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hitofushi

UPDATE : 2011/Dec/29 | AUTHOR : makiko ueno

使う為に作られたモノ。用途があるという事。
靭公園から程近く、少し北に進むともう一つの小さな公園がある。
ちょっと自転車を止めて休憩してみようかな?そんな都会の中のゆっくりとした公園の側に、気になるお店を発見した。レトロな雰囲気を昔のまま残した木造の建物、小学校の教室にあるような大きなガラスの窓は、広い店内を覗かせてくれてワクワクする。

まず初めに、気になるお店の名前に込められた想いを、オーナーである田中氏にお伺いしてみた。

 

─── hitofushi: 「物を売るだけじゃなくて、日本の暮らしの中で大事にしていたものを次の世代に受け継いでいく、そういう場所にしたいっていうのが目的なんです。日本人は元々稲作が中心にあるので、季節の節目や人生の節目、そういう節目節目を大切にしてきたんです。同時に、稲を育て節目をもたらすお日様もすごく大事にしてきたので、お”日”様と”節”目で日と節(hitofushi)っていうのと、人生の節目のhitofushi。あと、このお店自体が、職人さんとお客様との節目であったり。何より、前の時代から次の時代への節目であったりだとか、そういう一つ一つの節目になりたい、そんな風に思っています。」

 

現代の私達が少しずつ忘れてしまっている昔では当たり前だった光景や、なんでもない一日の中で意識する事なく自然と大切にしてきたモノやコト。今ではそれを思い出してみる事すら難しいのかも知れない。

 

hitofushi|店内

 

お店を創めるに至ったきっかけを伺ってみた。

─── hitofushi: 「私の実家が奈良の吉野で、父親方が“吉野杉箸の卸問屋”、母親方が“吉野杉箸職人家”なんですが、町全体が吉野杉箸を伝統産業にしていたんです。大阪へ出てきてからは、ずっとグラフィックのお仕事をしていたんですけど、田舎に帰る度に、子供の頃聞こえてきていた機械の音や、お箸を外に干している見慣れた光景がどんどんなくなってきてしまっていて、このままだとこのお箸を作る伝統がなくなってしまうのでは・・・と不安に感じるようになりました。

自分はお箸で育ててもらったようなものなので、私に何か出来る事はないかな?って思った時に、自分が今までやってきたディレクションのお仕事を活かして、今の暮らしに受け入れられやすいような形で提案してみようと考えたんです。他の伝統産業の職人さんも継がせたいけど継がせられない、お箸と同じ背景を持っていて。 初めはいろんな形態を考えたんですが、地域を限定せずに、各地の職人さんの手仕事や背景を紹介していく形のお店にしようと思いました。」

 

毎日の生活にごく自然に使い慣れ親しんでいる道具達だが、hitofushiのアイテム達は何故だかその生い立ちを知りたい、そんな感覚に自然となる・・・。

 

hitofushi|店内

 

hitofushi|店内

 

hitofushi|店内

 

お店の一番のこだわりについても伺った。

 

─── hitofushi: 「言葉にするのが難しいんですけど・・・。“勿体ない”っていう言葉があるじゃないですか。でも今の“勿体ない”と昔の“勿体ない”は違うもので。職人の手で丁寧に作られたあるお道具があったとして、今の人はそれが『勿体なくて使えない』って言うんです。 と言うのは“使い捨て”の概念があるからで、使うと消費され、使うと捨てる、そう考えるからであって。昔の人は1つのお道具を1つの使い方では終わらなくて、その使い方が駄目になったら次のものに使って、また次のものに使って、3回位使い方を変えて使う、すぐに捨てるのは“勿体ない”だったんです。

それは何故かって言うと、昔って、全部のモノに神様みたいなものがいるって考えていたからだと思うんです。道具の元々の成り立ちとか、作られたバックボーンをしっかりお伝えする事で、モノに対する愛着とか、丁寧に使ってもらうとか、日本人が本来やってきた“丁寧な暮らし”を思い出してもらいたいと思っています。」

 

hitofushi|店内

 

hitofushi|店内

 

hitofushi|オーナー田中氏

 

そんなhitofushiでは、ワークショップも精力的に行われている。
そこでのモノ選びは、季節に必ず合ったモノが選ばれている。

─── hitofushi: 「お金を出せば買えてしまうんですけど、例えばお節句があればお節句用に、自分達で準備をしたり何かを作ってみるとか、暮らしの中でその季節らしい事をやってみようかな?っていう動機付けを与えられるようなものにしたいです。」

 

hitofushi|店内

 

ここでオーナーの田中氏に、他店にはないhitofushiの魅力を伺ってみた。

─── hitofushi: 「モノ選びについては本当にご縁と直感で選んでいるんですけど・・・。よく、好きなモノに囲まれて好きな仕事ができて・・・って言われるんですけど、私、雑貨が好きだからという理由でお店をしている訳じゃないんです。もちろん昔から、古い物や本物を使った手仕事のものは大好きなんですが、本当の原動力は使命感なんです(笑)・・・だから、きちんと伝えるために実際に職人さんにお会いしてお話を聞いたり、作っている工程も見て来ています。ここに置いてあるモノに対しては聞いていただければ色々お話させていただけると思っています。」

 

hitofushi|店内

 

hitofushi|店内

 

hitofushi|店内

 

手に取ってじっくり見たくなるような可愛らしい小物から、これは何に使うものかと興味が湧くモノなど、そんな不思議な魅力も詰まったアイテム達。セレクトする際のこだわりについては…

─── hitofushi: 「勿論、日本製で職人さんが作ったモノ、あとは“使う”っていう事が前提なんです。暮らしの中で一緒に生活する為の道具を主に扱いたいと思っています。元々日本人の生活は、自然と家の中に取り込む事はあっても、無意味に部屋を飾るような事はあまりなかったんです。例えばお花を生けたり、お軸を飾ったりっていう行為にも意味があったんですね。“用の美”っていう言葉がありますが、“使う道具である”っていう所にこだわっています。」

 

hitofushi|店内

 

hitofushi|店内

 

hitofushi|店内

 

hitofushi|店内

 

これからの展開については、年に数回、地域をピックアップした企画展も計画中との事。
それともう一つ。再来年を目標に、農業ツアーのようなものを計画中だそう。

─── hitofushi: 「日本で生まれ育っている中で、稲作、田んぼに関わるという事を絶対経験して欲しくて。私も数年前に、一年を通して経験してみたんですが、その後は色んな物の見方がびっくりする位変わったんです。とても衝撃的なことだったので、うちに来てくださるお客様にも是非経験してもらいたいなって思うんです。」

 

hitofushi|店内

 

hitofushi|店内

 

一年を通して稲作を体験された田中氏。どういったものだったのか、衝撃の中身が気になったのでもう少しだけ伺ってみた。

─── hitofushi: 「それまでの暮らしの中では、太陽があたたかいとか、春になるともっと太陽を浴びたいね、とか、曇りより晴れがいいとかお日様に対する感覚って、そう言う位のものだったんです。それが、まだまだ冷たい春先に、田んぼで作業しながら背中に感じる太陽は本当にやさしくあったかくて。『太陽ってありがたいなんやなぁ・・・これで、この温かさで農作物が育って行くんだ』って思ったらもう・・・。日本人の”太陽を特別に思う気持ち”とか”いろんなものに感謝出来る心”のルーツがココにあると感じて、日本に暮らす人としてこれは一度は経験しておくべきだと思ったんです。太陽がありがないなんて、当然のように頭でわかっているけれど、田んぼで感じるそれとは全然レベルが違う。太陽への思いは農業に携わる人にはかなわないと感じました。」

 

hitofushi|店内

 

 

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子供の靴を洗う棕櫚たわし / ¥840-

hitofushiオリジナル/子供の靴を洗う棕櫚たわし/¥840- 税込

 

 

information | hitofushi

www.hitofushi.com/

 

〒550-0003 大阪市西区京町堀1丁目12-28壽会館ビル1階

営業時間 : 11:00-19:30

TEL : 06-6225-7675

E-mail : hitofushi@nifty.com

定休日 : 日曜・祝日(その他不定休有)

編集後記

使う為に作られたモノ。用途があるという事。

モノに対して当たり前の事だが、モノが溢れる今、そのモノがどのように生まれたのか、どのように使われていたのか、
知る事が難しいだけでなく、知る必要性を求める人さえ少ないのかもしれない。
大量生産された輸入品の陰に消されてしまいそうな、昔から伝わる道具や職人の技。
それを探してみる、また知りたいと思うだけでも、毎日の暮らしが豊かに、面白いものに少し変わるかもしれない。

私が感じたhitofushiのもう一つの魅力は、昔ながらの伝統を受け継いだ古くからあるモノを扱うお店にも関わらず、
創作的で斬新な、『情報発信基地』とでも言うのか、とてもクリエイティブで新しい空間だと感じた所もある。

職人の手仕事によるモノ。
もしそこに敷居の高さを感じている方がいるのであれば、尚更足を運んで欲しい。

季節を感じられる、毎日の生活になくてはならないこだわりの道具達は、贈り物にも喜ばれそうなモノが目白押しだ。

そして実際にモノに触れてみて欲しい。
そこでもし何かを感じたのならば、
これから浴びる太陽の光は、昨日よりも温かなものかもしれない。

by makiko ueno

Camera / toshinori cawai

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