REPORT

SOUP

UPDATE : 2012/Jun/22 | AUTHOR :

色んな物を入れて、煮込んで、美味しくなるスープ。
大阪肥後橋駅よりスグ、慌ただしく流れる人と時間の中で、静かに流れる土佐堀川沿い敬明ビル2階。
今回ご紹介するのは、今年の秋で丸10年を迎えられる、ヴィンテージ雑貨と家具のお店。

階段を上り見えてくるエントランスからもう、まるでフランスの蚤の市の入り口のような雰囲気が漂う。お店に入るとまず、永い年月を経て大切に保管されてきた、味わいのあるステーショナリー雑貨や、お部屋のちょっとしたインテリア小物が出迎えてくれる。大きなガラスの窓から入る、たくさんの光と調和して、何とも言えない可愛らしくアンティークなムードを誘う。

 

SOUP 店内

 

お店の名前に込められた想いについて、オーナーの肥田氏にお話をお伺いした。

肥田氏:「色々悩んで考えていた時に、たまたま見付けた“SOUP”っていう本があったんですが、その文字の並びが可愛いなって思ったのと。色んな物を入れて、煮込んで、美味しくなるスープ…そんな感覚で楽しんでもらえるといいな、とも思って。」

 

“色んな物”そのキーワードが、さっと見渡すだけでも伝わってくるような気がする、まさにイロイロなアイテムの数々。そのバラエティーに富んだラインナップは、目で追いかけるのがやっとの程で、何度も立ち止まり、お店の中を進んでは、また戻って来てしまう。そんなこだわり抜いたヴィンテージ雑貨店SOUP。お店をはじめられた経緯は、意外にもシンプルなものだった。

 

SOUP 肥田氏

 

SOUP 店内

 

SOUP 肥田氏

 

肥田氏自ら、特に何かの理由があった訳でもなく訪れたパリ。
そこで出会った初めての蚤の市が、まさにきっかけとなったのだそう。

 

肥田氏:「探したり、買ったりしているうちに、もう本当に楽しくて仕方がなくて、売れる程に集まってきてしまったんです。色んな偶然も重なって、この場所でお店を始める事になって。最初は、売れ残ったら自分用に…とも思って仕入れて、細々と始めたんですけど、もうどんどん増えてしまって今のように…。」

 

SOUP 店内

 

買い付け先で出会った、直感で“いいな”と思う、好きになってしまった物だけをセレクト。『売れないかも…』なんて事は一切考えず、肥田氏の世界観で集めてこられるのだそう。そんな中でも、買い付けの基準となる、お店のコンセプトにも直結するもの。それは、100%ヴィンテージスタイルを貫くという事。新品?と見間違えてしまう程のコンディションの物がずらりと並ぶが、古い物では1920年代、その他メインとなる1960~70年代頃の、全てがヴィンテージアイテムなのだ。

 

 

肥田氏:「こういう古い物って…ホッとするんです。昔々に作られて今まで大切にされてきた、それだけの良さがあると思うから。
時間の流れもゆっくりだったのか、すごく手間隙かけていい物を作ろうとしていた気がして。
今と違って、デザイン・用途・全てが良く考えられていると思うんです。わざと古くした物じゃないので、時間が経った風合いも楽しめますし。」

ここで、取り扱い商品について、特に気になった物をいくつかご紹介いただいた。

 

SOUP ブルボンキーホルダー

 

SOUP ブルボンキーホルダー

 

まずは圧倒的な数と品揃えを誇るブルボンキーホルダー。

ブルボンキーホルダーとは、1960年代、フランスにあるBOURBON社によって作られた、企業の広告・宣伝用のノベルティーキーホルダー。当時のフランスでは、専門誌が出版される程人気があったのだとか。他社製の物でも、数多くのキーホルダーが世に出回るようになったが、このブルボンキーホルダーとの違いは、今も当時と全く変わる事のない、圧倒的な透明感。手に乗せた時の、あのコロンとした質感、ただ単に可愛く、ただ広告の為と言うだけでは説明しきれないその1つ1つに、小さなギミックが仕掛けられている。

 

中でも仕掛けが動く物、オルゴールのように音楽が流れる物など、フランスの職人により生み出された遊び心のあるデザインを眺めていると、時間が経つのも忘れ、今もなお世界中にコレクターが存在する事も頷ける。

 

SOUP ファイヤーキング

 

そしてもう1つ。こちらも世界中にコレクターを持つ、ファイヤーキング。比較的取り扱い店多い現在、その中でもレアなアドバタイジング物や、ブルボンキーホルダーと並ぶ品揃えを誇るジェダイカラーの数々など。現地でも入手困難な、ファン必見のラインナップになっている。

 

Herve Morvan (エルヴェ・モルヴァン) Vintage poster 1960's OMO / \341,250-

 

さらにもう一つ。

「大きくてお店にはなかなか飾れないんですよ…」と、大人3人がかりで広げて見せてくださったのは、大きなヴィンテージポスター。Raymond Savignac(レイモン・サビニャック)や、Herve Morvan(エルヴェ・モルヴァン)といった、1960年代に活躍したポスター作家の作品も数多く揃う。当時は現代の印刷技法とは異なり、リトグラフ印刷(石版画印刷)が用いられていた為、まるで絵の具を直接紙にベタっと塗ってしまったような、鮮やかな色彩が特徴的だ。

 

またこれらの広告用ポスターは、メトロの壁などに大きく貼られていた物などが多く、当時は広告の期間が終わると破って捨てられていた事、そして制作にかかる手間と時間、コスト面等の問題もあり、大量生産ができなかった事も重なり、現存数は極めて少ない貴重な物なのだ。

 

SOUP 肥田氏

 

SOUP 肥田氏

 

そんな全てがこだわりの雑貨、その中から今、特におすすめのアイテムをご紹介いただいた。

 

GRAS lamp 1920's / \157,500-

 

それは「GRAS」のランプ。20世紀を代表するデザイナー Bernard-Albin GRAS(ベルナール・アルバン・グラス)によって生み出されたこのランプは、多くの建築家やアーティストに愛された名作照明だ。特に近代建築を代表する建築家 Le Corbusier(ル・コルビジェ)が、自身のアトリエや建築プロジェクトに積極的に取り入れた事、その他画家のHenri matisse(アンリ・マティス)や、写真家のMan Ray(マン・レイ)などが愛用していた事もあり、一躍有名となった。

 

SOUP 店内

 

SOUP 店内

 

その他、木の味わい豊かなスツールや、ショップディスプレイにも人気の高いちょっとクセのあるインテリア家具など、見落としがないように隅々まで目をやりたくなる。間もなく10周年を迎えるにあたり、今後の展開については…

 

肥田氏:「こういったアイテムは、現地でも本当に数ある物じゃないので、正直集めるのもどんどん大変になってきているんですが、今までの “100%ヴィンテージスタイルを貫く” ここだけは曲げられませんね。だからもう『頑張る!』としか言えないです(笑)あと最近では、例えばドアの取手やスイッチのような、ちょっとしたインテリア小物なんかの“家”関係にも注目しているんです。単なる小物だけの雑貨屋さんじゃなくて、生活のスタイル自体を提案していきたいですね。」

 

SOUP 店内

 

SOUP 店内

 

SOUP 店内

 

SOUP ファイヤーキング

 

SOUP 外観・サイン

 

〒550-0001 大阪市西区土佐堀1-1-5敬明ビル2F

 

information | SOUP

www.clozzet.com

 

〒550-0001 大阪市西区土佐堀1-1-5敬明ビル2F

営業時間:12:00-19:00

TEL/FAX:06-6449-4303

定休日:毎週日曜・月曜

編集後記

「これは何だろう、でもたまらなく可愛い。」そんな小さな雑貨から、その佇まいから歴史を感じる家具。

ジャンルも形も多種多様。

その1つ1つに引き寄せられるような背景があり、その物を取り巻く時代ももっと知りたくなる。

意図する訳ではなく、好きな物だけを集めてできた1つの空間 SOUP。

次は何を入れるのか、これからもどんどん美味しくなっていきそうだ。

by makiko ueno

Camera / toshinori cawai

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