INTERVIEW

Eiju Ando|INTERVIEW vol.10

UPDATE : 2013/Feb/26 | AUTHOR : makiko ueno

人間に近い感触、本来の家具ってそういうものだと思うんです。
関西から世界に向けて新たなムーブメントを発信するプロフェッショナルや、様々な場面で活躍するアーティストにスポットを当てたインタビュー。
第10弾は、大阪住吉にて建築設計事務所を併設する家具店クラニスムストア代表の安藤英寿氏にお話を伺った。

────── 福島県のご出身ということで、大阪で住まわれることになった簡単な経緯を教えていただけますか?

 

安藤氏:住まいが原発から4~50kmの場所にあったんです。当時子供がまだ1才と小さかったことと、自分達で線量計で色んな所を計ってみたら気持ち悪くて。800km以上も離れるんですが、決めたんです。

 

────── 大阪を選ばれたことに理由はあったのですか?

 

安藤氏:何もないです。とりあえずより遠くに離れようと思って。勿論、親戚もいなければ、友達もほとんどいなくて、誰も知らない状態だったんです。

 

────── 福島県では何をされていましたか?

 

安藤氏:実家が代々続く農家で、私で6代目になるんですが、お米作りをしながらもの作りをしたり。

 

────── お米をつくりながらもの作りを?

 

安藤氏:お米自体は1年を通して3シーズンあるかないかくらいなんです。東北って冬も非常に長いし、実はお米って毎日毎日管理するようなものでもないんです。水管理が必要な時もあれば、ちょっと自由な時間を自分で見つけられることができる職業であって。無農薬で作る畑なんかも好きでやってたんですけどね。

 

Eiju Ando|INTERVIEW vol.10

 

────── その頃から家具を制作されていたのですか?

 

安藤氏:そうですね。家具や依頼される店舗の看板を作ったり、ディスプレイを頼まれて作らせていただいたり。

 

────── どこかで修行を積まれたのですか?

 

安藤氏:実はそういうのが特にないと言うか。実家が築180年くらいの古い家で、大工さんがもう引っ切りなし家に来てたんです。子供の頃からそれを見ていて、よく大工さんに教えてもらったり。あと、私のおじさんが器用な人で、家具なんかを作ったり溶接や鉄工などもしていて。私も10代と割と早くから教えてもらっていたんです。

 

────── 子供の頃からそうやって少しずつ学ばれ、今に至るのですか?

 

安藤氏:そうですね。こういう大工仕事も基本的な部分を教えてもらったら、後はだいたい応用なんですね。木の継ぎ手とか、木材のこういう所は使っちゃダメ、逆にこういうのはここに適しているとか、そういうノウハウがある程度あればね。

 

────── そうなんですね。専門的な学校に行かれていたり、特別な修行を積まれたのだと思っていました。

 

安藤氏:学校や大学で勉強されたり、職業訓練校に行かれる方も多いですね。ただ自分的に量産するものとか、決まったラインナップのものを商品化して作っていくっていうのが、あまり向かないんです。依頼主がいて、予算があって、一緒に打ち合わせしながら作っていくのが好きで。

 

Eiju Ando|INTERVIEW vol.10

 

────── もの作りに興味を持ち始めたのはいつ頃ですか?

 

安藤氏:どうなんでしょうね?幼い頃からよく畑とか山に行ったり…。農業なんかももの作りですもんね。こんな小ちゃな種から目が出て実をつけて、そして食べ物になっていく感じが。自然とそういう環境にいたからかも知れませんね。

 

────── 自然と向き合い、自然の中で生活をする。都会にはない大変な面も勿論たくさんあると思いますが、そういう生活にとても憧れてしまいます。

 

安藤氏:ただ本当のど田舎でね。でも田舎暮らしは本当に良いです。気持ちが豊かになりますね。でも震災があって移住しようと決めて、物件を探し出したんですが、当時はHPで被災者向けの賃貸を斡旋する事務局のようなものがたくさんあったんです。この場所は東京のある斡旋事務所がボランティアで紹介されていた物件で、オーナーや家主さんも色々配慮してくださって、2年間ですがとても安く貸してくださるんです。ただここは人通りも少ないしひっそりとしていて、多分商売には向いてないと思うんですけど、私達の設計事務所と、家具を作ったり修理したりするのは、あまり場所は選ばないんですね。お店の前は小学校があるでしょ?ここは元々文房具屋さんだったんです。この辺りは他にもとても古い建物が残っていたり、のんびりとした良い雰囲気です。

 

Eiju Ando|INTERVIEW vol.10

 

 

────── オリジナル家具の制作・販売をされるお店は他にもたくさんあると思うのですが、修理まで面倒をみてもらえるお店は少ないなと思っていました。古いものを蘇らせるということに、何か特別な思いはありますか?

 

安藤氏:家具もしかり、例えばオートバイや車なんかも、ちょっと朽ちかけているようなものがまたもう一度乗れるような状態になったりだとか、そういうことは随分やってきたんですけど、楽しいんです。家具だってもうグラグラしているものがちゃんとまた使えるようになったりね。

 

────── ブログで修理の工程を紹介されているページを拝見しましたが、何か熱いものを感じました。

 

安藤氏:いや、あれはもう淡々と。結構酔っぱらいながら夜遅くに書いていたり(笑)

 

──────作ったり直したりする工程の中で、どの作業に一番楽しさを感じますか?

 

安藤氏:同業者に聞くと、まずパーツを設計に基づき作った後、それを組んでいく作業が一番面白いっていう人が多いんですが、私はまだ全然形にならない状態で、頭の中で色々イメージを膨らませたりしている時ですね。私ももう今年で37才になるんですけど、今でも興奮して夜中眠れなくなるくらい(笑)実は今日からある店舗の改装が始まったんですが、もう早くやりたくてたまらなくて、朝4時に目が覚めてしまったり。これはもう自分でも分からないんですよね。

 

──────手放すことが惜しくなることもありますか?

 

安藤氏:完成すると手元からなくなってしまいますからね。愛着も湧いてくるし、時々寂しくなることもあります。後は重傷な家具とかね。あぁいうのを見るとウズク…(笑)足1本が飼い犬にかじられてなくなってる状態で、1本丸々作り替えるとか…ウズキますね。

 

Eiju Ando|INTERVIEW vol.10

 

──────オリジナルで制作される家具の他に、アンティークの椅子もたくさん並べられていますね。

 

安藤氏:10代の頃から家具貯金みたいなものをやっていて、ずっと集めていたんです。今だったら当時欲しかったものがリプロ品として東南アジアなんかで安く、同じようなデザイン・設計で作られていますよね。50年以上経つと色んな権利関係が緩和されてフリーになってくるから。でも厳密に言えば、継ぎ手なんかが雑だったり、全然違う工法で作られているものも多くて。今でもリプロ品っていうものは別に良いとは思うんですけど、自分の中でそれには手を出すまいと思っているんです。本物に憧れて、お金を貯めて買っていたようなものなので。

 

──────お若い頃からアンティークの椅子に夢中だったんですね。出会って衝撃をうけたような1脚、そんなものはありましたか?

 

安藤氏:家具の中でも取り分け椅子で、単純にもの凄く好きなんですけどね。そんな1脚は…どうなんでしょう、分からないです。1脚1脚に全然違うコンセプトがあって、バラエティーに飛んでますよね。眺めていても凄く良いし、おまけに座れるし(笑) 1脚として同じデザインがなく、色んな考えがソコに兼ね揃えられていたりしますから。

 

Eiju Ando|INTERVIEW vol.10

 

──────ワークショップも定期的に開催されているんですね。

 

安藤氏:オリジナルで考案した、家具の端材で作る“着物ハンガー”があるんですが。他にも木製のハンガーはあるんですけど、ちょっと価格の割に安っぽく見えてしまったり、使い勝手も悪かったりして。ある熱心な着物ファンのお客様がいまして、「帯も一緒に通せて掛けられるようなもの作れませんか?」って言われたのがきっかけだったんです。タモやウォールナット、サクラなどの色んな木材や、モチーフ、江戸打ちの紐なんかも好きな色を選んでもらって作るんですけどね。

 

Eiju Ando|INTERVIEW vol.10

 

──────オーダー感覚で作ることができるんですね。

 

安藤氏:そうですね。最後にこのスチール製の古美色っていうメッキが加工されている金具をフックにつけて仕上げるんですが…。こんなもの、ホームセンターでありそうなんですが、これも完全にオリジナルなんです。東大阪市にそれはそれはワールドワイドに活躍されている町工場があって、もの凄い数の特許も取ってらっしゃるんですが、そこにね、私もう直談判で行ったんです。

 

Eiju Ando|INTERVIEW vol.10

 

──────すごいフットワークですね!

 

安藤氏:「実はこういうものを作っていて…」って、試作品を持って行って。市販品だったりするとフックが小さかったり、逆に大き過ぎたり、肩の角度や幅だったりが微妙なんですよ。頼みに頼みまくって本当に大変でした。あと他にも実はこだわりがあってね。ハンガー上部の穴で紐を玉結びにした状態できゅっと引っ張って掛けるんですが、横から見た時に結び目が見えないような2段の穴になってるんです。でもこんなのね、簡単にできると思われると思うんですが、ハンガーの真ん中の部分の、4cmしかない幅で穴をあける…そんな小さな機械ないでしょ?これも工具から作って…。

 

────── 声を大にして言いたくなりますね。

 

安藤氏:あまり言うとイヤミになるので、あえて触れませんけどね。でも中にはそこに目をつけて「スゴいっ」って言ってくださる方もいて、本当に…目が高いです(笑)

 

────── ワークショップ以外にも、隣のガレージでイベントも開催されているんですね。

 

安藤氏:私達がここに来て1年目だったんですけど、着物関係者の方にお誘いをいただいて。石ころがジャリジャリの駐車場なので「ジャリ市」。そんなのを考えるのも好きでね。でも、前回は2日間やったんですが大雨が降りましてね。それでも170人くらいの方が出入りしてくださって。近所の方なんかビックリされたんじゃないですかね。こんな静かな所にゾロゾロと。ちょっと変な宗教とかね(笑)

 

────── こちらに来られて1年と半年という短い間にも、とても内容の濃い人の繋がりや地域との関わりが感じられますね。ものを作ること、人と繋がること、共通することや大切にしていることはありますか?

 

安藤氏:特に意識はしてないんですが、何かあるのかも知れませんね。おんぶに抱っこって言いますけど、おんぶされっぱなしです。でも幸運なことに知り合いやお得意様はたくさんできました。食べていくのはやっとですけどね(笑)

 

────── 今思案中のアイテムなどはありますか?

 

安藤氏:最近はね、楽器屋さんから依頼を受けて試作で作ってあるんですが、リコーダースタンドみたいなもので子供のおもちゃを作るというのがあるんです。それを大阪の某百貨店でワークショップをやろうということになってるんですがね。お父さんと子供、家族で参加してもらって、子供の為におもちゃを作る、楽しそうですよね。それでね…オモシロイおもちゃがあるので、ちょっと待っててくださいね(笑)

 

Eiju Ando|INTERVIEW vol.10

 

Eiju Ando|INTERVIEW vol.10

 

ドイツの木のおもちゃなんですが、これが良くできてるんですよ。これを元にオリジナルのものを作っていこうと思ってるんです。こんなものでも、買うと1万円くらいするんですって。パーツはボンドでつけてるだけだし、貼付ける角度も全然なってないし、ドイツの方、ビールでも飲みながら作ったんですかね(笑)でもこれでいいんですよ。このクルマの動き、大人でもちょっとイイでしょ?赤ちゃんだとよく口に入れてしまうんで、素地で何も塗ってない状態のものを選んで。無公害のフォースターの塗料もあるんですけど、やっぱり素地の方が勿論安全だし。他にも色々手を加えたい部分があるんですが、これをお父さんと一緒に作れたらきっと楽しいと思うんです。シンプルな作りで誰でもできる作業なので、いくら不器用なお父さんでも株は上がるハズなんです(笑)何が良いって、材料もすごく少ないし、経費もかからなくってね(笑)

 

Eiju Ando|INTERVIEW vol.10

 

Eiju Ando|INTERVIEW vol.10

 

────── 奥様が運営されているストア併設の建築設計事務所クラニスムスタジオで企画・販売されている、会津木綿のプロダクトも充実していますね。

 

安藤氏:嫁さんが建築士なんですけど、洋裁もやっていたんです。私達は福島にゆかりのあるものを、関西に来ても広めていきたいと思っていて。まず深刻だったのが、原発問題で観光客が随分減ってしまったんです。織元も今では2社しか残ってませんしね。会津木綿がもの凄くすきで、残したい、残ってもらわないと困ると思っていて。

 

Eiju Ando|INTERVIEW vol.10

 

────── 福島県の方にとって、“会津木綿”はやはり身近なものなのですか?

 

安藤氏:そうですね。畑仕事とか野良仕事をする時に使うような木綿で、丈夫、しかも色んな縞模様が何百種類もあるんです。今放送されている大河ドラマは福島県の会津が舞台なんですが、このあいだ見覚えのある柄のもの着てましたもんね。後もう1つ有名な子供向けのおもちゃで、“赤べこ”っていうのがあるんですが、この職人さん達も観光客のおかげで何とか食べていたんです。でも福島を訪れる人が激減してとても大変で、どうにかしたいって思ってたんです。そんな時に…これも不思議な縁で、ある中学校の先生がうちの店の隣の高校に、受験で引率で来てらっしゃって、偶然ここで会ったんです。寒い季節だったのかな?外で立っておられて、「よかったらどうぞ~」って言って中に入ってもらったんです。色々お話をしてると、その方は美術の先生で、この“赤べこ”を教材に…そんなお話になったんです。赤べこって、それこそ“赤”で、赤に塗る前は釉薬だけの色で肌色というか真ピンクの状態なんですが、その状態のまま教材として売ってもらえないか、そんなふうに話が運んで。結局その中学校には2学年分納めさせていただいたんですが、当時は職人さんも助かったはずなんです。それから大阪府の美術の先生が集まるような場で講師として赤べこの良さをアピールするような機会も生まれたり、さらに他の中学校からも注文をいただくようになったり。

 

Eiju Ando|INTERVIEW vol.10

 

────── 偶然の出会いからそのようなきっかけが生まれるなんて、素敵ですね。

 

安藤氏:人にこんな話をすると、「安藤さん、何屋さんなの?」って言われますけどね。講師として行かせていただいたのは、目の前で染めるだけなんですけど、それが素晴らしいんですよ!赤べこって赤くて丸い模様が入っていたりっていうのがスタンダードなんですけど、生徒の手にかかるとこれを強引にドラえもんにしたり。ある先生は女子高生風のセーラー服にして、おしりの部分がパンツ丸見えになってる、そんな先生らしからぬものを作ったり(笑)みんなでワイワイ、すごく楽しいんです!

 

────── 大阪でお店を出されても、“会津木綿”や“赤べこ”で今も福島と繋がっているんですね。

 

安藤氏:ちょっとでもね、その良さを知ってもらえたらいいなと思っていて。大きなデパートでも会津木綿を売ってたりするんですが、うちは織元さんから直接仕入れてるので、少しでも手に取ってもらいやすく。

 

────── 会津木綿の魅力を教えていただけますか?

 

安藤氏:それがね、一概には言えないんです。もの凄く素朴な質感のものもあるし、凄く派手なショッキングピンクなんて色もあったり…。大阪でバカ売れなんですけどね…そのピンクが。東日本では全然売れなかったであろうショッキングカラー…

 

────── 大阪のマイナス的なイメージだったり(笑)?

 

安藤氏:いえいえ(笑)!そのカラーで日傘を作った方がいたんですが、またこれが似合うんですよね、さらっと合わせて。本当に人気なんです。

 

Eiju Ando|INTERVIEW vol.10

 

────── 使う程に味わいが出てくるのも良いですよね。

 

安藤氏:洗っていくとクタッとしてね。家具なんかでも塗装をピカッとやってしまうと、そういう味わいはまず出ないんです。無垢材で、せめてオイルで仕上げていくと経年変化で馴染んで、味わいが出てきて楽しいんですね。みなさん家具っていうと、ピカっとウレタンの塗装がしっかり乗ってるものを想像されると思いますが、それを理解してくださるお客様も徐々に増えてきて。直に、ダイレクトに木に触れるっていう感触のものの方がね。本来の家具ってそういうものだと思うんです、人間に近い感じで。

 

 

────── 安藤さんにとって“良い家具”とは?

 

安藤氏:勿論自分の好みもありますよね、みなさんそれぞれにも。リビングに、寝室に置く家具にしても、それがあまり奇抜過ぎても空間を壊してしまうし、その空間にマッチするようなものがいいですよね。家具や何かを作る時も、あまり独りよがりにならないようなデザインにしたいな、とは思うんです。さり気なく合理的で、極力デザインは控えて。
余談なんですが私、車やオートバイが好きなんです。今乗ってるのも古い車なんですけどね。今だったらハイブリッドとか色々ありますけど、欲しいと思えるものがなくて、ずっと手入れして乗ってるんですが、すごく使い勝手が良いんです。こと車というと環境問題もあると思いますし、時代やブームもあると思いますけど、ずっと使いたくなるようなものを収集すると言うか、なるべく永く使えるものを…とは考えています。もの選びは保守的なのかも知れないです。目に見えないような流行や傾向に、知らないうちにコントロールされやすくなってしまっているとは思いますけどね。

 

──────今後、特に力を入れていきたいのはどのような分野ですか?

 

安藤氏:従来通り修理はやっていこうと思っています。もの凄く喜んでもらえるんですよ。壊れた、でも思い出が詰まってる、そんなものを簡単には捨てられませんからね。使える状態になってお渡しする時のお客様の表情とか、喜ばれる様子が、少しだけ医者にも似たような感覚でね(笑)「あぁ、良い仕事したなぁ。」って、満足度は凄く高いです。

 

Eiju Ando|INTERVIEW vol.10

 

──────安藤さんにとっての“理想の暮らし”とは?

 

安藤氏:暮らし=衣食住でしかないと思うんですが、自分が手掛けたものを食べて、住まいもできれば自分達でね。“クラニスム”っていう名前は、先祖が代々残してくれた米蔵を改装して、本当に蔵に住んでいたからなんです。薪ストーブを入れたりして、結局7年くらい住んでたんですが…。うちは何でも屋だし、それ以外の名前を考えられなくて。

 

──────今では大型の家具でさえ大きな量販店などで安く買えてしまったりもしますが、そこに何か思うところはありますか?

 

安藤氏:家具って1回買ったらしょっちゅう買い替えるものじゃないし、回転するようなものじゃないでしょ?揃えてしまったらそれっきり、だから1から作る人にとっては、相応の価値で売り買いしてもらわないと食べていけませんしね。でも時代は薄利多売の真っ只中で、量販店にあるものが“家具”っていう認識を持たれている方も多いんでね。それも良いとは思うんです。ただ私達は意識している訳ではないのですが、そういうものとの差別化を逆に図れているので。好きなものをやらせてもらっているだけなんですけど、こういうのも良いかなって思います。選ぶのは人ですしね。

 

──────福島へ帰ることも視野に入れておられるのですか?

 

安藤氏:考えてます。自分の家があったり、お墓もありますからね。原発問題は5年10年経てばある程度色々な健康被害や、そのようなものが見えてくるとも思うので。一番重要視していたのは、やっぱり自分の子供を避難させなくちゃいけないと思ったから。子供がいなかったら多分、大阪に来ることもなかったと思います。子供がある程度大きくなって自立してくれたら…でもまだまだかかりますし、しばらくは大変ですね。ここ2~3年で帰ることはないと思います。
本当に不思議なもんですよね。この年齢で生活の基盤を全部移すような計画なんてなかったし。
ここに来て色々な人達との交流で、私達は何かと予期しない形で導いてもらってるので、これからもやっぱり小さくても店舗は持って、お客様達と情報交換したり、たわいもない話をしたり、楽しんでいきたいですね。

 

Eiju Ando|INTERVIEW vol.10

 

Eiju Ando|INTERVIEW vol.10

 

Eiju Ando|INTERVIEW vol.10

 

 

安藤 英寿 / オールド家具&雑貨の店 KURANISMSTORE 代表

 

SHOP INFO

www.kuranism.com

大阪市住吉区墨江2-4-2

OPEN 11:00~19:00 / CLOSE 月曜日

 

編集後記

幼い頃手にしたおもちゃの中に、
色が剥がれ落ちても、傷がつき欠けてしまっても、
「もう捨てたら?」と言われても手放したくない、
大好きで大切にしていたお気に入りがいくつかあったことを、今でも覚えている。

枕元に置いて眠りにつきたくなるくらい、子供心に愛おしかったそんな気持ちを、
大人になった今、感じることは難しいのかもしれない。

ありのままの自然の流れに逆らわず、
人の手で育て生み出してきたもの作りの途中、そしてその先には、
お日様のように温かな、人と人との繋がりも生まれるのだろう。

木の持つ表情をそのままに、直に木に触れる感触はまさに人間に近く、
その温度や内に刻む微かな音までも聞こえてくる気さえする。

不思議な縁が水を撒き、小さな種から芽が出て実をつける。

子供のように無邪気に語る安藤氏の、楽しみを持って生み出されるものは、
使い手に寄り添い、そして一緒に歳を重ねていきたいと感じさせられそうだ。

次はどんな可愛い実をつけるのか。

作ることを通して自然と、そして人と人とが繋がる小さな輪が少しずつ膨らんでいくその過程を、
これからも大切にしていきたい。

by makiko ueno

Camera / toshinori cawai

RECENT OTHER