INTERVIEW

mosimosi 奥むつみ&坪井湯湯|INTERVIEW VOL.5

UPDATE : 2012/Apr/20 | AUTHOR :

色で遊ぶ異色のテキスタイルデザインユニット
関西から世界に向けて新たなムーブメントを発信する若手プロフェッショナルにスポットを当てたインタビュー企画。
第5弾は、テキスタイルデザインをベースにオリジナルブランドを展開中のユニットmosimosiのお二方。

────── まずお二人はどのように出会われたのですか?

奥氏:「高校の同級生です。卒業して二人とも同じ京都の芸大に行ったんです。専攻は違うんですけど。」

 

────── 大学生活の中で“二人で何か始めよう”となったのですか?

坪井氏:「大学の時はあんまり一緒に何かをしたりだとかしてなかったんですけど、それぞれ卒業して学生じゃなくなってから大阪と京都でそれぞれ仕事をしたり、個人個人で活動を続けていて。言いだしっぺは彼女の方…やんな?忘れもしない会合を(笑) 当時、grafのソクラテスがまだ3Fにあったとき、そこで『何か一緒にやらへん?』ってなって。」

 

色で遊ぶ異色のテキスタイルデザインユニット mosimosi

 

────── “何かオモロイ事を二人でやろうや”そんな感じだったのですか?

奥氏:「個人での創作活動は今もずっと継続してるんですけど、今までそれぞれがやってきた事をもう少しお金を得る手段として現実的な形にする為に、二人で組んだら楽しいかなと思って。現実的といっても基本的に個人活動の延長で好きな事やってるだけですけど。」

 

────── 何がきっかけでモノづくりの世界へ?

奥氏:「大学が芸大だったんで。元々、私は美術系の大学に行くつもりは一切なかったんです。そんな選択肢があることすら知らなかったし。高校で彼女と、もう一人友人がいたんですけど、彼女たちはその当時から芸大に行く事を目指していて、私は『何それ?』っていう感じだったんです。でも話を聞いているとすごく楽しそうで。小さい頃から絵を描いたり、モノを作ったりする事は好きだったので、じゃあ私もやってみようかな?と思って大学に入りました。」

坪井氏:「彼女のそういう部分も、実は最近聞いて。元からそういうのが好きな人だと思っていました、私は。」

奥氏:「趣味の範疇でやってきてた事とそれを公の場で人に見せるという事が繋がらなかったんです。それを意識し始めたのは大学に入ってからですね。」

 

mosimosi 奥睦美&坪井湯

 

────── そこからのめり込んでいった、という感じですか?

坪井氏:「のめり込むと言うより流れで、そのまま続けてるっていう感じです。」

奥氏:「うん。なのできっかけは特にないですが、『へー、おもしろそう』っていう所から大学で出会った友達から受ける刺激や日々自分の中にあるイメージを表現する作業(訓練?)とか、いつの間にか作品を制作する事が自分の中で自然な事になってました。学生時代はあまりまじめではなかったのでさぼってばかりいたんですが、この頃のやわらかい脳みそで吸収した感覚や経験が確実に今に繋がってると思います。」

 

────── アイデアはどんな時に浮かびますか?

奥氏:「私の場合は、何かヒントを見た時ですね。例えば風景であったり、誰かの作品であったり、そういう時に“あ、これはこういう風にできるかも”って。何もない所から生み出すのはあまりできないんで…何かを見た時にピンってくる、そんな感じですね。」

坪井氏:「私はどちらかと言うと熟成タイプ。色々見てても結構何とも思わない(笑)“ふーん”って思ってるんだけど、でもその時に何らかのフィルターをかけてて。必要なモノを見てはいるんだけど、あまりその時点でピンってくると言うよりは、それから1 年 2 年 3年 4 年経って、“あぁ、こういう感じかな”って作品化したりします。」

 

色で遊ぶ異色のテキスタイルデザインユニット mosimosi

 

色で遊ぶ異色のテキスタイルデザインユニット mosimosi

 

────── お二人って真逆なんですね。

坪井氏:「そうなんです(笑)彼女はパワーと瞬発力担当で。」

奥氏:「そこを『まぁまぁ…』と彼女が押さえてくれるんです(笑)」

坪井氏:「基本は友人関係なんですけど、性格は本当に真逆だと思います。」

 

色で遊ぶ異色のテキスタイルデザインユニット mosimosi
────── ブログを拝見させていただいたのですが、海外の写真や山、大自然の写真などが印象的だったのですが、アイデアとなるものを探しに行かれているのですか?

坪井氏:「mosimosi を始めようって決めてから、一度展覧会を開いたんです。その後二人ともお金がなかったので、一年間位二人でお金を貯めてから始めようじゃないか、っていう約束をして、私は山小屋に働きに行ったんです。その選択には、単にお金を貯めるぞ!という理由以外ほかになかったんですが、結果的には、それまで自分に欠けていた要素というか、生きていくために必要な色んなことを、そこで学びました。

表現することの手前にあること、たとえば自然というものは全力で立ち向かっていって、それでも負けるものであって、人間に守られるようなもんではない、ということであったり。同時にめちゃくちゃ器のでかい友達のような部分もあったり。今そこの小屋に初めて働きに行ってから4年目なんですが、何回会いにいっても、山に広い心で受け止めてもらってるような感じがします。こういうかんじを作品に反映させたりできるようになるんは、もっと先だと思いますね。あと、旅行はめっちゃすきです。すぐどっか行きたくなります。

 

mosimosi 坪井湯湯

 

────── mosimosiさんとしてのコンセプトはどのようなものですか?

坪井氏:「基本的には生活のグッズを作る、っていうところです。買ってくれたひとに、生活の中で楽しんでもらえるものを作りたい。どんなときでも、生活を楽しむことを忘れないでいたいし、そうなってもらえたら、と。」

奥氏:「mosimosi(もしもし)と言う言葉はまず会話の始めにくる言葉で、そこからコミュニケーションがはじまると言う事。私たちがつくるものがそんな風に人と人をつなげる物でありたいっていう思いがあるので、基本日々の生活で使うものをメインに制作しています。例えば、実用性は全くないけど部屋におきたいと思うような何かおもろい変な物とかも含めて、仕事の幅を固定するのではなく色々な分野でやってみたいですね。今、興味あるのは店舗や住宅の内装なんかに関われたらなあと思ってます。」

 

色で遊ぶ異色のテキスタイルデザインユニット mosimosi

 

色で遊ぶ異色のテキスタイルデザインユニット mosimosi

 

────── 独特のカラフルな色遣いが個性的でとても可愛い!というのが作品を見た時に一番印象に残っています。

奥氏:「私逆にパターンがなさ過ぎるって思う。自分で作るモノって全部一緒の色だって思うんです。それがいつも気になるんです。」

────── そんな風には全く見えないんですが…

坪井氏:「私もそうは思わないですが。でも彼女、色にはうるさいんですよ!(笑)発色とか組み合わせの事だと思うんですが、とにかくうるさいんです。でもやっぱりmosimosi は、色にはこだわりたい部分はあって、それで生活を賑やかしたいねっていう感じです。」

 

mosimosi 奥睦美&坪井湯湯

 

────── 手作りにこだわる部分はありますか?

奥氏:「特にないです。正直な所お金がないから手作りにしているだけです(笑)もっと量産とか大きな仕事がしたいんですけど。でもやっぱり、ろうけつ染めをやっていると大量生産にはない独特の風合いとか発色とか味があるし実際手を動かして地味な作業をコツコツする事の快感も知ってしまってるので、やめる事はないと思います。でも今後は両立させていければとも思っています。」

坪井氏:「元々彼女は染色専攻で、私は版画専攻だったんですけど、何でも手作りが基本で、それしか能がないんです(笑) 他に知らないし、自分で作ったらええやんってなっちゃうんです。作家っぽいカッコいい事が言えなくて申し訳ないです。」

 

────── 誰かの影響を受けたり、今の活動に繋げた出来事などはありましたか?

奥氏:「特定の人と言うよりは、私は人形も作るんですけど、人形に関しては民芸や古いインディアンやアフリカ、メキシコなんかで見られるフォークアート。普通のおばちゃんやおっちゃんがつくる直感的な形や表情や色使いに凄くパワーを感じるんです。なので私も人形に関しては下絵は一切描かず即興でつくります。その方が予想外のものができあがったり、自分の心理状態が現れてるようにみえたりしておもしろいのができますね。」

 

色で遊ぶ異色のテキスタイルデザインユニット mosimosi

 

mosimosi 奥睦美&坪井湯湯

 

────── 自分の身の回りのモノなど、モノ選びの基準はありますか?

奥氏:「私は単純にピンときたもの。何かを買いに行ってもピンとこない日は何も買えない、買いたいのに…。でもピンピンピン!ってきた時は大変です(笑)自分の周りのモノに関しては、彼女の方がこだわりは強いと思います。」

坪井氏:「私は、嫌いなモノが自分の周りにあるのが本当に嫌なんです。どんなにボロボロでも、気に入ってたらいいんです。インドネシアに行った時も彼女に、『ようそんなタオル使ってるな。雑巾やん。』って言われて… 基本的にはボロボロであるとか、可愛いとかって言うよりは、とにかく好きなモノじゃないとダメです。フィーリング大事!」

 

────── お二人でやられていてぶつかってしまう事はありませんか?

奥氏:「基本ぶつかるので、あまり一つのモノを一緒に作るような共同作業はしてないです。お互い持ち寄ったモノを組み合わせてこうしようか、とか。それぞれがつくったモノを mosimosi として販売する事が多いです。」

坪井氏:「例えば道具を兼用できるだとか、二人の方が作業的に色々メリットがあって。WEB サイトにしても 1 個ずつ作るのも邪魔くさいし、イイとこ取りしたらいいかなと思って。なので二人でべったり作り込んでる訳じゃないです。」

 

mosimosi 奥睦美

 

────── ワークショップも勢力的に行われていますね。参加された方にどんな事を感じて欲しいですか?

奥氏:「楽しんでもらえたら、っていうのが一番です。ほとんどの方がやった事ないと思うので。」

────── 私みたいな不器用な人間でも参加して大丈夫ですか?

奥氏:「そう言うのも関係なく楽しめると思います。鉛筆で字が書けたら大丈夫です。」

坪井氏:「日本だと“上手くやらな…”とかあるじゃないですか。絵が下手な人は描かなかったりだとか。そういうのを超えて純粋に楽しくて。」

────── 上手く描こうと思わなくていいんですよね?そう言ってもらえると気が楽になります。

坪井氏:「そういう純粋な喜びインドネシアで久し振りに思い出した感じでした。とにかく楽しいし、楽しんだらいいやん、そんな風に。」

 

mosimosi 奥睦美&坪井湯湯

 

────── これからの展開について、具体的にお考えですか?

奥氏:「やっと半歩出た位なので、やる事は一杯あると思います。全然まだ何もできてないから、こうやって取材を受ける身分でもないと思います(笑)」

坪井氏:「とりあえず来年、またインドネシアに行ってきます。自分達が技術をまず身に付けないといけないと言う事で。日本が寒い季節にもう一回行ってきます。ここでは寒くて作業できないから。そうやって技術を身に付けて、また見えてきた方向へと向かっていこうと思います。」

奥氏:「方向性は見えてるんですが、そこに行くまでにやるべき事をまだ全然できてないんで、それを一個一個やって行きます。」

 

色で遊ぶ異色のテキスタイルデザインユニット mosimosi

 

色で遊ぶ異色のテキスタイルデザインユニット mosimosi

 

色で遊ぶ異色のテキスタイルデザインユニット mosimosi

 

色で遊ぶ異色のテキスタイルデザインユニット mosimosi

 

────── 最後に、読者の方へメッセージなどがあればお願い致します。

奥氏:「4/28 4/29にワークショップをするので、是非遊びに来てください。」

坪井氏:「これから月に一度位やって行こうと思ってるので、いろんな方に来てもらいたいです。」

 

────── 他にはありませんか?

坪井氏:「メッセージなんて…おこがましいです。むしろ私が欲しいです(笑)」

奥氏:「ヒントなんかもあれば…(笑)」

 

mosimosi 奥睦美&坪井湯湯

 

mosimosi

2009年結成の奥むつみ+坪井湯湯によるプロジェクトユニット。

2011年より大阪市西成区にスタジオを構え、テキスタイルデザインをベースに服や布、

鞄など身の回りを楽しく彩るアイテムでオリジナルブランドを展開中。

http://mosimosi.cc/

 

奥 むつみ blog

1979年大阪生まれ

学生時代よりろうけつ染め、シルクスクリーン、

刺繍といった様々な表現方法でつくられた布や人形などを使ったインスタレーション作品を発表

 

坪井 湯湯 blog

1979年大阪生まれ

学生時代はソフトビニールを使った版による布のプリント作品を発表

卒業後デザイン会社、山小屋勤務ののち独立

現在は、ろうけつ染め、印刷など、様々な技法を使って紙や布にプリントする作品を制作

編集後記

眺めていると、ゆっくりとワクワクが込み上げてくるような可愛いモチーフや色遣い。
性格も感性も全く異なる二人に異色ユニットが繰り広げる、ちょっと不思議な夢の世界に迷い込むような。

どこかキッチュだが生命力も溢れる作品の数々は、見ているだけでも楽しめるが、
自分のライフスタイルにも取り入れたくなった。

ある瞬間から気になってしまう、そんな静かな存在感を放つmosimosi

次はどんなモノを生み出すのか、お二人の今後の活動は勿論、ワークショップ情報からも目が離せなくなりそうだ。

by makiko ueno

Camera / toshinori cawai

RECENT OTHER