booworks 渡邉 航一郎|INTERVIEW VOL.1
UPDATE : 2011/Oct/13 | AUTHOR :
今回は第一弾として、手織りをこよなく愛する職人気質なデザイナー、booworks 渡邉 航一郎氏に生の声を聞いてみた。
───── 始めたきっかけや原点について教えていただけますか?
「今から6~7年前に京都の川島織物っていう織物の専門学校に1年半通っていたんですけど、それが織物を知った所ですね。それ以前は服飾の学校に行ってたんですが、多分皆が直面すると思うんですが、自分の欲しい生地が、柄がないなって言うのがあって…仕方がない事なんですけど、いずれ自分の生地を作ってみたいなーって思って。でも作れる方法なんか分からへんし、フリーターしながらその思いを寝かせていたんです。で、京都に実際に体験入学に行った時に、もうちょっと今っぽいというか….プリントとかシルクスクリーンなんかの技術を習得したかったんですが、思いっきり糸から生地にする学校で、自分の思い描いていものじゃなかったんですけど…やったらめっちゃハマってしまって、『コレやな』って。それがきっかけです。」
───── 現在のワークスタイルにしようと決断したのはいつ?
「一年半で川島織物を卒業して、その後友人の誘いでブランドを立ち上げて、そこでもテキスタイルを担当していて。実際に糸から生地を作るっていう。それと少し平行するように、染めの工場でも一年半程修行していました。今の仕事にしようと決めたのは一年前で、その染めの工場も辞めて完全に切り替えた感じです。」
───── 「手織りや手染めについて、どこに一番こだわりがありますか?」
「こだわりですか…手織り、手染めって言ってるんですが、それを一番に押したくはないんです。2番目、3番目に『実はね…』って言った方が生きるような気がするんですね。なのでまずはデザイン。デザインでその位置に着かないととは思っています。手織りって、すごい誇る物だと思うんですけど、それ過ぎるとね。じゃあ何十万もする手織りが皆いいのかって言うとそうではないし。手織りで買う世代でもないし。」
───── 「じゃデザインについても自分が可愛いと思う好きなものか、それとも街のみんなが可愛いと思うトレンドを意識したようなものですか?」
「半々ですね。最初は色んな人の意見を聞いてデザインにしていましたけど、結局自分が思っている物の方がいいんだって結論にたどり着きました。でもそういう意見を聞く耳は持っていたいから、聞きつつ、自分の『コレやっ!』っていうのを探して。なので基本は、自分の好きなものをつくろうってスタンスでやっています。」
───── 独立するにあたって迷いや不安があったと思うんですが、それを決めさせたのは何ですか?
「全然なかったです。逆にそれまでが不安でした。学校に言ってる時も、勤めていた時も。何なんでしょうね。これでいいんかなっていう疑問があって。多分どこかで人に委ねているような、甘えのようなものがあったんでしょうね。でも一年前に自分でやっていこうと決めた時は、そんな気持ちじゃなかったです。俺、手織りが好きやからやるって決めた時は。極端な話、もし食っていけなくても、あくまで今やっている事が本業ですってやっていこうと思って。もちろん周りもすごく手伝ってくれますし、自分も頑張っています。」
───── アイデアは毎日の暮らしの中の、どのような場所・時間に生まれますか?
「街で見かけたもので、『あっ、可愛い』って思った物を自分流にアレンジしてみる事もありますし、あとは頭に浮かんだあるデザインを自分の生地で作ったらどうなるかなっていうのもあるし。あと、これって良いのか悪いのか分からないんですけど、僕一回で結果を求めないんです。何回か作って、自分の感性に近付けていったらいいかなって思うんで。最初は『こんな感じで』っていう風にざっくりとイメージを投げかけて形に落とし込んでもらって、そこから改良していくような。鞄屋さんにもあまり行きませんし、雑誌とかもほとんど見ないし、街で見ているの方が良いですね。あとはがらくた屋によく行きます。行きつけの店があって。たとえば昭和レトロなグラスとか花瓶とか。面白い形やなーって。」
───── 今回新作として発表されたリボンブローチですが、これまでに無かったラインですよね?
「この形ってホント、唯一無二っていうか…。僕の生地じゃなくても可愛いし、形も可愛いと思うんです。このへんとか。それを自分の生地で作ってみたいっていうのがあって。最初は鞄を作る時に出る端切れでやっていたんですが、皆さん可愛いと言ってくれるので。コレを作る為にやってみようかなって。派手目に、あんまり統一感があると面白くないので崩し目というか…。全体的にクールなカッコ良さじゃなくて、少しどんくさい感じをデザインの中に残したい…予想通りの色味じゃなくて、『ココで、こうクル?!』みたいなのが面白いです。」
───── 誰かの影響をうけましたか?誰でどのような事?
「先にお話しした共同でブランドを立ち上げた山脇輝久氏。人として凄いなっていう部分、尊敬している部分がたくさんありますね。後は短大の先輩とか…この人も生き方というか…こうなって行きたいなって感じる部分があって。」
───── その人の具体的にどういうところに影響をうけますか?
「怒ってくれて、おごってくれるところです(笑) その人の全てっていう訳ではなくて、部分部分、場面場面でこういう所がいいなって感じます。作る物については誰かな…。 何と言うか…こだわりのなさそうな人が好きなんです。 でもこだわっている人。自分が一つのテーマを決めて突き詰めてモノを作るタイプじゃないんで…。 『この人、何がしたいんかな?』って思うような人に凄く興味があります。 なのにスゴイ事をしてるっていう人って魅力的です。」
ここまで話を聞いていて、周囲の人を物凄く真っすぐ見ている人だと感じた。
そんな渡邉氏に、ここからは少し私的な質問を投げかけてみた。
───── モノ選びの基準やこだわりはありますか?
「基本、ほんっとに物を買わなくって…。直感でコレいいなって思った物とか…ボロイ方が好きですね。古い物が好きっていうのがあるんでしょうね。10年前の服とか普通に着てますし。ピチピチやけど…。」
───── 普段の一日の過ごし方について教えてください。
「織る時はずっと一日中こもって織ってますし、外に出ている時は一日中移動していたりしています。」
───── 普段はどんな音楽を良く聴きますか?
「吉田拓郎とか。フォークソングが好きです。あと最近だと阿部真央さんとか…SAKEROCKも好きです。」
───── 自分の中のジンクスや座右の銘などありますか?
「ジンクスは意識している物は特にないです。座右の銘はこのあいだ決めたんですが、“一所懸命”。一つの現場を精一杯、一生懸命やりたいですね。」
───── 最近買って気に入ってるものはありますか?
「最近バッジが好きで、これはダライラマのノーベル平和賞の記念バッジです。バッジってテンションあがります。」
───── 健康や食べ物で気をつけている事?
「普段から野菜を摂るようにしています。茶色い物ばかり食べてると体にもよくないし、イライラしてしまったりも嫌やし。」
インタビューは以上となります。
今日はわざわざお忙しい中お時間作っていただき、ありがとうございました。
では最後に、定番の二つの質問だけお願いします。
───── 渡邉さん的な毎日の暮らしの「エコ」、があれば是非教えてください。
「基本、ものを捨てないようにしています。織りをしていても、織れない部分なんかがどうしても出てきてしまうんですが、全部置いておいて。何に使うか分からないんですけど、糸として置いておこうと思って。」
───── 渡邉氏の考える未来は?
「これからは手織りの楽しさや、驚きを皆に知って欲しいと思います。手織りを広める一つの方法としてやって行けたらとも思っています。どうしても敷居が高いようなイメージがあると思いますが、それがすごく嫌ですし、僕はそうは絶対にしない。」
なるほど。
どこまでも手織りというものに真っすぐな目と志で、インタビューにも答えてくれた渡邉氏。
キュートな作品のみならず、その人柄にも目に見えない魅力がたっぷり詰まった人物だった。
booworks | 代表 渡邉 航一郎
1981年 大阪生まれ 大阪府豊中市在住
21歳、自称芸術家としてと活動をスタートさせる。何年か過ぎたころ、以前から興味のあった織物の体験講座に参加。糸が布に変わる瞬間を目撃し衝撃が走った。迷うことなく川島織物テキスタイルスクールに入学。
織物の事や織機の事を学び5年ぶりに大阪に戻り、友人らとブランドを設立。併行して染めの工場でも一年半修行。その後、昨年2010年にその染めの工場を辞め booworks をスタート。
現在はその独自の世界観をデザインに吹き込みながらひとつひとつ手織りという伝統技術で表現している。日本各地でのワークショップなど精力的に活動中。
編集後記
純粋にただただ手織りが好き、でもそれを押しつける事は決してなく、あくまでデザインあってのモノを作る。とても謙虚だけど情熱のある、ちょっとおちゃめな職人気質。
古い物が好きで、そこからヒントをもらい、懐かしさを残したあたたかみのある、新しいモノを作る。共感させてもらえるような喜びを感じさせてもらった気がする。今後も新作アイテムが続々入荷するとの事。またワークショップも精力的に活動されているので、合わせてウェブサイトでチェック!!
by makiko ueno