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decoupage

UPDATE : 2012/Jul/26 | AUTHOR : makiko ueno

凄く色々な物語がたったひとつに詰まっている
神戸トアロードを北に上る。山を望み立つ異国情緒漂うレストランと、古くからそこにある生活感も混ざり合った閑静なエリア。今回ご紹介するのは、今年の5月で11周年を迎えられた、愛らしい猫のぬいぐるみ「トム・キャット」をモチーフにした看板が目印のアンティーク・ヴィンテージジュエリーショップ。

2001年5月神戸北野坂にオープン、2008年トアロード西に位置する現在の場所に移転。

関西のみならず、アンティーク・ヴィンテージジュエリー愛好家には言わずと知れた名店だ。

decoupageという店名は、愛して止まないart deco(アールデコ)の響きを残したい、そしてフランス語の「切り貼り」という意味も合わせて名付けられている。世界中から様々な時代、歴史を感じられる、デザインあるアイテムを集めていきたいという、オーナー太田氏の思いが込められている。

 

decoupage ベークライト

 

そんな太田氏のお店を出すきかっけとなったのが、大学時代のイギリス留学。
現地の蚤の市やアンティークショップに夢中になり、集めているうちに、漠然と“いつかお店ができたらいいな…”と思うようになったのだとか。

 

─────── 「ベークライトに関してはアメリカだったんですが、初めてこういったアンティークジュエリーに出会ったのはイギリスの蚤の市でした。北欧のシルバーとか、ビクトリア時代のチェーンとか、学生の頃はなかなか買えませんでしたけど大好きで。勿論ジャンクな物も買ってたんですけど、結局その頃に買った物で今でも良いなと思えるのは、質の良い物、15年経っても変わらずそう思えるので、できればそういう物を集めていきたいですね。」

 

decoupage ベークライト

 

decoupage 太田氏

 

decoupage Accessory

 

decoupage Display

 

それはdecoupageの一番のこだわりでもある。オーナー自ら現地へ赴き、本当に良いと思える物だけを妥協する事なく集めて来られるのだ。1920年代を象徴するアールデコをはじめ、古い物では200年以上前の物、出会った時にドキドキと驚きを与えてくれる物だけをセレクト。

 

ここで取り扱い商品のラインナップを見てみると、独特のカットが施された優しい輝きを放つ宝石類をはじめ、北欧のシルバージュエリーや、見ているだけでも楽しい気分にさせてくれるカラフルなベークライト素材の物、そして作家・アーティスト × decoupageのコラボ作品なども揃う。

 

テイストもデザイン面も異なる物がバリエーション豊かに並べられているが、そこには一つの共通点がある。それは全てがハンドメイドである事。目を凝らして見れば見る程、細かな作りや独特のカラー、年月を経た風合いも混ざり、手作りだとはにわかに信じがたい驚きを与えられる。

 

decoupage ベークライト

 

decoupage ベークライト

 

その中でも一際目を引くアイテム、ベークライトについて。

1907年、ベルギー生まれのアメリカの科学者・発明家でもあるLeo Hendrik Baekland(レオ ベークランド)が発明した、世界初の人口硬化プラスチック(熱硬化性フェノール樹脂)の商標。初期のプラスチックである。熱に耐えうる性質と、彫刻を施す事ができる硬さを生かし、当時はキッチン用品やジュエリーなどに幅広く利用されていた。しかし第二次世界大戦後、生産コストがかかる事や、熱に溶けない為リサイクルができない事、元々製造時に爆発事故が起こる事があり危険だった面や、高性能の新しい硬化プラスチックの誕生など、様々な理由が重なり、1960年代半ばに姿を消すようになった。

 

1920年から30年代のアメリカにおけるマシンエイジ(第一次機械時代)、そしてファッションにおけるアールデコとそのデザイン、世界恐慌の傷がようやく癒えようとしていた50年代の華やかで遊び心のあるクラフト、それら全てが、ベークライトのその愛らしい表情の奥に凝縮されているのだ。

 

 

太田氏がジュエリーに関心を寄せるきっかけともなったベークライト。初めて購入した時のエピソードを伺った。

 

─────── 「そのお店には沢山のベークライト扱っていたんですが、まず初めて見た時は値段の高さに正直ビックリして。でも歴史とか、作られている由来なんかを聞いて、自分でも興味を持って調べるようにもなったんです。初めてそこで購入したのは、アールデコの黒の指輪でした。カラフルな物が多い中で黒は珍しいんですけど、元々は青だった物が色が変化して黒になったり、そういった色の経過も面白いですね。」

 

その小さな一つ一つに隠されている、時代を反映するデザインや遊び心、溜め息の出るような職人による彫り模様、その深い飴色をじっと眺めていると、吸い込まれそうにもなる。

 

decoupage Display

 

もちろんベークライトだけではない。

北欧のシルバージュエリーのラインナップも、息を呑むような深みのある輝き、そして今まで見てきたシルバージュエリーという概念が形を変える程の衝撃を与えられる。現在のように、型に流し量産する鋳造技術キャスティングが用いられなかった為、一見シャープに見えるフォルムの物でもハンドメイドで作られている。それは身に着ける者に手仕事のあたたかみも届けてくれるだろう。

 

decoupage Silver jewelry

 

decoupage Silver jewelry

 

decoupage Silver jewelry

 

decoupage Accessory

 

 

その他、現在decoupageでは、ローズカットダイヤモンドをピックアップしたフェアも開催されている。薔薇のつぼみのような、また満開の薔薇を思わせる形状からその名が付けられた、ダイヤモンドの原点とも言われるその研磨技術は、インドが起源とも言われ完全な手仕事による職人技で制作されている。その独特の気品ある輝きは、100年を優に超える歴史をも優しく包み込んでしまうかのようなオーラを放ち、アンティーク愛好家のみならず世界中のジュエリーファンを魅了する。

またこのダイヤモンドを使った、オーダーメイドのマリッジリングも制作されている。数あるローズカットダイヤモンドのルースから、世界に一つだけの自分たちの輝きを選べるのだ。“誰かと同じモノは嫌”そんな方には一層意味のある、たった一度の記念にピッタリのリングが作られそうだ。

 

decoupage × Artust

 

さらにもう一つ。こちらも是非店頭で実際に見欲しい、今年からスタートした新ブランド DZA DZA(ザザ)。DZA DZAという名前の猫のドレッサー周りのアイテムを、アーティスト達と共に作っていくというコラボレーションブランドだ。

 

こちらでは、画家のできやよい氏のオーダーメイドによるハンドペインとが楽しめるレジン樹脂のペンダントや、古着のコラージュ・リメイクで人気のブランドflanger(フランジャー)が、壊れてしまったアンティークパーツなどを組み合わせて制作するリメイクジュエリーなど、また様々なミュージシャンのアルバムデザインなどを手掛ける金谷裕子氏による、繊細でカラフルなペイントが施されたアンティーク食器の数々など。古い素材を使い、生かし、未来に繋がるモノをアーティストと共に作っていきたい、そして残したいという思いが伝わってくるような楽しいラインナップになっている。

 

decoupage Dispaly

 

 

そして最後に、“好き”という思いから、過去にはジュエリーにおける様々な専門分野を学んでこられたという経歴も持つ太田氏にとっての「アンティークジュエリーの魅力」について伺った。

 

─────── 「昔、作り手が一つ一つ手作りで丁寧に作った物が、大切にされて代々受け継がれて今の時代まで残った物。それをヨーロッパやアメリカから連れて帰ってきて、次は日本で新しい持ち主に大事にしてもらって、また未来に繋がって行くんですよね。時代って言うだけじゃなくて、作り手・持ち主・国・歴史、凄く色々な物語がたった一つに詰まっていると思ったら愛着が湧きます。良い物は長く繋がっていく、そんな長い長いストーリーが面白くていつも新しい何かを発見させてくれるんです。」

 

 

Owner’s Recommend Items

 

 

decoupage Store

 

 

information | decoupage

www.antique-decoupage.com

 

〒650-0003 兵庫県神戸市中央区山本通3-8-1 2F

TEL&FAX : 078-262-6531

営業時間 : 13:00-19:00

定休日 : 毎週 水曜・木曜

*買付・催事等による臨時休業有(事前にお電話ください)

編集後記

見た目の美しさ、可愛らしさは勿論、目を細めて見る程の小さな一粒でさえも、これまでの永い歴史が刻まれている。

現在では再現できない色、質感、輝き、それらはただモダンで美しいだけではなく、人の手のぬくもり、優しさもとじ込め、今に残している。
楽しみを持って作られたものへの愛着、職人の鋭い視線の行く先を追いたくなる細工とその技。
何十年先、何百年先も消したくないと思わせる、あの頃の世界が凝縮されている。

そんな残すべき過去と今を融合させた、アーティストと共に生み出す“未来のアンティーク”、
こちらの展開も今後拡大されるとの事。

煌びやかなジュエリーの世界を、今までとは少し違う角度で気軽に楽しめる場所 decoupage。
お気に入りのジュエリーは勿論、所狭しと散らばる遊び心とストーリーも探してみたくなった。

by makiko ueno

Camera / toshinori cawai

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