INTERVIEW

SEN tomoco tagawa|INTERVIEW vol.7

UPDATE : 2012/Sep/04 | AUTHOR : makiko ueno

その人の生活に根付きたい、時を超えられるモノにしたい。
関西から世界に向けて新たなムーブメントを発信するプロフェッショナルや、様々な場面で活躍するアーティストにスポットを当てたインタビュー。

第7弾は、大阪北浜にアトリエを構える服飾作家 田川朋子氏にお話を伺った。

────── ファッションの世界に入るきっかけはどのようなものでしたか?

 

田川氏:元々は漫画家、絵描きになりたかったんです。絵を描いて暮らしていきたかったけど、学校に行って、卒業して、就職するっていう、親に対する言い訳みたいなものが欲しくて。イラストレーターになるというか、そのイメージすらなかったんですけど、その頃、ファッションデザイナーってデザイン画を描いてるだけの仕事だと思ってたんです。それだったら親に就職できるって言えるでしょ?だからファッションの専門学校に行ったんですが、これも当然な話なんですけど、絵を描くだけじゃなくてモノも作らないといけなくて。学校を卒業して、一旦就職したものの、やっぱりやりたい事ではなくて、結局辞めてブラブラしてたんです。そんな時に、学校の先生からお誘いがあって。スタイリスト学科を教えに来ているスタイリストさんがショップを持つと、丁度インディーズブーム真っ只中だった頃で、色々な学生の服も扱うような感じだったので、「田川さんも作ってみない?」って言う風に。それで私も作ってみたら楽しくて。それが始まりです。

 

SEN tomoco tagawa|INTERVIEW vol.7

 

────── 最初から服を作る、という感じではなかったのですね。

 

田川氏:当時18才で、ファッションとか本当に全然興味がなくて、ブランドも全く知らない状態で入学しました。自分の服も大型の量販店で買う位で、ファッションの“ファ”の字もない所で育ってきてるので、ビックリする事ばかりでした。

 

 

────── 自身のブランド名「SEN」にはどのような想いが込められていますか?

 

田川氏:特別にこだわりはないんですけど、自分の名前の中の1文字を使いたかったんです。“月”っていう感じもすごく好きなんですけど、“月”自体が持ってるイメージが強過ぎる気もして。

 

SEN tomoco tagawa|INTERVIEW vol.7

 

────── 独立するにあたり、不安はありませんでしたか?

 

田川氏:そういう気合いみたいなものじゃなくて、一番最初は帽子を作って古着屋さんに置いてもらったりするところから始めたんです。本当に何も知らないから、「納品書とかいるんやで」って言われて、書き方をお店の方に教えてもらったりしてました。その時の古着屋さんが神戸にあったんですが、震災があってからお取り引きできる状態ではなくなってしまって。結局取引先がなくなってしまって、どうしようかなって思ってた時に、さっきお話したセレクトショップのお話をいただいて。

 

 

────── とても自然な流れなんですね。

 

田川氏:多分流されてるんです。その後は「大コレに出る?」って誘われて、「じゃあやります。」っていう感じで流れて。自分がやりたいって別に思わないのに、もの凄く後ろから押されてる感があって、「やらなあかんの?じゃあやるけど。」位の感じでやってたんです。『座頭市』のお仕事とかも、呑み友達が紹介してくれた方からお話をいただいたり、SOPHIA(ソフィア)の都 啓一(Keyboard)君のライヴ衣裳も、たまたま彼が同級生だったから…とか。本当に今までは自分から営業をかけた事がなかったんで、今度は少しずつ働きかけて行こうと思ってるところなんです。

 

SEN tomoco tagawa|INTERVIEW vol.7

 

────── アイデアについて、参考にしているものはありますか?

 

田川氏:私、辞書が好きなんです。古語辞典がすごく好きで、あとは四字熟語辞典、字の成り立ちの本なんかも。こういう言葉一言でイメージを湧かせると言うか、言葉・文章からひらめく感じなんです。

 

 

────── 文字をデザインに変換するという感じなのですか?

 

田川氏:いや、文字のイメージで物語を書くんです。で、それを服に落とし込む。まずソースがあって、何かピックアップするものがあって、それを軸に自分の中で物語を書いて、それを服に落とし込むから、同時進行で布を探すんです。文章にしてしまわないと、例えば“こんな感じで”とか、“こんなイメージで”とか、ひらめいた“ある単語で”とかだと、ボキャブラリーがあんまりないので伝わらないんです。小さい頃から本を読む事、読んでイメージする事が大好きで、でもそのイメージとか物語を漫画にできなかったから服に落とし込んでるんだと思います。これでもし、私が絵が上手くて、そういう才能があったら漫画家になってたかも知れないし、映画を撮ってたかも知れない、できないから今は服を創る、そんな感じです。でもストーリーは完結しないんです。後はお客さんに投げかける感じにいつもなるんですけどね。

 

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────── モノ創りをする田川さんにとって、自分のモノを選ぶ基準やこだわりはありますか?

 

田川氏:つい最近まで、あまり自分で創ったモノを着ようと思ったりはしなかったんです。自分が創った時のイメージ、それではなくなってしまうんじゃないかと思って。でも今は、着られるモノは着ていこうと思っています。選ぶ基準は、まず自分に似合うモノ、自分らしさが出るモノ、っていうのが基本です。オシャレとか、ファッションって呼ばれる所から自分が出てきてないから余計だと思うんですけど、自分が着るとなったら似合うか似合わないかだし、お客さんに買ってもらう時も、そういう基準で売りたい。自分のライフスタイル、持ち味、欠点も長所も含めて出せる、それが“似合う”っていう事だと思うんです。今の人達は自分をあまり見ていないような気がします。自分らしさ、自分の内側とあまり対話していないような気がして。例えばアクセサリーを買う時だって、着けてるのはその部分だけだけど、全身を映して合ってるかどうか見て選びませんか?そういうのがない気がするからチグハグになるんでしょうね。

 

SEN tomoco tagawa|INTERVIEW vol.7

 

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────── 舞台衣裳など数多く手掛けられているイメージがありますが、主にデザイン・制作されているのはどのようなジャンルのモノが多いですか?

 

田川氏:よく舞台衣裳って言われるんですけど、実はあまりやってなくて、舞台のパンフレットとかポスターの方が多いです。いわゆる舞台のビジュアル系ですね。

 

 

────── 広告系、いわゆる衣裳と呼ばれるモノを創られているイメージも大きいです。

 

田川氏:それは多いですね。なんかね、作って、売って、「はい、もう春夏終わったからセールして次…」そんなサイクルが途中ですごく嫌になったんです。だって、一つ一つすごい想いをかけて創ってるのに、シーズンが終わったっていう、ただそれだけの理由でそんな扱いされるのかと思って。じゃあそれが嫌なら何をすれば?と思ったら、写真になって残るとか、広告やパンフレットになって残る衣裳を創っていこうと思って。自分で創って売るっていうのは、あまりしないでおこうかなと思ったんです。

 

 

────── なるほど。量産されるお洋服ではなく、衣裳を主に制作される理由はそこにあったのですね。

 

田川氏:最終的には映画の衣裳をやりたいんです。でも何をしたらいいか分からなくて、遠回りだけど舞台系の衣裳をやらせてもらったり。でも、今はとりあえず、この場所を構えたからには売っていかないと自分も食べていけないので、じゃあ売るっていう事をちゃんと考えてやっていこうと思って、動き出してはいるんです。少し遅いですけどね。でもセレクトショップさんだけだと、どうしても古いモノ、去年のモノを扱ってもらうのは難しいと思うんです。でも、自分でショップを持つとなると大丈夫でしょ?そんな理由もあって、来年1月から、このアトリエの上の一階をショップにする事にしたんです。ギャラリースペースとショップスペース、どうしても外せないバースペースも併設して(笑)

 

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────── ご自身の制作活動以外に、ご出身の専門学校で講師もされていますよね?

 

田川氏:モード学園を卒業してしばらくしてからなので、12~3年になりますね。デザイン画を教えていたんですけど、今は後期だけ立体造形を教えています。学生からは先生と思われてないですけどね。「先生、呑みに行こうやー」って。“先生”っていうあだ名みたい(笑)

 

────── 講師もしながら自身のブランドも制作される、大変ではありませんか?

 

田川氏:大変ですよね。20代の時は自分でもコレクションをやって、お店にも卸してた時期もあったり、プラス学校にも教えに行って。20代じゃなかったらできなかったと思います。

 

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────── 創られる服を通して、発信したいメッセージのようなものはありますか?

 

田川氏:私、手を入れてみたくなる服が好きなんです。女の人の体って奇麗でしょ?何と言うか、人間って色気がないと衝動・やる気みたいなものが出ないと思うんです。その色気を醸し出したい。ゆっくり沸き上がってくるような、モヤモヤしてしまうような、隠す事によって見えない部分を想像させると言うか。メッセージと言うよりは色っぽさですね。

 

 

────── 男性・メンズの場合はどこに色気を感じられますか?

 

田川氏:それが、今創ってる殆どのモノが、男女どちらでも着られる感じになってるんです。サイズ面はありますが、それ以外では大体どちらが着ても格好良いモノがいいなと思って。それは男女共通とかそういう言葉ではなくて、どちらが着ても美しいっていう意味なんです。ただ女性の方がより美しく見えるとか、男性の方がより色っぽく見えるとか、そうなればそれはそれで良いと思いますし。だから男性はこうすれば格好良いんじゃないかって、まだ意識して創ってないんです。男性が一番格好良いのはスーツだと思ってるから。一応イメージはどちらかで創ってるけど、“ユニセックス”っていう言葉でもなく、男性にと思って創っても、女の子が着ても可愛いよねって、そんな感じなんです。

 

SEN tomoco tagawa|INTERVIEW vol.7

 

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────── 四角いパーツのみで服を創る事へのこだわりとは。

 

田川氏:最初はパターンも引いてたんです。だんだん省略していくというか、造形をつくっていこう思った時に、制限があった方が楽しかったんです。カーブで切らない四角いパーツで、どこまでの立体ができるか、それが楽しかったんです。発想は着物の帯なんですけど、帯ってあんなに単純なのに、すごく色々な形に結べるでしょ?そういうものになれないかな、と思って。建物なんかにしても、日本の美しいものって大体直線から造形ができてるから、ソレを服でやりたい。後、布はなるべく切り刻みたくないんです。ちょっと恥ずかしいんですけど、布を好きになって、布に恋してモノを創るから、なるべく切りたくないんです。必要最低限のハサミを入れて、必要最低限の所だけを縫って、形にしてあげたいんです。

 

SEN tomoco tagawa|INTERVIEW vol.7

 

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────── 今後の展開は具体的にお考えですか?

 

田川氏:今の所は、組み合わせに使える定番商品をいくつかは作っていこうと思っています。あとはみんなが手に入れやすいモノも作るけど、一点モノで良いモノ、そんな高級っぽいラインも来年あたりから考えています。

 

 

────── 田川さんにとってファッションとは?

 

田川氏:ファッションにしても私が創るモノにしても、生き様だと思ってて。生きてる私の歴史であったり、その人の生きてる証であったり。着せられてる感というよりは、“着てる”、“自分で選んでる”っていう想いでいて欲しい。モテたいとか、人から見られてどうだとかじゃなくて、自分をいかに魅力的に見せられるかっていうのがファッションだと思うので、自分をまず知る事、自分の魅力をいかに出せるかっていう部分で選んで欲しいなって思います。ブランド名だけで買っちゃったり、今みんな持ってるしとか、いいと思ってるけど、本当に欲しいかどうか分からず買ってしまうのじゃなくて、本当に“自分に似合う”と思うかどうか。

 

SEN tomoco tagawa|INTERVIEW vol.7

 

────── 最後に、ご自身を“服飾作家”と位置づけていらっしゃいますが、“デザイナー”との違いはどのようなものなのでしょうか?

 

田川氏:どちらで呼ばれてもいいんですけど、以前ある人物とお話した事があったんですが、その方が言うには「デザイナーが自分の作ったものを作品と呼ぶ事が嫌、それは商品でしょ?」って。アーティストや作家が自分で創ったモノを作品と呼ぶのはいいけど、デザイナーはあくまで売る目的でターゲットも決めて作ってる、だったらそれは商品でしょ?って。それを聞いて、なるほどって思ったんです。私はSENのデザイナーであると同時に、自分のコレクションや衣装のように一点モノを創る時は、服飾作家でもあると思っています。私がつくるモノでその人の生活に根付きたい、時を超えられるモノにしたい。肩書きや呼び方が違っても、想いは同じです。10年経っても、20年経っても、私の服を着て欲しいです。

 

SEN tomoco tagawa|INTERVIEW vol.7

 

田川朋子 tomoco tagawa

 

兵庫生まれ。服飾作家。モード学園卒業後、自身のブランド「川(SEN)」を設立。01年春夏、01-02年秋冬と大阪コレクションに加。以降、全て四角のパーツで出来る、立体造形的な服創りによる作家活動を開始。ダンサー(益山寛司)やミュージシャン(mama!milk・波多野敦子)のステージ衣装を手掛ける等、他ジャンルのアーティストとのコラボレート活動も行う他、舞台「座頭市」のパンフレット用衣装や、CDジャケット、広告用衣装なども手掛ける。

 

「時代の流れに関係なくとうとうと流れているもの、そういう不変的な服であること、人が動いてはじめて美しい服となること」をブランドコンセプトに、立体裁断により創り出されるこれ等の服は、身体に寄り添い、まとわりつき、形をつくる。

 

Atelier / Office

http://www.tomocotagawa.com/

〒540-0031 大阪市中央区北浜東5-3 植田ビルB1F

TEL & FAX:06-4981-6112

編集後記

言葉一言から広がる想像。膨らんだ想像から綴られる物語。
物語をはらんだその服は、そこにあるだけで刻々とその表情を変える。
纏う事で完成する服は、その人自身を映し、そしてさらけ出す。
どのように完結するのか、その結末までも時を越えて変化する。

目に見えない空間を想像させられる造形の世界と、人に寄り添い根付くファッションの提案。
この美しく、時として壊れやすい、艶かしいまでの世界観、袖を通す事で味わってみて欲しい。
優しく包み込まれた瞬間、今まで気付かなかった、だけど持っていた自分の奥にある魅力を引き出してくれるかも知れない。

by makiko ueno

Camera / toshinori cawai

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