてその人が何も悪いものに犯されている訳ではないのであれば?って考えると。タバコは美味しい、エナジードリンクでいつまでも元気にはしゃげるんだったとしたら。本当に自分の心地良い帯域にメンタルを置けて生活ができるのであれば、色んなことを毎日気にして小さくなって生活しないといけない人と、どっちがどうなんだろうと思うし。きっと、生ききってしまっている人の方が楽しいし、その人の人生の心地の良い空間で生活ができていると思います。その為の豊かさの部分は人それぞれですけど、決してものではないと思うんです。

 

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──────その意味ではもしかすると私は「豊か」なのかも知れません。

 

佐藤氏:社会で生きていく為に最低限必要になってくるものもあるだろうし、金銭的なところじゃないって言う人もいるし。結局は心の豊かさかな?それを持っていられれば色んなものが豊かに見えてくると思うんです。何でもないことが奇跡的に思えれば、毎日が楽しいですよね。

 

──────色々な不安要素やストレスが多い現代では、なかなか前向きに考えづらくなっている一面もあるとは思いますが、そういうふうに考えられると素敵ですね。

 

佐藤氏:考え方1つでいいとも思ったりするんです。未だ見ぬアンハッピーは、今どこにあるのかな?ってね(笑)

 

──────何だか勇気づけられているような気がしてきました(笑)

 

佐藤氏:でもこれくらいの感じでやっていれば、見方も変わってくると思うんです。

 

──────もちろん実践されているのですか?

 

佐藤氏:こうして話して出てきた言葉って、自分への言い聞かせみたいになることもあって、話の中で気付くことも多いんです。言葉に出さないと、なかなか実行に移せないこともありますしね。

 

──────私もこうしてインタビューしている中で気付くことがよくあります。

 

佐藤氏:「ミラクル」を選びたかったのも、ちょうどその頃、僕自身が何でもないようなことにハッピーを感じている時だったんです。街中で起こった偶然の出来事も、その時点から巻き戻していくと、朝の歯磨きがたった3分遅れるだけで出会わなかったって考えると面白いんです。

 

──────それは私も時々思うことがあります。10年前の自分でさえ、今の自分がこうなっているなんて想像もできませんでしたし、色々な偶然が重なっての今の自分であって。もっと若い頃は「あの時こうしていれば…」と考えてしまうこともありましたが、今ではこれだから良かったと思えたり。今思えばたった3分で何かが変わるような、偶然の連続だったような気もします。

 

佐藤氏:自分の中の豊かさの位置付けを、今にはめ込められているんですよね。自分の位置する所を自分の中で変えていくっていうことが、豊かさを作り出す方法なのかな?って思ったりもします。多分僕も性格上、お洋服の学校に行っていたら今みたいなことを絶対していないと思いますしね(笑)

 

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──────上手くは言えませんが、佐藤さんは良い意味でファッションデザイナーっぽくない…そんな気がしてきました。

 

佐藤氏:でも多分…世の中を斜めから見てる、ただのイケズですよ(笑)

 

──────私はできれば斜めから見たいと思うんですが、あまり言うと変な人と思われそうですし、さじ加減が難しいです(笑)

 

佐藤氏:そうですよね(笑) 僕がイケズなのも、分かる人には完全にバレていますからね。

 

──────でも実はそこに愛があるとも思うのですが。

 

佐藤氏:食わず嫌いはイジワルになると思うんです。1回食べて食あたりしてからイケズになろうかな?そんな感じです。そのイケズって言うのも、例えばトレンドを気にしないのであったり、自分のやりたいことだけをやるんであったり。今までやってきた中で生まれた方法、自分で選んだやり方なんですけど、生き残る1つの手段としてハズしていくっていうところです。大きな資本が、ものをたくさん作って低価格で販売するっていう生き残り方も、衣食住の衣だと思うんですけど、僕はそこじゃないので。じゃあどうやってやり続けるかを考えた時の1つの方法として、比べるものが他にないものを、というところです。ハズす作業の中ではイケズな目線が生きてくる気がするんです。

 

──────トレンドからハズす作業…。では例えば突然、爆発的にmiracoがトレンドになってしまったとしたら、受け入れることはできますか?

 

佐藤氏:どれ程の規模になればトレンドなのか分からないし、今の僕の動き方から考えると現実味がなさ過ぎる話なんですけど、もしそうなったとしたら色々と実験するんじゃないですかね。なってしまったとしたらそれは仕方がないことだし、楽しくて手に取ってくれる人達が増えるっていうことなので、悪いことではないと思うんですけどね。結局イメージってみんなが付けるものでしょ?こっちからメッセージを、と言うよりかは、手に取る人に感じて欲しい、着て欲しい、イメージを作って欲しいし、それで良いと思うんです。万が一ドレンドになってしまったら、そこでは大きな数字が動くことになりますよね。そうなると、きっとまたイケズな自分が出てきて「こんな変化球がストレートやで」って見せるんでしょうね。それにトレンドのど真ん中って、すぐにフラレてしまいそうな気もしますし。miracoがそこまで爆発することはないと思いますけど、もし上手にできるのであれば、そこまで行ってしまわないような空気感でやっていきたいですね。

 

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──────ブログの中に書き留められていた言葉の中に、他にも面白いフレーズがありました。「平均が退屈だと思う愉快な人達に囲まれて とてもハッピーです」

 

佐藤氏:それも結局ハズしていきたいっていうところですね。

 

──────その愉快な人達とはどんな方々なのですか?

 

佐藤氏:それもイケズな言い方ですね(笑) この平均っていうのも色々な意味合いがあって、例えば数の多い部分。ファッションだけじゃなくて、色々なジャンルの多数派を触っていれば、流行やトレンドに気を遣っているように見えたりする訳ですもんね。そういう場所に身を置くっていうことは、ある意味保険をかけるような感じでもあると思うんですけど、そういうのを嫌う人達、という意味でもあります。勿論僕も平均的な部分をもっと知らないとダメなんですけど、そういう所から大きくハズレることも、生き残り方の一つだと思います。

 

──────落とし所、ハズし所。デザインの面でも、トレンドを発信するよりも大変な作業のように思えます。

 

佐藤氏:難しいですね。でも最近は、自分が気持ちの良い場所を見つけられたら、自然にハズレていたりもするんです。落とし所にしても、自分の手癖も相まって、ちゃんとハズレた所に落ちてくれるような感覚があるんです。逆にそれに悩まされたりすることもあるんですけどね。

 

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──────買い付けに行かれた各国のお写真も数多く掲載されていましたが、その中でもベルリンのお写真が印象に残っています。ショップオープン時の買い付けでもベルリンに行かれたと伺っていますが、数周られた国の中でもお好きな場所なのですか?

 

佐藤氏:好きになったっていう感じです。数年前、心斎橋にあったドイツ雑貨DDRさん(現在は靱本町へ移転)で東ドイツ時代のものを初めて見た時に、本当に素敵だと思ったことがきっかけにはありました。行ってみたいとも思うようになって、実際に旅行で行くようにもなったんですけどね。当時はお店を出すようなことは考えていませんでしたけど。

 

──────どんな魅力があるのですか?

 

佐藤氏:買い付けとして考えると、自分のイメージするところのバイイングがしやすい。あとは…不思議な町なんですよね。東と西で分かれていただけでも興味が湧きますし。例えば町中を流れる川1本を挟んで2つの町の雰囲気が一目でガラッと変わるんです。社会主義と資本主義とでまず違っていたし、東は貧しかったですしね。

 

──────当時の面影が今も残っているのですね。

 

佐藤氏:残そうとしている所もたくさんあると思います。でも1990年で完全にベルリンの壁がなくなったから、まだ20年くらいしか経っていませんしね。田舎であって、都会であって、ファッションの要素もあって。オモシロイ国だと思います。

 

──────海外の文化や歴史、自然などに触れることで、ご自身に変化は生まれますか?

 

佐藤氏:その為に、一度買い付けなしで旅をしたいとは凄く思うんです。買い付けの頭で動き回ると、見たい所、見ないといけない所を見られないことも多いですし。それでも外国に行くと、もっと日本を知りたいっていう気持ちが漠然と自分の中で生まれてはくるんです。文化の違いを感じる時って、自然と日本と比べている訳ですもんね。

 

──────生活する場所であり、毎日意識はしませんが一番身近な場所ですしね。

 

佐藤氏:いつもなんですけど、自分の身が海外に行ってる時って、宇宙から飛び出してどこかに行ってしまっているような気分になるんです。日本のイメージさえ想像できないくらいに。それは歴史あるヨーロッパに行くことが多いからかも知れないんですけどね。じゃあ自分は歴史ある日本のあれこれをどれだけ知ってるのか。海外の方に「日本ってどんな所?」って聞かれた時に、どれだけ話せるのかな?1つも喋られないなぁって思うこともあったりして。例えばドイツにしても、母国語以外の2カ国語目を話さない方が多かったり、他にも自分達の国が一番良いんだって思われる方が多い国ってあると思うんですけど、それってみなさんそれぞれが、しっかりとしたアイデンティティーを持ってるんだと思うんです。自分の住む地に根付くものをしっかりと大事にされているんですよね。そう思うと僕も、日本のことをしっかりと知った上で、他の国のことも知りたいと思うようになりました。自分も海外に行く上ではちゃんと英語も勉強したいし、もっとコミュニケーションを取りたいとも思うし。少し話が逸れますけど、日本に来られている外国人の方に対して、みんな頑張って英語を話そうとしなくても良いと思うんです。日本人はみんな日本語しか話せない民族だから、ってね。だって日本人は海外に行ったら、ほとんど話せない英語を頑張って使おうとして困っていたりしますしね。

 

SEIGOU SATOU|INTERVIEW vol.18

 

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──────佐藤さんご自身は、どのようなライフスタイルを築きたいと思われますか?

 

佐藤氏:やりたいことだけをやれる人生にしたいので、その環境があれば良いんです。なので暮らし方だったり生活、お家がこうでありたいというところは、特に何も思わないんです。生きているその時々で思い付く何かがあれば良いし、それくらいの気持ちであったりするんです。目標がないって言われればそうかも知れないんですけど、身の丈に合った所でいいと思います。

 

──────私はやりたいことをやってきたつもりですが、気付かないうちに自分の中で押し殺していると、時々感じることもあります。忘れては勿体ないところだと思いますが、難しい所でもありますね。

 

佐藤氏:ひっくり返して言えば、やりたくないことはやらずに済む環境を作りたいですね。ライフスタイルの答えになっていないかも知れませんけど、大半の方は「ゆっくりと暮らしたい」って言われるんじゃないですか?最近だと例えば田舎暮らしとか、スローな雰囲気のものが色々な所で取り上げられているような気がしますけど、本来そういうものって流行り廃りのないものでしょ?

 

──────そうですね。都会から見ることで田舎のようなスローな雰囲気に憧れを持つ訳でもありますし。反対に田舎暮らしをされている方にこういう質問をすると、全く違ったニュアンスの答えが帰ってくることも多いですしね。

 

佐藤氏:僕の場合、そういう時間の感覚で言えば、セカセカしたかったから田舎から出てきましたしね。でも今考えると、結局は生まれた所に戻れるような形は作りたいですかね。今田舎に帰ってアトリエを構えて、展示会を開いたとしてもきっと誰も来てくれないと思うんですけど、そこに辿り着くまでに強くなっていないとダメですもんね。

 

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──────最後に、miraco的ミラクルなことを教えてください。

 

佐藤氏:miraco的ですか…。でも、さっきお話したように、ありのままの毎日なんじゃないですかね?

 

──────では、佐藤さんが「あ、今miraco!」と感じる瞬間は?

 

佐藤氏:具体的になると難しいですね。だって、世界中の人達と生きている間に顔を合わすことも無理で、選ばれた人達とこの人生の中で出会っている訳ですもんね。むっちゃ辛いシシトウを選んでしまうことだってそうですし(笑) だからミラクルは日常ですね。自分がこういう感覚になれたことも、ミラクルですもんね。

 

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SEIGOU SATOU|INTERVIEW vol.18

佐藤 誠剛 | SEIGOU SATOU

miraco デザイナー

 

<INFORMATION>

miraco|http://www.miraco.jp/

〒550-0015 大阪市西区南堀江4-16-14

TEL:06-6585-9922

営業日:土・日・月 14:00 ~ 21:00

編集後記

あんなこと言っちゃった、あんなことしっちゃったとか
どうしてあんなふうにしかできなかったのか、どうしてあの時もう一歩踏み出せなかったのかとか。
今も時々あるけど、ほんの数時間でいいから巻き戻したくてたまらない、小さな失態をよく繰り返していたような気がする。
大人になった今でも時々ある。

それこそ大人になる手前のころ、大人になりたての頃なんて、
自分がやりたいこととは裏腹に、そうしたい、そうなりたいと思うことに挑戦さえできないような状況に自分で追いやってしまい、
後になってよく後悔していたような気がする。

自分が目指すものを真っ直ぐに見てきた自信はあった。
その目指すものは、もうちょっとの勇気と、自信と、行動で形になっていたかもしれない。
そう振り返った瞬間、何かに八つ当たりしたいくらい悔しく、いつしか諦めに変わっていた。

そんな連続から何年経ったか忘れたけど今、今までのそれが全て良かったと思えるのは何故だろう?と時々感じていた。

こんな暮らしがしたい、こんなスタイルを築きたい、
それが誰かにとっても良いものであるなら、できれば共有したいと思う。
そんな、まず自分が心地良い場所を作り上げる為に、探したり、見つけたり、考えたりする日々。

これを読むとがっかりする人もいるかもしれないが、正直なところ、
これがいいんだなんて言えないし、言うつもりもなかったりする。

今思う豊かさが明日になればまったく違ったことを考えている可能性だって充分あるくらい知らないことだらけだし、
何かに肝心な部分が隠されてしまっているかも知れない溢れる情報より、
誰かの生の声を聞けば一番早いし、もしそれが嘘だったとしても見抜けてしまうことだってあるかも知れない。

目には見えなくてもその人自身にとっての完璧なスタイルであったり、
気分をあげてくれる便利なものが手を少し伸ばすだけで届く距離にある暮らし、
それは誰だって心地良いはずであって、それこそ豊かなのだと思う。
ただもしかすると、思い描く最善、最良な何かを追うことによって、その方法までも外の何かにコントロールされ、
毎日の小さな時間の中にあるふとした幸せを見過ごしてしまうようでは、
それこそただの形だけになってしまうような気がする。

あの頃は失敗だと思っていたことが、今はそれで良かったと思えること。
当時から考えれば奇跡的なことだろう。

そんなことを繰り返すうちに自然と、もう一度自分を見つめ直す瞬間、
その頃より広い世界をみてみたいと思った瞬間があったんだろう。

偶然と偶然が、偶然のタイミングで重なり、思いもよらないようなことが起こりえる。
その出来事は取るに足りないことかも知れないし、良いことであるか、悪いことであるのかも分からないけど、
誰でもきっとそんなことが1つや2つ、いや、本当は数えきれないくらいあると思う。
そしてそれは、振り返った時に良い意味で奇跡だったと思えることであったりするかもしれない。

誰かに言う程のことでもないくらいのほんの小さな嬉しい出来事、
当たり前で気付かないくらいの小さな幸せ、
日常過ぎて改めては感じないそんな瞬間をほんのちょっと思い返してみると、
毎日がとても幸せで、もう既に持っている豊かさが見つかりそうな気がした。

ネガティブな私は毎日がミラクルだなんて大きな声では言えないが、できればそう思いたい。
いや、都合の良い所は全力でプラスに考えられるから、もしかしたらポジティブなのかもしれない。

お話を伺い帰る途中、その日一日のミラクルを探している自分がいた。
一つ、見つかった。

ふらっと寄った行きつけの居酒屋でお疲れ様をした。
いつもより何故か楽しかった。

明日のミラクルが待ち遠しくなった。

by makiko ueno

Camera / toshinoriCawai

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