
ハニカミ写真館|REPORT vol.17 前編
UPDATE : 2014/May/06 | AUTHOR :
兵庫県川西市にある予約制の古本屋 books + kotobanoie店主 加藤博久氏による、ある写真のプロジェクト。
先月4月27日に開催された、第7回目となる「ハニカミ写真館」に密着した。
今回撮影の舞台となったのは、こちらも川西市にある築200年の日本家屋をリノベーションしたcafe & gallery スペース HANARE(現在は休業中)。
写真家によるポートレイトをモノクロフィルムで撮影し、手焼きでプリントして届けるといったものだ。
books+kotobanoie同様、撮影会は予約制。
1日6組限定、そして不定期開催ということで予約待ちの人も数多い。
運良く予約ができた場合、開催が近づくと手作りによる1枚の招待状が届く。
そう言えば、毎月届く何かの封筒じゃない、手書きの宛名の手紙が届くことさえ随分昔以来じゃないかと、
そんなことを思いつつ封を開けると、今回はこのような内容が綴られていた。

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兵庫県川西市にある築200年の古民家「HANARE」で開催する「ハニカミ写真館」の撮影会に、あなたをご招待いたします。
データではなく、フィルムに残された光と陰として写真を残す。
モニターではなく、印画紙に焼き付けられたプリントとして写真を見る。
写真家に撮ってもらう、未来に残すためのポートレイト。
自分のために、大切な人のために。
(途中略)
「ハニカミ写真館」にようこそ。
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ハニカミ写真館のロゴを模った、可愛らしく、人の手を感じさせる招待状。
これから撮られる1枚1枚へ意気込みが増すと同時に、気持ちの良い緊張感も生まれる。
朝から清々しく晴れた撮影当日、まだ1組目が到着する前に会場で待っていると、しばらくして少し緊張した面持ちの一家族がやってきた。
ちょっとした小旅行気分を味わえる道のりを経て会場入りすると、出迎えるのは白衣のハニカミ軍団。
主催の加藤博久氏、カメラマンの多田ユウコ氏、設計士の蓮池亜紀氏、イラストレーターの玉村ヘビオ氏という異色のチームだ。
一瞬、さらに緊張感が沸き上がりそうだが、息を整えるとさっそく加藤氏とのセッションが始まる。


テーブルに向かい合って座り、その日一日の流れや、希望する写真の話、何でもない話など。
少し離れて見ていると、秘密の契約でも交わしているかのようで、こちらまでドキドキしてしまう。
そして撮影が始まる。
シャッターチャンスはたったの12回。焼き上がり、最終手元に届けられるのは白衣の軍団が選んだ1枚のみ。
カメラを向けられるだけでも体が硬くなってしまいそうだが、たった12回しかトライできないとなるとそれも尚更。

カメラを覗き込む多田氏、レフ版を構える玉村氏、全体の流れをディレクションする蓮池氏、その様子を眺める加藤氏、
そしてシャッターが押される瞬間を待ち構える被写体。







ある意味、覚悟を決めてのぞまなければいけないのだが、その風景を眺めていると、何故かこちらが微笑んでしまった。
撮る側、撮られる側が一緒になって、最高の一瞬を切り取るセッション。
気付けばそれまで硬かった表情は自然と柔らかくなり、会話と笑顔が生まれる余裕も出てくる。
午前中に2組の撮影を終えると、参加者同士でのお弁当休憩を挟んだ。
この日の昼食は、奈良県にある「ごはんやハレ」の季節のお弁当。
ピクニック気分で木陰でお弁当を広げる人、庭を眺めながらゆったりと会場で楽しむ人。
気が付けば子供達は駆け回って遊び、とても和やかな時間だった。


これからの自分のために、未来の大切な人のために、今を切り取り、今の自分を残し、そして今を知る。
携帯でいつでも簡単に写真を撮ることができる時代になってから、モニター越しでしか自分の姿を見なくなってしまった人も多いと思うが、
写真家と一緒に作り上げるという、少し前までは身近だった一連の作業を体験し、それぞれが感じたのはどんなことだろう。
形として写真に残すということ。
ただそれだけのことだが、この短い時間の中では色々なことが駆け巡ったのではないか。
自然と思い浮かんだ誰かの顔があったかもしれない、ある遠い記憶を思い出したかもしれない、
そして何より自分自信と素直に向き合えていたかもしれない。
たった1枚に記録されるのはその瞬間だけではなく、そんなたくさんの想いに溢れていたのだろう。


撮影が終わると、現像、編集、プリントと、こちらも全てアナログな手作業で行われるため、
手元にこの日の写真が届くまでには少し時間もかかる。この時間さえ楽しめてしまうのだ。
「自分たちが楽しくなければ意味がないから」と話す加藤氏。
その言葉通り、一番うまくハニカんでいたのは白衣の軍団だったのでは。

そんなおとなのための写真館。
少しハニカんでみたくなりましたか?
後編へつづく・・・

ハニカミ写真館
Equipment : Hasselblad 500CM / Carl Zeiss Planar T* 80mm/F2.8
Film : Kodak Professional T-MAX400 TMY120
Paper : ILFORD MG4FB 8X10
personnel is 加藤 博久 / 多田 ユウコ / 蓮池 亜紀 / 玉村 ヘビオ
produced by BOOKS+コトバノイエ(www.kotobanoie.com)