クレフテ 木村 幸紀男|INTERVIEW VOL.2
UPDATE : 2011/Nov/10 | AUTHOR :
第ニ弾は、大阪・中津の公園前から独自の空間演出を手掛ける設計事務所クレフテの主宰 木村 幸紀男氏に生の声を聞いた。
─── 始めたきっかけや原点について
木村: 「もともと22歳位の時にバーテンをやってて、その時のお客さんでインテリアデザイナーっていう職種の人がいて。 それがすごく楽しそうなお仕事で、色々ねほりはほり聞いていたんです。 でそのお話の中で、ある大先生の存在を知って、一回講義を聞いてみたら?っていうのがきっかけで行ってみたんです。 それでそれがスゴイ仕事やなって……こう……ズキュン!って撃ち抜かれて(笑)
UL: 「それまでにデザインのお仕事に興味があったとか、実際にやった事はありましたか?」
木村: 「一切やった事ないです。興味はあったけど、自分がそういう職種に入るとは思ってなかったです。 先生の講義を受けて本当にスゴイなって思って。…で、その時かな? 図面も書けないし現場の事も知らないし、デザインっていう事も解らないのに先生の事務所に勝手に行って….。 10回くらい行ったかな?『雇ってください』って。 まぁそれは断られ(笑)
で、そこからバーテンをしながら色々就職活動してたけど、専門学校も大学もでてないから雇ってもらえなくて。 なのでとりあえず現場を知ろうという事で、バーテンをしながら空調屋さんの職人さんの所でお仕事して。 そこが大きな空調屋さんで色々な商業施設とか大きな学校、老人ホームとかもやっていて、そこで機械図面なんかの見方を覚えたりしつつ。」
─── 現在のワークスタイルにしようと決断したのはいつ?
木村: 「それからバーテンを転々としながら、『もう自分でやったろう』って決めて6年前になるかな。 なんで師匠もいないしそれまで設計事務所で勤めた事もないです。」
─── 迷いや不安は?
木村: 「全くなかった。バカやったから…..イケイケやったから(笑) インテリアデザイナーって別に免許がないから、言ったらなれるでしょ? とりあえず名刺作って、インテリアデザイナーですって言いまくった(笑) 見積の出し方も知らないのに。
で、初めてやらせて頂いたお店が、こちらはタダでやらせていただいたんですけど、イタリア料理のgiada(ジャダ)さんっていうお店。 今のクレフテを始める前の7年前になるかな? クレフテの6年間っていうのは一人で始めて6年であって、もともとは3人で始めたもので。 その期間が1年あるけど、その時にやらせていただきました。」
UL: 「どうして独立しようと思ったんですか?」
木村: 「自分の看板が欲しかった。としか言われへんかな…? 人に雇われるのがあんまり得意じゃなかったから。」
─── アイデアはどのような時間の中で生まれますか?
木村: 「映画がすごく好きだから、見ている時に思いついたり。 例えばあるワンシーンの風景が格好良いとか。 ヨーロッパ映画だとしたら、あるボロボロの家の中の壁が格好良かったり。」
UL: 「オシャレと思う瞬間はどんな時ですか?またどんなモノを見た時にオシャレだと感じますか?」
木村: 「基本オシャレやなっていうのを感じないから…人を見ては思うけど。 デコラティブなものよりも、機能的であるもの、意味があるもの、こう見せたいんだろうなあとか… こういう意図でやっているんだろうなって思えるものを見たら上手いなっていうか。 それがオシャレに繋がるのかなぁ。」
─── 誰かの影響を受けましたか?誰で、どんな?
木村: 「インテリアデザイナーの倉俣史朗さん。ユーモアのあるデザインをされる方で。 デザインに対する考え方が好きかな? あとはバウハウスにも影響を受けている所があって、モダニズムと言うか。 他には『Less is more.』っていう言葉を残したミース・ファン・デル・ローエにも影響を受けてる。 彼の設計した世界遺産のトゥーゲントハット邸も、ミニマムだけどよく知られている家で。 シンプルだけど機能的なもの、っていうのが自分の中のテーマかな?」
─── モノ選びの基準やこだわりは?
木村: 「シンプルで使いやすい物。バランスが良い物。 だから家に何もないもん。」
─── 最近買ったお気に入りのものは?
木村: 「Paul Christiansen(ポール クリスチャンセン)の『NON2000』っていう椅子。」
UL: 「それは自宅用ですか?」
木村: 「いや、店…観賞用かな?そこにあったら落ち着くっていうか…。」
──── この場所に決めたのは?
木村: 「公園の前を探していただけかな? もともとはお寿司屋さんで、ボロボロやったんやけどたまたま見付けて。 公園の前ならどこでも良くて、最初は靱公園の方も探してたけどね、、、高かったし。」
──── 普段お仕事の日の一日の過ごしかたについて
木村: 「仕事のスタートは、デスクワークに入る前にお客さんとのディスカッションが先で、それに一カ月以上かかってしまう場合もあるから。 それでやっと自分なりにスケッチなり、図面なり書いて打ち合わせをして、fixできたら図面に取り掛かって。 図面を書き出したらデスクにかじりついてるかな。 で、そのディスカッションの時に素材選び━例えば石を探したり、木を探したり、資料集めに没頭してる。」
──── 好きな音楽は?
木村: 「好きなアーティスト…日によって違うからな…。 あ、でも初めてテクノをやったって言われてるクラフトワークは崇拝してる。 クレフテっていう名前もクラフトワークが好きで、色々調べてたら出てきた言葉で。 意味を調べたらドイツ語で『力』っていう意味で、おっ、格好良いって思ってつけた名前やし。 あと、最近ではベイルートも好きでよく聴くかな。」
──── ジンクス 座右の銘はありますか?
木村: 「積極的に明るく生きる。 積極的に明るく生き、辛い事、悲しい事を自分の糧にして行こうみたいな…。 こんなん初めて人に言った…はずかし…。」
──── 健康や食べ物?
木村: 「あると思いますか?気を使ってないです。 一日一食やし、昔からずっとそうで。 呑みたい時に呑み、食べたい時に食べてます。」
──── 木村さんにとってエコな物、事を教えてください
木村: 「紙は大事にするかな。スケッチ用にミスプリは必ず置いてる。 エコ…..食べ物は残さないとか…。」
─── 最後に…
UL: 「木村さんから周りに発信していきたい事はありますか?」
木村: 「自分がないっていう訳じゃないけど、なんかこう…クレフテっぽいデザインになってしまうから…それが自分がないって事かも知れないけど…。 色んな色に変われるカメレオンのようなデザイナーでいたいから、自分発信と言うよりか人から求められたいかな。 仕事に対しては、自分がこれを作りたいって言うものがあんまりなくて。 でも自分の個展は一度やってみたいなって思ってます。 作りたいプロダクトであったり、変な素材を使って空間を作るインスタレーションのような事とか。」
UL: 「クレフテらしさってどんなところだと思いますか?」
木村: 「何かな…。ずっとおもろい電波は張っておきたいって思ってる。 純粋にインテリア事務所であって、空間設計事務所であって、プロダクトデザイン事務所でいたい。」
─── インタビュー終了。
UL: 「今日はお忙しい中、どうもありがとうございました。」
木村: 「いえいえこちらこそ。どうぞ宜しくお願い致します(笑)」
WORKS
煙草屋珈琲|
2009年7月 店名 / 煙草屋珈琲(喫茶店・自家焙煎・煙草屋)
club Bank
2009年8月 店名 / club Bank
DOWN to EARTH
2009年12月 店名 / DOWN to EARTH(靴販売・ファッションセレクトショップ)
空夢箱
2010年10月 店名 / 空夢箱 (カフェバー・ギャラリー・古本販売)
kräfte クレフテ | 主宰 木村 幸紀男
〒531-0071 大阪市北区中津3-18-1
tel/fax:06-6375-8368
mail:information@mdnc-krafte.com
編集後記
物を物体として捉えるというより、広い空間の中で感じる。 デザインする事が好きだから、色々な物を見て、触れて、自分の中に落とし込み追求する。 機能面を兼ね備え造り出されたモノ・空間は、『シンプルで使いやすいもの』と言う一言では表現しきれない、木村氏が造り出す新しい世界観が広がっている、そんな風に感じた。
また来年には、1階のギャラリースペースにて、第二回目となるクレフテ企画の展覧会も開催される予定との事。 映画が好き、映像が好きという思いから、各方面から6人の映像作家さんを集めて行われるこの企画。 今からとても気になるイベントの一つだ。
また1階は、このギャラリースペースに併設されるように夜はBar「セド・クレフテ」も営業中。 クリエイターだけに止まらず様々な業種の人達が夜な夜な集うこの場所で、時々公園を眺めつつゆったりお酒を飲んでみるのもおススメ。 仕事終わりの木村氏をキャッチできるかも。
by makiko ueno